平標山
1,984m
1999年 8月8日
私が山に登り始めたのは前年に三国山に姉の親子と友人のN君と一緒に行ったのが
きっかけであった。考えてみれば1,000m以上の山に自力で登ったのはこれが初めてであった。
その時の風景に魅せられて翌年N君にせがんで平標山に連れて行ってもらうことにした。
国道17号線からから平標登山口と書いてある所で車を停める。ここは松手山へ向かうコースの
分岐点でもある。私たちが採ったコースは平元新道と呼ばれるコースだ。アスファルトで舗装された
道を行くとやがて未舗装の林道に変わる。そこを延々と歩く。N君によると登山口までの足馴しに
こちらを行ったほうがいいとのことだが、1時間弱も歩くといい加減うんざりしてしまう。
足馴しなんぞ10分も歩けば結構だ。が、こちらは連れて行ってもらう身分。文句を言いたいところを
じっとこらえてひたすら歩く。おお私は何て辛抱人なんだ。天気の具合がいまいちはっきり
しないが、時々薄日が差したりもするので何とかこのまま持ってくれと祈る。雨さえ降らなければ
贅沢は言わん。
ようやく水場のある登山口に到着。ここで午前10時。山登りをする者にはあるまじき時刻だ。
落葉松や杉の林を抜けて登っていく。ようやく登山らしくなってきた。N君は風邪を引いているとの
ことで少し調子が悪そうだ。休憩の時に医者からもらった風薬を飲んでいる。まあ向こうは健脚の
持ち主。このくらいのハンデがあっていい。途中で中年の御夫婦を追い抜く。我々同様出発の遅い
人もいるものだと何故か安心した。やがてN君、薬が効いてきたのかペースが上がってくる。
前にいる人たちをどんどん追い越して行く。私もマラソンで鍛えた足だ。この位ではへたばらない。
が、彼に言わせると山の歩き方ではないそうだ。馬力だけで歩いているそうな。ほっといてくれ。
歩けりゃなんでもいいではないか。
1時間10分程歩くと突然目の前の視界が開けた。それまでの樹林帯から熊笹の茂る素晴らしい
風景が視界に飛び込んでくる。目の前の小屋が平標山の家らしい。右手へは三国山へ縦走する
コース。左手へは平標山へ登る木道の階段だ。ともかくここで休憩を取る。小屋の前に犬小屋が
あって熊に似た真っ黒い大型犬がいる。目つきが悪そうだ。誰かさんとそっくりだ。小屋の裏手へ
回ると水の出るところがあったので、ここで水を補給し、ついでに記念写真に及んだ。
カメラを持ってくるのを忘れたので途中コンビニで買ってきた使い捨てカメラだが無いよりましだ。
仙ノ倉山をバックにVサイン(何の意味だ?)
そうこうしているうちに雲が湧き出してあっという間に仙ノ倉山は視界から消えた。そして
木道を歩き出す頃には雨が当たって来た。これだから山の天気はわからない。
階段を登っている途中で朝早く登った人たちが降りてくる。中の一人は私に「釣りですか?」
などと聞いてくる。無理も無い。私の格好と言えば小さなザックとクーラーボックスを肩に
掛け、靴は普通のスニーカー。およそ山に登る格好ではない。ま、そんなことは全然気に
しないで登って行く。雨が少し強くなってきたが夏山特有の雷が鳴らないのが幸いだ。
下山してくる人たちの中にはこの雨で頂上到達をあきらめて戻ってくる人もいたが、
こちとら遠路はるばる柏崎からやって来ているのでこの位の雨では帰れない。
それにしてもこの階段にはいやになる。歩幅が決まってくるので返って歩きづらい。
山の斜面の崩落を防ぐためにはしょうがないのだろうが、これは山の美観を著しく損ねる。
(と嘆いたところで別に私にいい知恵が浮かぶわけではないのだが・・・・)
山の家を出発してから40分程で頂上到着。が、周りはしっかりガスの中。眺望は全くだめ。
とりあえず証拠の写真を1枚。
N君と協議の結果仙ノ倉山まで片道45分もあれば行って来れるとのことなので、折角だから昼食後
仙ノ倉へ向かう。山の稜線歩きは晴れていれば気持ちがいいが生憎の雨。風も少しついているので
夏だというのに寒いくらいだ。雨具の用意はしてあるのだが面倒臭がって着ていない。
少し下り池塘の見え隠れする平らな道を歩き、やがて上りになって狭い登山道になる。
道の右手を外れれば谷底にまっさかさまだ。やがて前を歩いていたN君が突然立ち止まり、
ここが頂上だという。私はこんな道の途中みたいなところが頂上なのかと思ったが、辺りは全く
ガスの中で様子がわからない。頂上のような感じはしないし、標識も無いので写真は撮らずに
平標に戻った。
戻った頃になると雨も止み少し日も差してきた。みると朝方追い越した中年の御夫婦がちょうど
到着していた。仙の倉まで1時間で行って来たから、この夫婦とは随分差がついた感じだ。
挨拶をして下山に向かう。皮肉なことに今頃天気が良くなってきた。熊笹が緑の絨毯を
敷き詰めたようでとてもきれいだ。遠くの山々も見えてきた。やっと高い山に来た満足感が広がった。
ただ下山後またあの別荘地の道をだらだらと歩かなくてはならないのには閉口した。
何とか車で通れればねえ。
その後、山の本を手にする機会があり、仙ノ倉山の頂上写真を見ると何と方位盤が写っている
ではないか。すると我々が到達した所は頂上ではなかったのだ。頂上はもっとその先だったらしい。
道理で早かったわけだ。私は初めて2,000mもの山に登ることが出来て感激したのにあほらし。
N君よ、初心者に嘘を教えたらあかんで。なおこの一件はステーキを奢ってもらう事で
解決出来るでしょう。