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メコン川で
南ベトナム観光のひとつに、メコンデルタの町ミトーから出るメ
コン川クルーズがある。ホーチミンから日帰ができることと、行き
帰りの道中で都市部では味わえない村落の生活振りが見られるとい
う楽しみもあって、このツアーは人気がある。
暑いメコンも船を走らせると風が心地いい。黄泥色の流れを行き
交う船、川岸の木立のなかに見え隠れする住居。この平穏なメコン
のたたずまいには、あのベトナム戦争の痕跡はどこにもない。
ここは2度目の訪問だが,今回は船のガイドに淡いピンクのアオ
ザイを着たお嬢さんがついてくれた。息子と二人だけのチャーター
船なのに、なんとまあ、嬉しい贅沢をすることになった。
彼女は母国語のほかにフランス語と英語を話し、いまは日本語を
勉強中とか。「私の日本語は、まだまだ。今日はお二人にいろいろ
教えてもらいます」という。そうは言うものの、柿の実に似た果物
を説明しながら「モモクリ三年、カキ八年なんてね」などという。
日本の何処から来たのかと聞くので、日本列島を描いて、四国高松
のあたりを示してみせると、なんと「ここに瀬戸大橋ありますね」
というからびっくりする。
それに、彼女の日本語には、誰が教えたのか時々関西弁がまじっ
たりする。お客を喜ばせるため、あらかじめ用意してあるシナリオ
だとしても、そんなことを微塵も感じさせない初々しさがある。彼
女の一生懸命さには胸を打たれる。
絵は、メコンを行く運搬船を描いたもの。カメラを向けた私に、
手を振ってくれたこの運搬船のひとも若い女性だった。ベトナムは
いま、誰もが懸命に働いている。見ていて実に気持ちがいい。 |