姫様 |
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●第二話 「火の用心(イタリア編)」 最近のイタリアブームに閉口しながらも,私はイタリア大好き! これはしつこくも三度目のイタリア旅行を,母と一緒に行った時のお話。 パックツアーのご一行様で,私ほどイタリア慣れしていた人は,添乗員と二人連れだけだった。もっとも,この二人連れ,わがまますぎて誰も相手にできないたちだったので,観光のアドバイスにと,私は結構ちやほやされて上機嫌だった。 しかし,ミラノでその恐ろしい事件は起きてしまった。 パックツアーのホテルの悪さは,ヨーロッパが最たるものだろう。パンフでは「ホテルが古い為,ウンたらカンたら……」と,ありますが,自分で手配するとそこまでひどくないのよねーーー。だましているのよ! ほんとにほんとに旅を重ねる事に,ランクが下がっていく。ミラノもそんな感じだった。 部屋はなぜかスィートルームだった。たまたま,宿泊客がなく,ドアで繋がっている隣の部屋にもはいる事が出きる……程度のことだった。 隣はシングルの部屋らしく,ベッド一つとテーブルセット・他に冷蔵庫まで完備していた。 私はワインを冷蔵庫に入れた。しかし,戸を開けても電気の一つもつかない冷蔵庫に不安を感じた。水も冷やしたいのに,本当に電気とおっているのかしらん?手を入れても冷たさを感じない。よくみると,冷蔵庫の上に,何やらスイッチがある。 あぁ,これね? とばかり,スイッチを入れて私は寝た。それが間違いだった。 明け方,異様な臭いで目が覚めた。 「こ,これはもしや火事!!」 飛び起きて隣の部屋を開けた。こちらの部屋とは比べ物にならないくらいの煙が充満していた。煙は冷蔵庫から発していたのだった。 「何???」 私は慌てて,冷蔵庫のスイッチを切り,窓を開けた。 ワイン大好きな私は,こんな場合も冷静だった。冷蔵庫のワインと水を取り出すと,それはおいしそうに冷えきっていた。 「これは,添乗員さんに話しておきましょう」 母の言葉に,がっくりと肩を落とす私……部屋中すすだらけにして,一体いくらの請求がくるのか,検討もつかない。 「あの,このスイッチはコンロのスイッチです」 冷蔵庫の上の木のカバーをはずすと,電気コンロが現われた。恐ろしいことに,木のカバーをしたまま,コンロに火をつけて寝てしまったのか……。 すっかり,弁償する気持ちになって,添乗員とともにホテルに掛け合う私だった。しかし,まだ朝の6時……。ホテルには,警備員しかいない。彼は煙が出たと聞き,窓を開けまくって換気に努めた。 ボスがくるのは,8時だという。しかし,我々は,パックツアー。7時半にはミラノをたつ。それじゃあ,いいんじゃない? と,警備員のおっさんは言った。 ウーーー!!!! イタリア人って,大好き!!! 私はお言葉に甘えて,コンロの弁償も,部屋の弁償も請求されず,冷たく冷えた水とワインを持って,バスに乗り込んだ。 バスの中で,会話が錯綜する。 「今朝方,ボヤがあったみたい……くさくなかった?」 「あぁ,なんか臭ってましたわ! 警備の人が窓を開けてましたわ」 「なんだか怖いですわ。イタリアの方って,そんな時ものんきなんですもの!」 それは,すべて私のせいです…… 私の信頼は,思いっきり地に落ちただろうネ。 |
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