電友下越       第51号(H21.10)                              電友下越へ戻る

O「夫の死・妻の死の衝撃(悲しみを乗り越えて)」    

                                           謹んでご冥福をお祈りします

                                                                                      新潟市秋葉区 佐藤 肇

  この非常にショッキングな標題は、7月に放送されたNHK番組のタイトルです。

  私は昨年6月に妻を亡くしました。暗い話ですがお許しください。妻はガンを患い入院し、手術後

 意識が戻ることなく4日後に逝きました。そのあとは通夜やら告別式などの行事が続き、行政機関

 への届け出、銀行や郵便局などへの手続き、生活していくための掃除、洗濯、ゴミ出し、買い物、

 食事づくりなど、ゆっくりと気持ちを整理する時間もな<、月日は過ぎていきました。1年も過ぎた

 今でも、まだ信じられないでいます。気持ちとしては、まだ一緒に暮らしているままなのです。配偶

 者が急に居なくなるということは本当に大変なことで、大きな衝撃と悲しみ、深い寂寥感で押しつ

 ぶされそうでありました。人間の生命というものが、こんなにまで懜いものとは思ってもいませんで

 した。

 昼間ひとりで居ると話する相手が居ないことが痛感され、ひしひしと孤独態がせまってきます。

 「共に生き、共に死にたい夫婦でも、やがてはひとり、―人に還る」という言葉が身に沁みてきま

 す。

  妻に先立たれた人が、どのような気持ちで、どのように生きているのか知りたくて、有名人の書い

 た本を読んでもみました。

 主なものとしては

  新藤兼人(映画監督)「愛妻記」、永 六輔(放送作家・詩人)「妻の大往生」

  江藤淳(作家)「妻と私」、城山三郎(作家)「そうか、君はもういないのか」

  倉嶋 厚(天気予報官)「やまない雨はない」、宇津井健(俳優)「克己心」など

 

  自分と同じ気持ちであると納得できる部分もありますが、やはりひとり一人状況や条件、考え方

 など異なっており、これで理解できたということになっていません。

  五木寛之著「人間の覚悟」では「人が身をよじるような苦しみ、悲しみも結局どこまでいっても、

他の人に代わってもらうことはできない。生まれて、生きて、老いて死んでい<。それをすべてやる

ということに価値がある。生きているだけで人は価値がある。」そして結論として「生きることの大

変さと懜さを胸に、この一日、一日を感謝していくしかない」としています。私もいつまでも悶々と

していても仕方がないので、自分を励まし、心を強<して暮らしていきたいと思うようになりました。

 また、この1年間、後に残された者として何が出来るか、考えてきました。

 今年は長野の善光寺で7年に―度の御開帳があるので、旅行ツアーに参加し、善光寺で大法要に

 妻への祈祷と供養をして頂き、少しおだやかな気持ちになりました。

 6月には、妻の一周忌法要と納骨をすませ、法要に参加してもらいました人達全員を「供養懇親会」

 という名目で、月岡温泉「華鳳」へ誘い、妻との思い出話に華を咲かせ、夜は静かに更けていきま

 した。

 もうひとつ、―周忌法要にあわせ、妻にいろいろな苦労をさせてしまったことを思い、詫びの言葉と

 感謝の気持ちを詞に書いてみました。詞の表現や内容は稚拙で恥ずかしかったのですが、私の気

 持ちが少しでも伝えることができたらと、この詞を歌にしようと考えました。娘も乗り気になって、プ

 ロデュースを引き受けてくれました。大学時代の友達に作曲、ボーカル、伴奏曲、ジャケットのデザ

 インを依頼して出来上がった のが「めぐり愛」のCDです。私としては大変気に入っています。

 私も少しは落ちついて生活ができるようになり、秋葉区老人クラブ連合会(会員約1万人)の副会

 長、機関紙編集の責任者、地域クラブの会長などの仕事もあり、事務局へ行けば役員や会員とい

 つでも楽しい会話をすることができます。

 趣味ではOBの囲碁クラブで勝負を楽しんだり、バンド活動も細々と続けており、8月には娘の友達

 の息子の結婚式に依頼されて、演奏してきました。私としては、妻を亡くした悲しみを乗り越えたと

 はとても 思えませんが、これからも、自分に残された時間を大切に、ゆったりとした気持ちで、自

 分らしく少しでも輝いて、生きていければと思っています。

 

         「めぐり愛」

      いつでも君は  明るい笑顔で

    誰にも優しい 時間が流れる

      瞳かがやき  明日にかける

      君と逢えて はてしなく

      楽しい人生 夢を 夢を

      ありがとう ありがとう

          (中略)

      君との出逢いは 人生の奇跡

      ふたりで歩んだ 愛しの日々は

      ごめん ありがとうの 繰り返し

           (以下略)

 (次回は阿賀町の 西 村  力 さん にお願いします。)