なかやみか様
banercorocoro02.gif (2421 バイト)
scene-1

   


●第一話 「柑橘系」

Aくんは高校1年生。小さい頃からとってもマジメで、勉強も一生懸命やった。
しかしマジメ一途でしばしば友人と間が合わない事もあった。
彼女が出来たり流行りのゲームに興じる友人と自分の違いをAくんは悩んでいた。
「ボクだって皆みたいに、イキな話をしたり可愛い彼女だって欲しい」
ベルボトムをベルトで絞り込むAくんのファッションセンスは友人達の間でも浮いてはいたが、彼らはそんな事は全然気にしないイイ奴らだった。
朴訥としたAくんのキャラクターを天性のものとして、友人たちは彼を慕っていた。
でもAくんは皆と同じになりたかった。
理想の自分像を皆に認識してもらいたく彼はある日こう語った。「オレさあ」
ちょいと斜に構えて喋り出した彼を一斉に友人たちは見た。
「こう見えても、中学の時はワルでさあ」友人たちは動きが止まった。
「ふッ、いや今のオレからは想像出来ないだろうけどね。ポンカンはいてブイブイ云わせてたんだよ、結構」
友人たちはホントにイイ奴らばかりだった。
「あ、オレ用事あっから帰るワ。んじゃ」とカッコよく去って行くAくんの姿が見えなくなったのをキチンと確認してから皆で床に倒れて死ぬ程笑ったという。
Aくん言うところの「ポンカン」とは「ボンタン」の意であろうが、柑橘系であればよいというワケではなかった。

※豆知識…男気ムンムンの応援団のおニイさん達が履いているような 幅広の学生ズボンが通称ボンタン。


Back

第二話 「大切なもの」


結婚式の祝辞にお決まりのイイ話がある。「4つの袋」という話だ。
新しい家庭を築いて行くカップルに「胃袋」「給料袋」「堪忍袋」
そして「オフクロ」を大切に生きて行って欲しい、という立派
な話だ。
N氏はこの話を自分の結婚式で初めて聞いた。イイ話だと思ったが妻の方は先日この話をネタにしたとんねるずのギャグを聞いていた為、角隠しに顔を伏せ神妙に承るフリをして、汗を流し一生懸命悲しい事を考えて笑いを噛み殺していたという。
滞り無く式は終わり、後日夫婦にこの話が出た。
どうして可笑しかったのか妻はN氏に説明した。N氏も大爆笑した。
同席していた兄とも先日このギャグについて電話で大笑いしたのだと妻はN氏に話した。
「じ、じゃあさ!」N氏は言った。
「兄さんが結婚する時には、またこの『4つの玉』の話をしよう!」
N氏は自分のセリフの何がヘンだったか、しばらく笑い過ぎで呼吸困難に陥っている妻が立ち直るまで知る事はなかった。

Back

●第三話 「サネアツ」


テレビを観ていたN氏は妻に真剣な目をして言った。
「『ヤクショコウジ』って、下の名前なに?」
真剣に質問しているのを確認して妻は答えた。
「実篤」

因みに「イシザカコウジ」は兵吉で「タヌキコウジ」はポンポコシャンゼリゼだ。

Back

●第四話  「ダイレクトな感想」


空腹だった彼女は、某喫茶店系レストランに入りスパゲティを注文した。
ファンシーな制服を着たウェイトレスさんが運んで来てくれたソレはしかし、不味かった。
その空腹をもってしても不味かった。
しばらく彼女の席からは、カチャカチャと皿とフォークの触れあう音がしていたがややすると席を立って行った。
テーブルに残された件のスパゲティの皿には、こんもりと片側に寄せられたパスタの山と空いたスペースに、フォークで切って作ったらしいパスタの断片による「マズイ」の3文字が残されていたという。

