2004年 9月19日
2,763m
燕岳
19,20日の連休に何とか時間がとれそうなので山へ行くことにした。一応候補として立山連峰の薬師岳、
北アルプスの燕岳をあげたが、当日が近くなって天気予報を見ると、寒冷前線が近づいてきてどうも
日本海側は雨の様だ。そこで燕岳に決定。しかしこれとても曇りか雨の様だ。出かけるまでしつこく
天気予報ばかり見ているが、どうも芳しくない。しかしせっかくの連休、いつもの休みの如く家でごろごろ
しているのもアホらしい。意を決して行くことにした。少しくらいの雨なら我慢しよう。同じく暇を
もてあましている友人のUさんを誘って18日の午後中房温泉へ向かって出発。穂高町に入り峠に
さしかかる頃にはすっかり暗くなってしまった。道は九十九折りでおまけに明かりが何もないので甚だ
運転しづらい。おまけに中房温泉からの帰りの車が結構ある。道は所々狭くなっているので油断できない。
ここへ来るまでUさん、よほど眠かったのかうつらうつらしていたが、このカーブの連続で怖いと思ったのか
目を覚まして対向車が来ないかしっかり見ている。どうも私の運転は信用度が薄い。6時半頃に中房温泉の
第1駐車場に到着。登山口の中房温泉旅館の駐車場は宿泊客以外駐車出来ないので、ここに駐める以外
にない。ここへ来るまでにも坂の途中、道路端にかなりの車が停まっていたが、この駐車場もほぼ満杯。
しかし時間帯が良かったのか、まだ少々スペースがあったので何とか駐車することが出来た。
コンビニで買ってきた夕食を食べているうちに重大ミスに気が付いた。寝袋を持ってくるのを忘れたの
だった。8月と違って9月の下旬、朝方にはかなり冷え込むだろう。いつも泊まりの時には必ず持って
きたのに何というドジだろう。そしてドジのおまけがもう一つ。フィルムカメラのフィルムを高速道路の
売店かコンビニで買おうと思っていたのだが、夕食やら、明日の朝食、昼食などを買っていたらすっかり
忘れてしまった。年齢のせいか段々物忘れが激しくなってくる。この分だと恍惚の人(古い!)になるのも
間近?
 夕食が済んで明日は朝が早いので寝ることにした。こんなに早く寝るのは何年ぶりか?前回の焼岳の
時の道の駅と違ってここはすこぶる静かだ。これなら神経がナイーブかつデリケートな私でも容易に眠りに
つけるだろう。バスタオルをしこたま掛けて眠りについた。雨が降ってきたのが気になったが、ままよ明日は
明日の風が吹く。夜中にも結構車がやってきていたが、朝目を覚ましてみると駐車場は完全に満杯に
なっていた。この山は大天井岳から槍ヶ岳への縦走が出来るので起点の山として格好なのだろう。
こんな天候でも次々にやってくる。雨はほんのぽつり、ぽつり程度だったが、Uさんは行くのを最初躊躇
していた。以前この山に来ていたので無理に行かなくてもと思っていたのだろう。しかしこちとらはそうは
行かぬ。なけなしの高速道路代を払ってきているのだ。土砂降りならいざ知らず、この程度の雨で
帰る訳には行かない。
 Uさんの尻をはたいて5時22分出発。フィルムカメラは天候が良くないので持って行かないことにした。
まあデジカメは持ってきているのだ、何とかなるだろう。登山口のトイレで用を足していよいよ登山道に入る。
この登山道は北アルプス三大急登の一つなのだそうだ。確かに急ではあるがこれ位の勾配の山は
あちこちで登っているのでさして驚くには当たらない。本当の急登というのなら手足を使って四つん這いに
なって行くところが随所にあることになろう。むしろ道は広くよく整備されているので快適に登れる。
さすが人気の山は違う。最初雨は小降りだったが第一ベンチを過ぎる辺りから少し降りが良くなってきた
ので合羽を着ることにした。合羽を着ると中から汗をかくので本当は着たくないのだが、この降りでは
止むを得ない。第二ベンチの頃には風も出てきたので、「これは今日はもう天気の方は駄目かな?」
と思った。しかし第3ベンチを過ぎる頃から雨が止み、富士見ベンチを過ぎる頃には日が差してきた。
これはいけますぞ。紅葉が日に映えて美しい。振り返れば背後に中房温泉からそそり立つ有明山の
勇姿が見える。
中房温泉燕岳登山口
第二ベンチ
有明山
紅葉
駐車場から歩き出して2時間40分程で合戦小屋に着いた。雨はすっかり上がって日差しが明るいが
風が強い。うっかりするとみんな風に飛ばされてしまう。合戦小屋名物のスイカは時期を過ぎていたので
さすがに売っていなかった。ここで雨と汗にぬれた服を着替えたりトイレに行ったりして20分程休憩する。
