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マンションの改修工事について

質問

分譲マンションの理事をしています。築後10年目になるので外壁の塗装工事を検討し、
数社の工事会社に見積を取得したのですが、その金額にかなり開き(2倍近く違う)があり、
かえって不信感を抱いていいます。どう進めたら良いでしょうか。

回答

外壁補修は9〜15年、屋根防水は露出アスファルト防水の場合で10〜14年など、標準的な修繕周期として言われていますが、
これはあくまで過去の多くの修繕事例等から割出された目安であって、
修繕を実施するかどうかの判断は、
現在の建物がどの様な状態になっているかを確認した上で修繕の時期かどうかを判断する必要があります。

つまり

1)劣化度調査を行い
2)管理組合の意向確認(調査結果により、塗装だけでいいかどうか。性能のグレードアップなどの他の要望はないか)
3)改修計画の作成(将来の計画も含め)
4)改修設計の実施
5)改修設計に基づき、必要な工事を割り出し、見積要綱作成
6)工事会社数社から見積取得
7)価格のほか信頼度等も加味して工事会社を選定し
8)工事を実施するのが手順です。

 これを責任施工(施工者が1〜8の手順まで全て行う)で依頼した場合、
仕事を取るために、劣化に応じた工事範囲を提案しないケース(5の工事内容を限定し、安い見積を出す)や
安値受注が原因で工事の手抜きなどでトラブルとなっていることもありました。

 1〜5及び7への助言及び8の工事中の工事監理を、
建築家に依頼することで、劣化状況に応じた改修内容の提案や
将来的にも計画的で効率的な改修が可能となります。

 闇雲に見積を依頼する(工事入札する)のではなく、
まず建築家に依頼して、
劣化などの調査をした上で、また総合的な視点で修繕計画を立案し、
管理組合の意向も反映させて改修の設計をおこなうことが大事です。

 その設計に基づき見積りを依頼することではじめて、
同じ工事内容が金額で比較する
ことができます。
また、工事が設計の通りできているかどうかを確認する工事監理も必ず依頼してください。

■マンションの改修工事についての詳細は国土交通省作成の
改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル(平成16年6月 *該当ページへリンク)に詳しく説明されています。

なお、分譲マンションは昭和40年代後半から増加し、現在300万戸程度のストックがあるといわれています。
短期間に急速に普及したこと、一戸建と比較し権利関係や利用関係が複雑なことから、
建物の維持管理や居住ルールをめぐってトラブルが発生していることもあります。
快適なマンション生活を送っていくためには、区分所有者全員が一体となって管理にあたること、
その中心となる管理組合がもっと自立していくことが大事です。

 平成9年2月に、建設省は「中高層共同住宅標準管理規約」を改正しました。
*平成16年に再改正 詳細は国土交通省の住宅政策のサイトを参照してください

・管理組合の役割として長期修繕計画を作成すること
・駐車場・専用部分のリフォーム・ペットの飼育等のトラブルが増加している項目
・店舗との併用や同一敷地内に複数棟のある場合などのケースについて

規約上で明確にしたのが改正の主眼です。

 兵庫県南部地震の時の
被災マンション再建等をめぐっての合意形成の困難さを教訓にして、
不具合が顕在化する前に、長期修繕計画を立てていくような、
積極的な管理組合運営が大事と思われます。

*NEW 平成20年6月に国土交通省が下記を策定しました。
分譲マンション長期修繕計画の標準様式(長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメントについて)