>テレビの画面には、「ビザールクイーン」となのる女性が写っている。 よく通る声で、クイーンは朗々とうたう。 「われわれ、ビザール帝国は今ここに世界征服を宣言をするものである!!おとなしく軍門に下れば、命だけは助けてやる!」 クイーンの演説は続く。 ビザール帝国をなのる秘密結社が、世界征服にのりだしたということ。 すでにいくつかの国はビザール帝国によって征服されているということ。 次の攻撃目標は、日本だということ。 降伏すれば、ビザール帝国の奴隷として扱うということ。 「有栖川義之!!この放送を見ているだろう!!」 「有栖川!聞いてのとおりだ!ビザール帝国の軍資金調達の役目は終わった!!至急に帰還せよ!!」
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小さな街のメイドさんとダンナ様がいる屋敷……の隣の屋敷。 5人のメイドを雇い、謎だらけな生活をするナスカなる人物。
「見ましたか御主人! 大変です! 今テレビで」 あわてて駆けてきたメイドレッドこと赤巻紙ちはや。 ちはやはこのナスカの屋敷に最初からメイドとして勤めていた。 真面目で何事にも一生懸命なのはいいが、時にそれが暴走するところがたまに傷。 さらには素直というか、信じやすく騙されやすいわかりやすい性格の持ち主だった。
真っ黒な画面を全員が見ていた。 「どう思う、お前たち」 「御主人、世界征服って……」 「ふざけやがって」 「……こよ〜ぬし……」 「この番組はぁフィクション? 旦さん」 「ど、どうしましょうかナスカさん」 ナスカはあごに手を添え、思案していた。 「旦さん、有栖川ってぇ……」 メイドグリーンがナスカの様子をうかがった。 「ふむ、俺が昔使ったペンネーム……」 いうが早いか、ちはやはボカボカとナスカを殴った。 「ご、御主人がそんな組織の手先だったなんて〜」 悲しみと戸惑いでメチャクチャに叩く。 馬鹿正直でまっすぐで熱血。本当に疑う事を知らない。 「ち、ちがうって こら! お前等!ギャグだギャグ!」 ジャレているような二人の間に、とある人物が近づいた。 「ニヤッ)おめぇか! こ〜の悪の手先に正義の鉄拳!」 「こら、ブルー! 正義の看板の後ろに何か隠してるだろ」 メイドブルー、青木ヶ原樹は大儀の元、ナスカをぼこ殴った。 五人の中で一番メイドさんとは縁遠い樹。 喧嘩に明け暮れていた日々。 非生産的な毎日を変えたのはメイドレッドことちはやだった。 負け知らずの樹をちはやは打ち負かしてしまった。 それもそのはず。ちはやはああみえて、掃除の型を踏襲した秘拳「清掃拳」の使い手だったのだ。 ちはやはナスカが最強のメイド戦隊を作りたいと思い、残る4人のメイドさんを探していた。 最初は相手にしなかった樹だったが、負けたら何でもいうことを聞く約束を飲んだ。 そしてちはやは願った。 負けたらメイドさんとして働いて欲しい。 そしてメイドブルーとして仲間にになって欲しい……と。 ちはやとの勝負に負け、仕方なく働いているのだから仕事もサボリ気味の不良メイドなのもうなずける。 しかもメイド戦隊などという訳の分からないことをやらされている。 さらには強いんだか弱いんだかわからない男の下で働かされている不満はブルーの中にいつもあった。 しかし、曲がった事が嫌いな性分は、悪人をぶっとばすという点では同意していた。 その埋め切れない鬱憤をナスカにぶつけることで解消していた。 「ま、待ってみんな。ナスカさん違うって言ってる」 ピンク色のメイド服がキュートなメイドピンクこと、桃谷間薫。 男にしておくのが勿体無いようなメイドのいでたちの似合うメイドピンク。 現役男子高校生で、学校が終わってから屋敷に来てはメイド服を着てメイドさんの仕事…… しかし彼の名誉のために言っておくなら、決して女装趣味があるわけでも楽しんで 着ているわけでもない。 薫がこの状況にいるのにはメイドレッド、ちはやの存在があった。 初めて会った時、薫はちはやを一目見て好きになった。 この想いを打ち明けたい、もっとお近付きになりたい。 どんなお願いも聞いてあげたい。 