う〜ん、話が長くなりそうだから、いったん全部放棄して
途中からにしようかな
といいつつ書く(笑)
なんか、途中からギャグ調が入ってしまった・・・
第壱幕
第参場
やや薄暗い、地中の部屋。
防音壁に囲まれて、完全に音が遮断された部屋。
壁には二つの影が映っている。
珈琲の香りが漂う部屋の中で、影の所有者の声だけが空気をふるわせていた。
「・・・ほんとかね、それは」
「ああ、残念なことに、人類最大の敵は、やはり人類なのだよ」
「・・・それで我々の立場はどうなるのかね」
「さあな、その時になってみないと解らん」
「・・・下手をすれば、人類滅亡だぞ。」
「・・・奴らは最強の力を得たと思いこんでるからな。考えてもいないのだろう」
二つの珈琲から立ちのぼる湯気を通して、互いの顔を見る。
その表情は暗い明かりのせいで、伺い知ることは出来ない。
「・・・ふん、我々はこの戦いを生き残れるのかね」
「・・・努力でどうにか成るものなら、努力は惜しまんがね。
あいにく今回は、最大限の努力をしたとしても、死ぬときは死ぬ」
「・・命の決定権は我々には無いということか」
「・・・かと言って、あの世で後悔したくはないがな」
互いに首をすくめた後、残りの珈琲を一気に飲み干した。
「・・・とりあえず、奴らがいつ頃暴走するのかを調べてみてくれ、
ま、狂信者達のことだ、面倒な事はせずに、
完成したらすぐにでもはじめるだろうが・・・」
「・・・解った、ダミーの完成時期について調べることにするよ」
一人残った男が、椅子に座り直すと、テーブルの上のボタンを押した。
「山城三佐を呼んでくれ」
「はい」
12分後に彼は現れた。
「レールキャノンの方はどうなっている」
「はっ、今のところ8基が建設中です。
このうち4基は弾道修正システムとの接続が終わり、現在最終調整段階です。
残りについても、3日で接続が完了します」
「よし、何か問題点は」
「今のところ、問題は発生していません」
「最終調整にはどれぐらいかかるのだ」
「バックアップシステムの構築も合わせると三週間かかります」
「二週間でやれ。バックアップは後回しでも良い。とりあえず動くようにしろ。
何時はじまるのか解らんのだからな」
「はっ。解りました」
「レーダーの方は」
「PARを新たに2基建設中です。こちらは二週間以内に使用可能になると思われます」
「それから、例の泥はどうなった」
「あれは既に8割方完成しました。上の了解もとれました。
あと、陽子砲の方ですがまだ上は何も言ってきません」
「そうか、ならば一応準備だけはしておけ。・・・よし、解った下がれ」
「はっ」
●
朝食の準備を始めようかと思っていると、電話が鳴った。
「シンジ君?」
「あ、ミサトさん」
「起きてた?え〜とね、今日の事なんだけど、学校は行かなくても良いわ」
「え〜と、じゃあすぐに行かなきゃいけないんですか?」
「あ、いや、すぐって訳じゃなくて、九時に来てくれればいいから。
学校へはこっちから言っておくわ」
「九時ですね。あ、え〜っと、その・・綾波も同じ時間なんですか?」
「え、レイちゃん?う〜ん、どうだったかしら。ちょっと聞いてみるわ・・・」
おそらく隣に居る人と話しているのだろう。話し声が聞こえてくる。
マヤさんだろうか?
「・・・あ、レイちゃんも一緒みたいよ」
「えっと、じゃあ誘って一緒に行きます」
「・・・あ〜ら、シンちゃん。何か企んでるのかな〜」
「そ、そんなことありませんって。じゃあまた」
「ちょ・・」
シンジは強引に切ってしまった。
「え〜っと、この時間だったら、朝食に間に合うかな」
確かにお弁当を作る時間が浮いたので、かなり早い時間であった。
シンジは、着替えと、朝食を終えると、
まだ暗い道を、風を従えて駆けていった。
トントン・・
「綾波?」
シンジは戸をたたいたが、返事はない。
・・寝てるのかな?
