モンゴルクラッシックを弾く
以前、山形県で開かれたモンゴルの曲を演奏する音楽会で、私はシャラブの歌の伴奏をしました。その歌詩は大平原、月、両親、祖父母、祖先、お墓、大平原などに感謝の意が込められていました。日本では失われつつある、人間の根源的な愛を大切にする民族だと思い大変感激しました。
曲は美しい旋律と切ないハーモニーが、ノスタルジーをかきたてられました。モンゴル音楽は東洋のなかでも独特なところがあり、モンゴル人でなくては表せない情感が至る所に見受けられました。それは馬頭琴協奏曲にも共通する点です。
私が馬頭琴と演奏するのは今回が初めです。共演するデルゲルマーさんは、今年メモリアルイヤーであるモンゴル人作曲家ゴンチグソムラーらが創設した、ウランバートルの音大で学ばれました。そこで、馬頭琴を専攻し、現在、国立馬頭琴楽団の奏者です。モンゴルでは女性が足を開いて座ることをタブーとされていたので、最近まで女性が馬頭琴を弾く事はなかったそうです。そのため、彼女はモンゴルで3人目のプロ馬頭琴奏者です。
馬頭琴の音は洋の東西をつなぐ音色で、独特の響きです。ピアノともよく溶け合う響きが作れると思いますので楽しみです。
今回演奏するゴンチグソムラーのピアノのための24の前奏曲は、作曲をロシアで学ばれたので、手法は西洋的ではありますが、曲想はすべてモンゴルだと思いました。
この曲はほとんどの方が初めて聴かれると思いますが、様々な旋律がどこかで聴いた事のあるような印象を受けると思います。それは、モンゴル人と日本人の耳や感性が近いからではないでしょうか。感性で言えば、儚いものへの共感、死が無ではないとか、そうした感じを受けるのです。
今回のようなモンゴルの曲を集め、ピアノ曲で言えば、日本で演奏されることが珍しいモンゴルの作曲家を生で聴いていただける、貴重な機会と思いますので、是非お運びいただけたらと思っております。