その想いはあった。 確かにあった。 でもまさか男である自分にメイドさんになって欲しいというのが自分の好きになった相手からのお願いだとは思いもしなかったが。 純情ボーイの薫が好きな相手であるレッドのためにメイド姿で働いているというのに、当のちはやは何も気が付いていない。 雇っているナスカですら、その事実は影ながら薫に声援を送ってやりたくなるものであった。 直接ちはやに言ってやろうかと思ったのだが、それを薫に持ち掛けた瞬間、普段セーブしているパワーを全開放して止められた。 その時に受けたダメージは通常ブルーから食らうものの倍以上だった。 で、さらに薫のメイド姿はなよなよしているわけでなく、正直に恥じらえば恥じらうほど、女性よりもより女性らしい仕草になるところが、メイドブルーにはムカツクものらしい。 強烈な個性派集団の中では良識あるピンクの発言は弱い。 パンパンと手のホコリをはらうと 「ま、冗談はさておきだ」 「そうそうぅ、冗談はさておいてぇ〜」 「(じょ、冗談ですむのかな、この現状……)」 「とにかくみんな準備! 世界征服なんて許せない」 レッドのひとことにブルーとグリーンが地下室へ。 そしておろおろとピンクも付いて行った。 残されたナスカの傍へ他のメンバーから比べて幼い少女が来て、傷の手当てをした。 「たく、あいつら! イテテ。すまんなイエロー」 メイドイエロー。 本名秘密。 現役○学生にして通いでメイドのアルバイト。 遠目でみればかわいい美少女なのだが、その表情は無表情。 口数も多い方ではなく、そして 「……こよ〜ぬしに先立たれると、いいバイトの口なくなる……」 「怪我の心配の前に言うことがそれか〜!」 「……遺産相続、私にする?」 お金に不自由しているはずではないのにお金に固執し、子どもらしからぬ金至上主義的な発言をしていた。 メイドイエローにとってナスカは雇用主であり、そこにあるのは契約書上の関係。 メイドの仕事も割りのいいアルバイト。メイド戦隊のメイドイエローになることも最初に決めた雇用条件のひとつだと言っている。 「せん、せん! ぜ〜ったいしてやらん」 「……じゃ、死なないで……」 しかし、ナスカはこの少女の奥にある優しい心を理解していた。
「よ〜し、セバスにミサイルは塔載したか」 「はぁ〜い。このお屋敷なら100回は壊滅できるよぉ」 メイドブルーの物騒な発言にあっさり返す独特の口調の女性。 メイド戦隊の奇才、メイドグリーン。 本名不詳の自称、緑乃森さん メイド戦隊の仲間を探すレッドが、ブルーとピンクとイエローを仲間にしてから、イエローがインターネットを通じて仲間にしたのがメイドグリーンだった。 グリーンはレッド、ブルーと同様に屋敷に住み込みのメイドさんなのだが、機械いじりと酒をこよなく愛し、屋敷のあちこちに抜け穴や隠し通路を勝手に作っては神出鬼没だった。 彼女の作った中では唯一まともなのが 羊ロボ、セバス。 通称セバスちゃんだった。 もともとあった地下室がすっかり指令本部並みの施設になったのはひとえにグリーンの手腕だ。 「正義の清掃拳で、世界の平和を守る!」 「腕がなるぜ。久しぶりの喧嘩だ!」 「ふっふっふ、メカ戦×2」 「(ど、どうしよう)オロオロ」 四人はそれぞれに思惑をはせていた。 「お前等何をしてるんだ?」 ナスカが地下室へとやってきた。 「御主人? 決まってます。鬼退治」 「ビザールだかバザールだかってふざけた奴等をぶっとばしに」 「んな危ないもんを持ってるんじゃない。グリーン、それを外して、探知器、レーダー、情報収集ツールを装備しろ」 「どうして?」 怪訝そうな顔をするメイド達。 「どうしてだと? いいかお前たち、お前たちの使命はなんだ?」 黙り込むメイドたちの間を小さな少女が歩む。 「……このお屋敷とご近所を守ること……」 紅茶を運んできたイエローが答える。 「そうだろ」 「じゃぁ戦うなっていうのか?」 「そうは言わない。ただ、それは敵がこの近辺に来たとき、迎え撃て!」 「そんな! 来るまで何もするなっていうんですか、御主人!?」 