マジンガーZ |
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ものがたり |
作者 |
轟音とともにZは着地する。衝撃が大地を揺るがし、暴風が木々をゆさぶった。 コックピットのエナーシャルキャンセラーが加負荷による悲鳴を上げる。本来であれば極限まで吸収される落下による衝撃もエナーシャルキャンセラーの限界を超えたため、パイロットの身体へ叩きつけるようなショックを与える。甲児は一瞬視界が昏くなるような衝撃を受けたが、その口元にはふてぶてしい笑みがうかんでいた。 機械獣はロケットパンチにより二本の脚部を破壊されている。機動性が最大の武器ともいうべき巨大ロボットが動きを止められれば、勝ち目はない。 代償としてZも二つのマニュピレーターを失ったが、もう勝利は目前である。 「いくぜ」 甲児はにんまりと微笑む。ヘルメットに装備されているスキャナーが甲児の脳が発する電気的信号を読みとり、Zは操作が行われる前に準備動作に入る。 量子力学的並列宇宙を利用した300併走CPUがZのシステムのコントロールを開始する。ボディに内蔵された、反応炉がうなりを上げた。「口」に相当する部分から吐息にもにたエアが放出される。 機械獣は、動きを止めていた。しかし、観念した気配は無い。その背中から金属の鞭のようなワイアーが放出された。その電気を流通させることにより形状を変形させるワイアーは、生き物のようにZの身体へ絡みついてゆく。 Zも機械獣と同様に動きを止められたことになる。しかし、甲児の顔にあせりは無い。 Zの胸に装着された二枚のプレートが高熱で輝き始める。 そのプレートは本来の姿は全長1000メートルに及ぶ粒子加速装置であるが、仮想重力発生装置により空間を圧縮され、わずか幅3メートルの仮想空間内に装備されていた。Zの反応炉がパワーを上げる。Zの「口」から暴風のようにエアが排出された。 Zの体内の熱エネルギーは「口」から放出しきれないため、体内にあるワームホールを通じて軌道衛星上に設置されたサポートシステムを通じて宇宙空間へと放出される。 機械獣はティラノサウルスにも似た口を開く。口の中から中距離地対地ミサイルランチャーが姿を顕わす。6機のミサイルの発射準備が整っていた。 「遅いぜ」 甲児はせせら笑う。そしてレバーを操作する。 Zの胸部の二枚のプレートの全面に無数の微細なワームホールが出現する。そのワームホール全てが強大なエネルギーを受け、強烈な光を放った。 機械獣の頭部が爆風と火焔に包まれる。6機のミサイルが発射された。同時に甲児が叫んだ。 「ブレストファイアーー!!!」 音声認識システムが甲児の声紋を認知し、システムがトリッガーを引く。 胸のプレートより粒子加速装置により高エネルギーを付加され加速された荷電粒子が放出される。仮想重力場の影響を受け赤方偏移をうけた光は、灼熱した地獄の炎のようにみえた。 荷電粒子は放出された6機のミサイルを一瞬にして粉砕した。そして、機械獣の装甲を襲う。人工知能は一瞬にして死滅した。 「やったぜ」 巨大な焼け野原の前に立つZの中で、甲児は哄笑した。 |
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甲児はコクピットの中で、激しい斜めGに耐えながらZの機体を安定させた。 |
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