起きていたとしても、返事が返ってくる確率は15%を切るだろうが・・・
シンジはそのままドアを開けて、部屋の中を見渡す。
レイは遅めの朝食を取っていた。
「おはよう。綾波」
「・・・おはよう」
「今日ネルフに行く予定だろ。時間聞いたら同じだって言うから、
一緒に行こうと思って」
「そう・・・」
レイはコーンフレークのような物と、ビスケットのような物食べている。
栄養食品か何かなのだろう。
机に錠剤が出してあるのを見ると、いささか、気が抜けるシンジだった。
「ごめん。あがらせてもらうよ」
返事は無かったが、入っていく。
ふと、台所を覗くと、備え付けの調理器具が幾つかあるだけで、
それすらも使われた形跡は皆無だった。
シンジはレイのお茶を入れる。レイはちょうど食べ終わった所であった。
シンジが片づけをする間、レイはそのお茶をすすっていた。
レイはその湯気を見ながら、考え込んでいたが、
ふっと立ち上がると、お茶を入れはじめた。
「はい。碇くん」
「あ・・ありがとう」
ちょうど、片づけの終わったシンジにお茶が差し出される。
シンジは少し驚いたが、礼を言って有り難くいただいた。
その言葉に、少女は僅かだが、表情の薄氷を溶かしたようだ。
「・・・じゃ、そろそろ行く用意をしようか」
●
ネルフに着いた二人を迎えたのはミサトだった。
「・・あ〜らシンちゃん。やるわねぇ〜」
それを言うのが目的だったが・・・
技術部の方で簡単な説明を受けた後、
シンジの方は模擬システムでのシミュレーションを行うことになった。
その間に、レイの方は起動実験である。
「う〜ん、あれ以来乗ってなかったけど、シンクロ率は変わらないわね」
「そうですね、むしろ上がったみたい・・・模擬体では解りませんけど」
ミサトとマヤが、パネルに表示されるデータを見ながら話す。
「とりあえず、実戦の勘が鈍ってるでしょうから、
さっき言ったシナリオ通りにお願い」
「わかりました、」
シンジの視界に、第三新東京市の風景が映し出される。
三次元グラフィックスで再現された市街は、訓練を繰り返してきたシンジには
おなじみのはずだったが、どこか違和感がある。
何度となく戦闘が行われた街は、何度となく閃光と爆発を受け、
そのたびに破壊されてきたが、最後の爆発、つまり零号機の爆発によって、
街の地図は大幅な書き換えを余儀なくされたのである。
・・・確かに再現しないと訓練にならないけど・・・
シンジは、少しだけ肩を震わせると、考えを振り払うように、
響いてくる指示の声に集中する。
「じゃあ、こっちは任せておいて向こうに行きましょうか」
「ええ、そうしましょう」
訓練が異常なく開始されたことを見た二人は、弐号機の起動実験の方へ向かった。
二人が実験司令室の所に来ると、すでにレイはエントリープラグの中であった。
レイは目を閉じている。
「内部バッテリーは指示通り減らしておきました。
これで暴走時の危険はかなり減少するはずです」
「ごくろうさま。じゃ早速はじめてちょうだい」
つり上げられたエントリープラグが挿入される。
その間も、レイは目を閉じたままだ。
・・・シンクロスタート
・・・起動臨界・・越えません
「・・・起動しないか・・・」
「どうかね。弐号機の方は」
ミサトの後ろから、冬月が声をかける。
碇司令は不在である。当然、その間の代行は副司令である冬月が行う。
冬月に場を譲りながら、ミサトが状況を説明する。
「ふむ。やはり、無理か」
「パイロットの慣れの問題だと思われます。
零号機の時もかなりの時間を要しましたから」
「・・・しかし、あれはエヴァに慣れていなかったという要素が大きかったからな。
今起動しないなら、相当に苦労しそうだな」
「・・・シンジ君を弐号機に乗せてみますか?