「冗談じゃねぇ、そんな消極的なこと性に合わないね」 腕組みをして斜に構えるメイドブルー。 「浮き足立つなって言っているんだ。メイド戦隊!」 普段のおちゃらけモードとは違う口調で語る。 「相手の事がわからないまま、闇雲に突っ込んでどうする! いいか、俺達がするのは、まず情報戦だ。どんなささいなことでもいい。敵の情報を集め、みんなに正確な情報を提供する。人々の安全を確保し、パニックが起きないようにするんだ」 さらにナスカはこちらに最大の武器を語った。 「敵はまだお前たちメイド戦隊の存在を知らない。まずは隠密行動だ。世界を侵略したそうだが、このご町内は違うぞ。ここを基に侵略されている地を取り返す! 絶対あのど派手なねぇちゃんの思い通りはさせないぞ」 飛び出したがっているメンバーに、縁の下の力持ちの役回りを与えるのだから、それなりの説得も必要だ。 「世界を取り返す。平和を守る。この屋敷守り、ご町内を守り、日本を守り、そして世界も守ってやるぜ」
メイドレッド! 赤巻紙ちはや メイドブルー! 青木ヶ原樹 メイドイエロー! 黄瀬川……え? いうな? メイドグリーン! 緑乃森……名前そろそろ教えろよ。まぁいい。 メイドピンク! 桃谷間薫
メイド戦隊! 活動開始だ! 「了解★」 ナスカの指示にメイド戦隊は声を合わせた。 「安心しろ、たっぷり戦う舞台は用意してやる」 振り上げた拳の行き場に戸惑うブルーの肩を叩いてナスカは笑う。 「やるからには絶対勝つからな! だろ、ブルー」 「あ、あったりめぇだろ」 「御主人……」 「レッド。メイド戦隊のリーダーとしてこれから働いてもらうぞ」 「ハイです、もちろん」 「グリーンを中心に敵の情報を収集。あとはテレビで言っていた 有栖川氏とその背景を洗え。レッド、ブルー、一緒に行け!」 情報戦となればグリーンが主力になる。 残ったナスカとメイドピンク、そしてメイドイエロー。 「ピンク……」 「はい、なんですか ナスカさん」 「……大変なことになった。ま、あいつらの事だから大丈夫だとは思うが……」 ナスカはピンクの肩をぽんぽんと叩いた。 「さりげなく守ってやってくれ。レッドだけじゃなく、他の連中もだ。あいつら、本質的にか弱いからな」 普段からメイド達を怒鳴ったりしているナスカ。 普段はオロオロと弱腰のピンク。 しかし、二人は男として、どうするべきかを互いに心得ていた。 「ま、こ〜んなことできるくらいの弱さだが」 と、さっきぼこなぐりで受けた傷を見せながらおどけるナスカにピンクは決意を新たにした。 「ピンク、お茶を頼む。グリーンの分には特別にブランデーを入れてやってもいいからな」 「かしこまりました、ナスカさん」
ナスカは次に、メイドイエローにあるものを持って来させた。 「しか〜し メイドシャドウたちはな〜にやってんだかな〜」 広角スピーカーのスイッチを入れると屋敷中はもちろん、外まで聞こえるような大きな声をはりあげた。 急に大声を上げたナスカにメイドたちは驚いていた。 「な〜んか悪事をしでかそうとしているみたいだけど、後から出てきた他の悪の組織にかっさらわれて、かっこわり〜!」 メイドシャドウ。それはメイド戦隊に襲い来る悪の組織の一員。 突然の大声にメイドレッドが駆けつけた。 「御主人? どうしたんですか」 「ん? いや、これを聞いてたら、アイツ等にもプライドってもんがあるだろうから、先に敵をやっつけてくれないかな〜と思って」 「なんだか他力本願!!」 「何を言う、スペイン故事で『毒を持って毒を制す』というのだ」 「い、いわないと思いますよ」 「……漁夫の利……」 イエローは背伸びしてナスカの頭をなでなでしていた。 「こらこら、イエロー。そんなに誉めんな、照れるゼ」 「……別に誉めてない……」
ご奉仕戦隊が変身している頃、遥か彼方の地。 他の五色のメイド戦士が決起していることは誰も知らない。
とぅべぇこんちにゅ〜?……(笑)
□◆□ 続きは ご奉仕戦隊メイドファイブでお楽しみ下さい☆ 『ご奉仕戦隊メイドファイブ』
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