天気が良くなってきて周囲がよく見えるのが何よりうれしい。左手に立派な山が見えてきた。下山してくる
人に聞いてみると大天井岳(おてんしょうだけ)だという。表銀座通過点の山と思われがちだが、どうして
どうしてここからの眺めは堂々たる物だ。
 やがて樹林帯が低くなり前方の視界が開けた。見るとこれから行く燕山荘が青空を背景に立っている。
右手の方には燕岳、北燕岳へと続く稜線も見える。遠くに見えるのは餓鬼岳か?辺りは全山紅葉して
最高の景色だ。そこから一歩登ると広い場所に出た。どうやらここが合戦の頭らしい。そこからの景色の
素晴らしさにもう夢中でカメラのシャッターを切った。もうすこしで頂上という期待と快晴の中で見る紅葉の
美しさがここまでの疲れを忘れさせてくれる。道は細く急登になったがそれが返って頂上が近いことを
伺わせる。
合戦小屋
大天井岳
燕山荘遠望
合戦の頭
さてとうとう燕山荘に着いた。ここまで約3時間半。ずいぶんと立派な山荘であるがここが各方面の
縦走の起点になっている事を考えれば頷ける。右に目を転ずればこれからめざす燕、北燕の頂上が
見える。花崗岩質の山なので白と緑が調和して本当に美しい山だと実感する。さすがに人気の山
なのであちこちに色とりどりのテントが張ってある。連休だけになお一層の人出なのであろう。
 視界はよいが風が強い。燕山荘には帰りにゆっくりと寄ることにして頂上目指して出発。
高山植物の女王コマクサはもう花のシーズンを終えてどこにも見あたらない。しかし頂上への
道は花崗岩の岩頭が林立しており、まるで天井の別世界のような景観を呈している。
イルカ岩、眼鏡岩などの奇岩があちこちにあり、さながら野外の自然彫刻ステージと言った所だ。
周りを見るとみな立派なカメラを持ってきている人たちばかりだ。この素晴らしい景観のためなら
重い三脚を持ってくることもさほど苦にならないだろう。返す返すもフィルムカメラを持ってこなかった
のは失敗だった。
燕山荘
燕岳
イルカ岩と大天井岳
頂上周辺
眼鏡岩遠景
眼鏡岩近景
写真を撮りながら歩き、ようやく頂上に到達する。駐車場から約3時間50分。順調に来ている。
頂上は狭い。所々まだ少しガスはかかっているが、辺りは360°の大パノラマである。北の方から
後立山連峰、剣・立山連峰、眼前には鷲羽岳、野口五郎岳を中心とした裏銀座の主稜線が
連なっている。その圧倒的迫力に只々感激だ。頂上がたて混んできたので、記念写真を撮り、
折角だから北燕岳へ足を伸ばす。北燕岳には写真家の御夫婦の先客がいて、私達にあれこれ説明
してくださってとても有難かった。鹿島槍ヶ岳や、剣岳、さらには烏帽子岳など我々だけではどれが
その山かわからないがお陰で知ることが出来た。私がカメラのフィルムを持ってくるのを忘れたと
言うと、カメラを持ってきていればいくらでも分けてあげたのにと親切に言って下さった。。山へ来る人に
やっぱり悪い人はいませんね。御夫婦は槍ヶ岳の写真を撮ろうと先刻より待機しているとのこと
だったが、何せ風が強くて少し肌寒い。我々は岩陰で昼食を摂りながら槍が姿を現すのを待つことに
した。昼食を摂っている間、東沢乗越を経由して中房温泉へ下る人にも会ったが数は二人程だった。
大体北燕まで足を伸ばす人は意外と少ない。多分大天井岳へ縦走する人が多いからだろう。
ここから餓鬼岳が間近に見えたので、餓鬼岳への縦走を計画に入れておけば良かったと悔やんだ。
明日はもう一日休みだったのだから出来なくはなかったのだが、泊まる準備もお金も持ってきて
いないでは止むを得なかった。後で家に帰ってから餓鬼岳の紅葉の写真を見るにつけ、もったいない
事をしたなとぼやくのだった。
燕岳頂上
針ノ木岳?
野口五郎岳
北燕岳
待つこと約1時間。ようやく槍が見えてきた。この位置からは小槍が見える。常念岳から見る槍ヶ岳とは
また変わった感じがする。写真家の方はどうもやはり面白い写真が撮れないとのことで、改めて燕山荘
の方から撮るとのこと。燕山荘までご一緒させて頂いた。天候の方は益々良くなってくる。我々はいつま
でもここに留まっていたい誘惑に駆られた。燕山荘から見る裏銀座の山々の連なりは圧巻でいつか
機会があったら縦走してみたい気になった。後ろ髪を引かれる思いで下山の途に着いた。
山々は全山紅葉してその素晴らしい姿を我々の眼に焼き付けずにはいなかった。
 最後は町営有明荘で一風呂浴びて山の疲れを癒し、この夏最高の思い出を土産に車に乗った。
槍ヶ岳
右手奥の山が餓鬼岳
燕山荘の道標と裏銀座の山々
水晶岳?
燕岳山頂より燕山荘を望む