Back

●第五話  「君にはまだ早い」


100円ショップの品揃えには目をみはる物がある。これが100円かと思う驚きと楽しみで昨今は庶民の娯楽の殿堂ともなっている。そして「いくら何でもこんなモノまで」という物が置いてあった。それはOKマークのゴム製品だ。(古い表現)しかしてそれはラブリーなサンリオキャラクターの小さな箱に入っており、確認せねば一見してソレとは判らないような物でもあった。
小学校1・2年生くらいと思われる女の子が、カワイイその箱を手に取った。
横で見ていた女性は「おいおいお嬢ちゃん、君にはちいとばかし早かろう」と心の中で
笑いを堪えていた。されど女の子がその後どうするのか興味があり、隣で他の商品を見るフリをしながらそのコを観察していた。
すると女の子は店内中に響くような大声で「おかあさあああん!かわいいのがあったああ!!」
と少し離れた場所にいた母親に向かって叫んだ。
その後幾度か女の子はまとわりつきながら同じセリフを母親に向かって叫んだが、当の母はガンとしてシカトを決め込んでいたという。

Back

●第六話 「ジャングル黒べえ」


その高校には浦くんという生徒がいた。その日、浦くんは
カッたるかったのか教室の掃除を一人サボって帰ろうとしていた。
そこを担任である先生に見つかってしまった。担任は熱意を以て教育を
行なう事を旨とするアツい教師でもあった。早速浦くんに先生の声が飛んだ。
「浦!何をやっているんだ浦!お前は仲間を見捨てて帰るのか浦!」
「聞いてるのか浦!ウラ!」
その瞬間誰かがボソリと言った。「ベッカンコー。」
教室は爆笑の渦となった。浦くんも笑っている。
ひとり爆笑の理由が解らぬ先生は「いや笑いゴトじゃないんだよ、ウラ!」
と叫ぶも、それは爆笑をいや増すものでしかなかったという。

Back

●第七話  「恐怖の死神博士」


F氏は、新宿東口方面を歩いていた。ごったがえす人波の中、
つい肩がぶつかってしまった人がいた。
「あ、すみませ……」と顔を上げた瞬間、彼は凍り付いた。
その人物は仮面ライダーの、あの、死神博士だったのである。
「あ、いや。スミマセン」
死神博士はそう詫びると人の渦の中に消えた。
ライダーフリークであるF氏はその時の事を「本当に怖かった」と語る。

この話を聞いたH氏は重い口を開いた。「実はオレもな……」
同じく新宿はプレイガイドでH氏はバイトをしていた。
ある日扉が開くと入って来たその人こそ死神博士であった。
死神博士はとある舞台のポスターを指差すと、H氏に向かい
「この芝居のチラシが欲しいんだが」と言った。
H氏とてライダー世代の為、内心凍り付きそうに恐かった。
「申し訳ないんですが、チラシは置いてないんですけど……」
やっとの事でそう言ったH氏に、死神博士はムッとした様子で
「……自分のやってる芝居のチラシも貰えん!」と
捨てゼリフを残し去って行ってしまった。
それからH氏は独りの部屋に、夜中唐突に戦闘員を伴った
イカデビルが襲い来るような気がしてならず、
しばらくはビクビクしながら暮らしたという。

Back

●第八話 「キレンジャー」


彼女はゆっくりゆっくりごはんを食べる人で、
コンビニおにぎり1個に30分かける咀嚼のツワモノである。
そんな彼女の話を聞いてひときわ仰天したのが、
『カレーだったらいくらでも喰える』と胸をはる男友達であった。
彼は一度に3皿は頼み、掛け値なく流し込むようにペロリとたいらげ、
あまつさえ「しょせんカレーは飲み物だからな」と豪語したという。

Back

●第九話 「似て非なるもの」


H氏は本屋に赴いた。雑誌『GUN』の最新号を買う為である。
だが見当たらなかったので店員さんに聞いた。
「え〜と……、ちょっとお待ち下さいね」
しばしの間の後、店員さんはニッコリしながら本を持って来てくれた。
「コレですかあ」
が、それはミリタリー雑誌『丸』であったという。

Back

TOP

INDEX

 MAIL