■テーマ

「近畿圏のマンションの市場動向について」 

講師 石丸 敏之 氏(株式会社 不動産経済研究所)

今回は、市場という観点で、マンションの需要動向を探ってみようと思い、石丸先生に講演を依頼しました。

■不動産市場動向調査について

株式会社 不動産経済研究所は、企画調査部門と編集部門(大阪事務所は企画調査部門のみ)を設け、マンション業界のデータ提供やリサーチなどのサービスを行っています。基本的に民間マンションの統計調査(公団公社は除く)を行いますが、定期借地権の物件も別に統計を取っています。ここでいうマンションとは分譲であり、3階建て以上の共同住宅、構造がRCまたはSRCのものを指します。首都圏では30平米以上、その他では20平米以上を調査対象としています。統計は、1973年からのストックがあります。

特に、パンフレットに関しては、多数集まってくるため過去のデータとして、価格等の情報は豊富にあります。

■マンション市場の経緯について

現在のマンション業界は、日本全体で景気が低迷している中で、第7次マンションブームという渦中にあります。
70年以降を見ると、約5年周期にブームが訪れ、
72・73年の第3次マンションブーム、
団塊世代による大量需要が発生した77〜80年の第4次マンションブームを経て、
86〜89年のバブル期の第5次マンションブームとなります。
そして、第1次所得者を中心とした需要による94〜96年の第6次マンションブームが、
連続して99年からの第7次マンションブームの現在に至っています。

近畿圏の特徴を見ると、94年にはバブル期で買えなかった層が、価格が下がったことによって新規購入者となり、需要が増えています。
そして、96年は震災復興と新消費税の影響で、大量供給となりました。しかし、97・98年は、その反動と山一証券の倒産等によって供給が落ち込みました。
しかし、98年末の緊急景気対策(住宅ローンの減税と住宅公庫金利2.0%)によって、現在のマンションブームとなっていきます。
今年は、2000年の大量供給が少しは落ち込むと思われましたが、ひきつづき大量供給が行われました。

■最近の特徴と今後について

最近の購入層の傾向としては、都心に立地し価格が家賃なみのものが、シニアとシングル(特に女性)の層にうけています。
また、マンション自体は、広い専有面積の住戸、高品質、高仕様のものが自然に求められる様になり、購入者側の選択肢は多様になってきました。
それに伴いディベロッパーも様々なニーズに対応し、他社の良いところを取り入れ、自社ブランドを発信しています。
しかし、マンションの価格はデフレの影響で減少しており、坪単価も減少し続けています。
つまり、ディベロッパー、設計事務所、ゼネコン等それぞれ厳しい状況になってきているといえます。
今後は、都市の再生という意味でも、効果的な政策が必要と思います。