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中国雲南省・昆明の市街を車で移動中、バス停に立っているひとりの若い
女性に驚いた。突然のことに「まさか?」と思ったがどうしようもない。
先ごろ、テレビが昨今の中国事情を特集する番組のなかで、山高い貧困の
村で初めて大学受験に合格した娘さんに焦点を合わせていた。彼女が入学す
るためには七万円が必要だという。病弱の父親が、頼りにしている農耕用の
牛を手離しても二万円にしかならない。村民がお金を出し合うがこれも数千
円どまり。もうお手上げという段階で番組はいったん中断した。
わたしは、抗(あが)らうすべもない、不条理な現実に耐えようとする彼
女のけなげな表情に胸を打たれた。何とかならないものかと自分のことのよ
うに気を揉んだ。番組が再開して、お金は銀行が村民全員を保証人に融資す
ることになった。返済も出世払いでいいという。(中国の銀行もあじなこと
をするものだ)。よかった。
やがて大学へ向かうという日、彼女は見送りに集まった村人を前に「卒業
後の私の一生は、この貧しい村の発展のためのささげます」と約束するのだ。
彼女の言葉に微塵のウソも感じられない。なんともはや、いい顔で旅立って
いったのである。
はじめに書いたバス停の女性。何冊かの本を胸に真っ向を見据えた表情は、
まさしくテレビでみた、あの彼女ではないか! と思ったのだ。偶然にして
はでき過ぎた話だがそう思ったのだから仕方がない。
いま「先に豊かになれる者から…」と突っ走っている中国。急ぎ足の旅だ
ったが、私の目にもまだまだ勝ち組は少数派だ。テレビでみた彼女の村が豊
かになるには先が遠いという現実をたくさん見てきた。
いらぬおせっかいだが、あの彼女は間違いなく、反日デモなどと騒いでいる
ひまなどないのにと思っているのに違いない。 (2005.4.23山陽新聞)
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