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マジンガーZ
その名を聞くだけで炸裂する超兵器の真っ赤な炎
熱く語らずにいられないスーパーロボットの魂を凝縮した物語

企画リーダー・志麻ケイイチ様

ご参加の皆様(2000/11/23現在 敬称略)
つきかげ  志麻ケイイチ

maru003s.gif (246 バイト) ものがたり maru003s.gif (246 バイト)

作者
(敬称略)

 
 轟音とともにZは着地する。衝撃が大地を揺るがし、暴風が木々をゆさぶった。
コックピットのエナーシャルキャンセラーが加負荷による悲鳴を上げる。本来であれば極限まで吸収される落下による衝撃もエナーシャルキャンセラーの限界を超えたため、パイロットの身体へ叩きつけるようなショックを与える。甲児は一瞬視界が昏くなるような衝撃を受けたが、その口元にはふてぶてしい笑みがうかんでいた。
 機械獣はロケットパンチにより二本の脚部を破壊されている。機動性が最大の武器ともいうべき巨大ロボットが動きを止められれば、勝ち目はない。
 代償としてZも二つのマニュピレーターを失ったが、もう勝利は目前である。
「いくぜ」
 甲児はにんまりと微笑む。ヘルメットに装備されているスキャナーが甲児の脳が発する電気的信号を読みとり、Zは操作が行われる前に準備動作に入る。
 量子力学的並列宇宙を利用した300併走CPUがZのシステムのコントロールを開始する。ボディに内蔵された、反応炉がうなりを上げた。「口」に相当する部分から吐息にもにたエアが放出される。
 機械獣は、動きを止めていた。しかし、観念した気配は無い。その背中から金属の鞭のようなワイアーが放出された。その電気を流通させることにより形状を変形させるワイアーは、生き物のようにZの身体へ絡みついてゆく。
 Zも機械獣と同様に動きを止められたことになる。しかし、甲児の顔にあせりは無い。
 Zの胸に装着された二枚のプレートが高熱で輝き始める。
 そのプレートは本来の姿は全長1000メートルに及ぶ粒子加速装置であるが、仮想重力発生装置により空間を圧縮され、わずか幅3メートルの仮想空間内に装備されていた。Zの反応炉がパワーを上げる。Zの「口」から暴風のようにエアが排出された。
 Zの体内の熱エネルギーは「口」から放出しきれないため、体内にあるワームホールを通じて軌道衛星上に設置されたサポートシステムを通じて宇宙空間へと放出される。
 機械獣はティラノサウルスにも似た口を開く。口の中から中距離地対地ミサイルランチャーが姿を顕わす。6機のミサイルの発射準備が整っていた。
「遅いぜ」
 甲児はせせら笑う。そしてレバーを操作する。
 Zの胸部の二枚のプレートの全面に無数の微細なワームホールが出現する。そのワームホール全てが強大なエネルギーを受け、強烈な光を放った。
 機械獣の頭部が爆風と火焔に包まれる。6機のミサイルが発射された。同時に甲児が叫んだ。
「ブレストファイアーー!!!」
 音声認識システムが甲児の声紋を認知し、システムがトリッガーを引く。
 胸のプレートより粒子加速装置により高エネルギーを付加され加速された荷電粒子が放出される。仮想重力場の影響を受け赤方偏移をうけた光は、灼熱した地獄の炎のようにみえた。
 荷電粒子は放出された6機のミサイルを一瞬にして粉砕した。そして、機械獣の装甲を襲う。人工知能は一瞬にして死滅した。
「やったぜ」
 巨大な焼け野原の前に立つZの中で、甲児は哄笑した。
 