初号機の時は、初めてで起動しましたから・・」
「・・・ふむ。しかし初号機は特別だからな・・・
起動する可能性が無いわけではないが・・・
・・・やってみる価値はありそうだな。手配しておいてくれ」
マヤが返事を返して、手元のボードにメモする。
・・・アスカが聞いたら本心はともかく、文句言うかもね
と考えて、ややミサトは表情を崩した。
午後からは、シンジが初号機に乗る番だった。
午後からと言っても、それまでに作業があるので、
実際にはじまったのは4時頃だったが。
・・・初号機、起動します
・・・暴走ありません
「・・・やっぱり高いわね」
「・・・そうですね・・・」
シンジは初号機の手を見る。
そこに着いていた血の跡は綺麗に洗浄されていたが、その感覚は覚えている。
カヲル君が言った言葉が聞こえてくる。
・・・君は死すべき存在ではない。
自分は、その言葉の意味の僅かしか理解できていないのだろう。
だが、僅かでも理解できるようになってきている。
・・そう、自分を必要としている人が居る
・・そう、自分が出来ること。自分にしか出来ないことがある
・・あるいは、自分が必要としているのかもしれない
●
本部でのテストが終わった後、シンジは、ミサトの殺人運転に何度か舌を噛みながら、
アスカの居る病院までやってきた。
ミサトも簡単な報告は受け取っていたが、実際に見てみよう、
というのでお見舞いに来た。
ミサトには、驚くほど回復したように見える。
入院当初に見舞っただけなので、そのころから比べれば格段の回復だ。
少し疲れているようにも見えるが、報告にあった、リハビリによるものなのだろう。
シンジはアスカの手を取って、必死に話しかけている。
ただ、エヴァの事は話に出さない。そのため、話題に困ったシンジの言葉は、
接続詞と感嘆詞だらけである。
・・ふふ、アスカが静かでも、シンちゃんの慌てぶりは変わらないわねえ
「あ、そうそう。退院の話聞いてる?」
「・・いいえ、聞いてませんけど、退院できるんですか?」
「今すぐにって訳じゃないけど・・・たしか、あと5日程度って」
「そうなんですか、よかったねアスカ」
「そうよねえ、こんな所のまずい料理よりも、
シンちゃんの手料理食べたいものねえ〜アスカ」
アスカは頷くと、ベッドから降りようとする。
「あ、アスカ」
「ちょ、ちょっと、だから今すぐじゃないって」
そう言われたアスカは、じっとミサトの目を見つめる。
「うっ・・・・わ、わかったから。交渉して早めてもらうから、
と、とりあえず落ち着いて」
アスカはまだ納得しない様子である。ミサトを見る目がさらに厳しくなる。
「うぅ・・・その目は、さ、さては、信用してないわね。私が嘘ついたことある?」
シンジとアスカが即座に頷く。
「うき〜」
その後の説得は、面会時間の終わりまで続いたという。
●
「すぐに作りますからね」
「ぷは〜、やっぱり仕事の後のビールは最高ね」
「・・・ミサトさん」
「はいはい」
マンションに戻ってきた二人は、いままで何度も繰り返された会話をする。
徐々に戻りつつある日常が、ミサトのビールを美味しくしているようだ。
「いただきます」
「いただきま〜す」
料理が出来上がって、一人は美味しい料理を味わう楽しみを、
もう一人は、美味しそうにする笑みを見つめる楽しみを見いだしている。
「今日は疲れたでしょ。久しぶりだったからねえ」
「確かに少し慌ただしかったですね。でも今の時期に何故有ったんですか?」
「う〜ん、私も知りたいわねえ。マヤに聞いたら、『副司令からの指示ですぅ』
って言うし、副司令に聞いたら『一応備えだけはしておかないとな』としか言わないし」
シンジは、ミサトの物まね口調に苦笑しながらも、煮付けに箸をのばす。
食事を楽しくしようという、ミサトなりの配慮なのだろう。
シンジもこの話題についてはそれ以上触れなかった。
食事が終わって、シンジが後かたづけをしている後で、
ミサトは考え込んでいたが、ややためらった後に声をかけた。
「う〜んとね、私なりにいろいろ調べてみたんだけど、どうやら戦争は続きそうね」
「・・・・」
「・・あまり驚かないわね」
「・・僕もなんとなくそう思ってましたから」
「そう・・どうやら自衛隊の方も戦闘準備を進めてるみたいよ」
「・・・」
「あと、エヴァの六号機がこっちに来るらしいわ」
「へえ〜六号機なんてあったんですか」
「新たに建造されたらしいわ、リツコが行って、色々やったそうだけど」
「ふ〜ん」
「あと・・・」
「え、何ですか?」
「あ、なんでもないわ。それより、明日から学校は閉鎖だそうよ」
「え、そうなんですか。じゃあ勉強はどうするんです」
「私が教えてあげようか。こう見えても教員免許持ってるのよ」
「へえ〜、そうなんですか」
シンジは、ミサトが教師になる場面を想像してみたが、
この想像は解析不能のコードを返しただけだった。
「ま、しばらくは自習って事になるかしらね。
・・・っところでレイちゃんの方はどうだったのぉ?」
突然変わったその口調は、表現するなら、ビールの肴を探す口調である。
「え、あ・・・綾波を夕食に誘ったんです。綾波は料理しないから」
シンジの声に、ややデクレッシェンドがかかっている。
『誘った』という表現に異論があるところであろうが・・・
「ふ〜ん、そう・・意外にシンちゃんも積極的よねぇ〜」
「あ、いや・・唯一の取り柄みたいなものですから」
「う〜ん、唯一はともかく、取り柄であることは確かねぇ」
平和な会話。
それが偽りの平和であっても、その会話を楽しむ事は、許されるはずであった。
つづく
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