火打山
2,462m
2000年 9月15日
仕事先で何度も平標山に行って飽きた話をしたら、たまたまそのおばちゃんが登山をやって
いる人で、他の山へ行きたいんだったら連れて行ってあげようかという話になった。ただし
アッシー君をやってくれたらという条件付だった。山は火打山だった。幸いこの春に新車を購入
したばかりだったし、6月に笹ヶ峰まで行っているので道順はわかっていた。
当日向こうはあと二人のオバちゃんがついてきた。以下名前をK1号、K2号、K3号とする。
まだ暗い朝の5時に出発。車中は女三人寄ったら何とかでやたらと賑やかだ。ほら日が昇るだの、
妙高山が見えて来ただの、誰々さんがどーだとか、あーたら、こーたら喧しい。これだけ喋っていたら
口に物を入れる余裕なんぞないはずだがしっかり何か食べている。おばちゃんパワーに圧倒されて
私は一人おとなしく運転をするのだった。妙高笹ヶ峰の登山口に着いたのは7時だった。
2号さんは私のリュックを見て「何これ、軽ーい。」そしてクーラーボックスを見つけて「これ山へ持って
いくの?」と呆れ顔だった。そして次に何をするかと思ったら自分の重いリュックを私に背負わせて、
自分は私の軽いリュックを背負うのだった。「あんたは男なんだし体格がいいんだから、この位
持たなきゃだめよ。」と有無を言わさず従わせるのだった。
 さてK1号さんを先頭に出発したが恐ろしくペースが速い。さすが毎週山へ行っている人は違う、
と感心していたが、後で聞いたところによると1号さんは先頭に立つとペースが上がって
しまうのだそうだ。20分ほど歩いたところで休憩。私はこんなに速いペースでこの先ついていけるか
少し不安になったが黒沢につくころには少しペースが落ちたので安心した。ここでまた休憩。
ここから急登になるので少し長めの休憩となった。ここの沢には倒木が橋代わりに架かっている。
日陰となっているし。沢の水が気持ちいい。
 再び行動開始。途中の十二曲がりと呼ばれる急登は道が狭くて渋滞となった。どうやら団体さんも
来ているらしい。さすが百名山。花の時期を過ぎても訪れる登山客は多い。
黒沢から1時間半ほどで富士見平と呼ばれる地点に到着。ここは黒沢池ヒュッテからの道との
合流点である。この間2号さんのペースが上がり、1号さん、3号さんが遅れ気味になった。
考えてみれば2号さんは私の軽いリュックを背負っているのだから当然である。しかしさすがに
私に悪いと思ったのか途中でリュックを交換した。だが私よりも後の二人に順番に背負わせたほうが
公平というものであったろう。それはともかくここから高谷池ヒュッテまでは途中下っていく所も
あって2号さんはますます快調にとばす。「いいんかいんな、後の二人を待っていなくて」と
私は少々申し訳ない気持ちになったが、こちらは初心者だし、連れて行ってもらっている身分。
下手な口出しはしないことにした。高谷池で待つこと15分、後の二人も到着。ここで大休憩。
ここからは火打山がよく見える。穏やかな表情の山だ。ここで飲んだり食ったり、写真を撮ったりと
何と30分も休憩してしまった。こんなんで今日中に着くんかいなと思ったが、食い物を色々めぐんで
もらったので諫言はしないことにした。第一おばちゃん連中を怒らせると後が怖い。
さて高谷池ヒュッテを後にして天狗の庭を通過し、いよいよ火打山の本体に取り付く。
振り返ってみれば池塘の中に浮かぶ高谷池ヒュッテの三角屋根が印象的だ。
雷鳥広場を目指しての急登でまたもや2号さんと先行することになったが、ここへ来てついにその
2号さんも遅れがちになってきた。ここからは鬼ガ城とよばれる山肌が露出したところが良く見える。
雷鳥広場で小休止し、頂上への最後の急登、ガレ場地帯である。ここでついに2号さんギブアップ
宣言。私に先に言ってくれとのこと。どうも今迄の飛ばし過ぎがたたったようだ。
で、私は一足先に頂上へ。やったー。初めて2,000m以上の山に自力で登りました。
所要時間5時間足らず。途中の休憩が長かったのでまあこんなもんでしょう。
振り返れば妙高山、黒姫山、飯縄山が一望の下に見える。そして反対側には今まで見えて
いなかった噴煙を上げる焼山の姿も。感動です。好天に恵まれてまさしく360度のパノラマです。
辺りの写真を撮りまくっていると2,3,1号さんと次々に頂上に到達して来た。一同記念の写真を
撮り、昼食となった。まずはビールで乾杯!やがておばちゃんたちは次から次へと酒の肴やら、
漬物やらを出してきてほら食え、やれ食えとやたらサービスがよろしい。が、私が自分の食料以外
持って来ないのがわかると、「あんた、山へ来るときは私等みたいにいろいろ持ってきて
交換するんだこて」と、なかなか手厳しい。頂上でゆっくり昼食をとった後下山ということになったが、
3号さんが黒沢池の方はまだ行ったことがないというので、少し遠回りになるがそちらを通って下山
ということになった。
高谷池ヒュッテまで一旦戻り、置いてきた荷物をとり、黒沢池へと向かう。沢の石のごろごろした地帯
を抜け、急登を登りそのまま稜線伝いに行くとやがて下りにかかる所へ出た。どうやらこのピークが
茶臼山と思われる。ここからの妙高は頭をちょこんと出して面白い格好だ。やがて黒沢池ヒュッテの
八角形のドームが見えてくる。なかなかモダンな建物だ。ヒュッテに着くと大勢の人でごった返して
いた。大きなシェパードが2頭いたがなかなか人懐っこい。黒沢池は花の時期が終わっていたので
残念だった。時期がよければワタスゲの花が咲き誇っているのを見ることが出来ただろうに。
しかし快晴の中、湿原地帯を歩くのはなかなか気持ちが良い。やがてまた急登となり、行きに通過した
富士見平に着いた。後はもう下るばかりである。
やっと登山口の笹ヶ峰に帰ってきた。時刻はもう夕方の5時になろうとしていた。考えてみれば
約10時間も山の中にいたことになる。私にとってこんなに長く歩いたのは初めてであったが、日頃
ランニングをしていたお陰でどうやらこうやら何とか行ってくることが出来た。
それにしてもおばちゃん達はタフだ。やっぱり毎週山へ行ってる人は違う。帰りはお決まりの温泉へ。
そして帰りの車中はまたもやおばちゃん達の井戸端会議の場と化すのだった。
(ホント、お元気ですこと)