つきかげ

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 甲児はコクピットの中で、激しい斜めGに耐えながらZの機体を安定させた。
 踏み出したZの右足が、1m近くも地面にもぐりこんだ。真下から突き上げるショックが甲児の内蔵をシェイクした。
「くそお! 早死にしたら爺ちゃんのせいだからな」
 甲児が悪態をつく間にも、優秀なZのバランサーは、足を大地から引き抜き機体を水平に保っていった。
 視界いっぱいに広がる機械獣が、すさまじい速度で視界の端に消えていく。
 巨大ロボットによる戦いは、至近距離だけに相対速度が異常に速い。
 逆にいうと、立ち止まることは許されない速度の戦いだった。
 超兵器による砲撃戦は、戦車とは比べ物にならない複雑な機動の中で戦われた。
 甲児のレシーバーに、アフロダイAに乗る弓さやかの声が飛びこんできた。
「甲児くん。オッパイ・ミサイルで機械獣の足を止めるわ。15-20方向から5秒後。コンマ2間隔で足元を狙うわ。左にバランスを崩すからよろしくね」
「OKだ。さやかさん」
 その瞬間、機械獣の足から猛烈な噴射が始まった。
 彼らの作戦を察した機械獣は、不可思議な人工知能の命ずるままに、空に脱出しようとしていた。
「光子力ビィーームッ!」
 甲児は狙いもつけずにビームを発射した。
 必殺の光線は、森の木々と大地を爆裂させながら、サーチライトのように機械獣の胴をないだ。
 機械獣は装甲を切り裂かれて落下した。
 かろうじて二本足で直立した地面めがけてアフロダイAのミサイルが殺到した。
 直径30mに及ぶクレーターが生まれた。
 さしもの機械獣も体制を安定させるために数秒の時間を必要とした。
 甲児は機械獣の背後に回りこむと、Zを静止させてロケットパンチの発射体制を取った。
 射撃レーダーにつかまったことを知った機械獣は、怪物の咆哮にも似た広帯域ジャミングをかけるが、光学照準を妨害する手段を持たない。
「ロケットパーーンチ!」
 甲児はZ最大の質量兵器であるロケットパンチを発射した。
 それはZのマニュピレータを、第2動関節、つまり肘から分離して空飛ぶ破砕器とする空前絶後の超兵器だった。
 二の腕のショックアブソーバーが最大に伸張された状態で、肘に内蔵されたロケットモーターが爆発的な点火を行なう。数トンに及ぶ質量を水平方向にゼロ距離離陸させる推進力が、Zのボディを焼き焦がした。
 ロケットパンチの発射は、わずか4回でZの耐熱塗装を破壊した。
 衝撃波は、外部にいる人間を水袋のようなミンチに変えた。
 ロケットパンチは、繊細な指を保護するロック機構を有し、回収後の再使用を可能にしていた。
 いうなればリサイクル可能な鋼鉄の砲弾である。
 と言っても、発射に伴う環境破壊はちっとも地球に優しくなかった。
「ぐぎゃおおおおっ」
 悲鳴にも似た機械獣の叫びは一瞬のことだった。
 避けようもない至近距離攻撃だ。二発のロケットパンチは機械獣の腹部と胸部を立て続けに貫いた。
 発射と同時に音速を突破する黒金の拳を肉眼で捕らえることはできない。
 まるで戦艦の主砲に打ちぬかれたような唐突さで、1mもの大穴が穿たれた。
 もっとも装甲が厚いボディを破壊する威力は、敵に拭い去れない恐怖を植えつけた。 
 機械獣の反応炉が急速に閉鎖されていく。
 しかし内蔵された弾薬の誘爆は、機体を粉々にするのに十分だった。
 Zのコンピュータは、ロケットパンチ回収にむけて手順をこなしていった。
 パンチは姿勢制御モーターの光に包まれながら半径10キロもかけて空を旋回したのち、Zの真上で速度をゼロとして垂直に姿勢を整えた。
 予備解凍された推進剤が不活性化されて排出された。そしてあたかも垂直離着陸機のように二の腕とドッキングを行った。
 ただちに肘関節内に冷却材が充填されて、真っ白な蒸気が噴き出した。指を保護していた貫徹頭は使い捨てだ。見事に変形した姿で剥離して大地に落ちた。
 マニュピレータとしての機能を復帰させるためのデータリンク、動力結合が一瞬のうちにこなされていった。
 Zの勇姿は、高熱の陽炎に包まれて、赤く大地を照らしだした。

 

志麻ケイイチ

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