■テーマ
「集合住宅における緑化の価値」
報告者 生川 慶一郎 氏
大学院で緑化住宅などを研究中の生川さんにお話を伺いました。地球温暖化の防止などで集合住宅の緑化に注目が集まっていますが、
緑化の意義や維持管理など詳しくお話を伺うことが出来ました。
なお、会場は調査を行ったガーデンハイツ加美(大阪市平野区)の集会室をお借りして行い、オーナーの奥田さんにもお話を伺うことが出来ました。奥田さんのご先祖の住まい(庄屋屋敷)は重要指定文化財に指定されており、「ガーデンハイツ加美」の見学と一緒に「重文奥田家」も見学しました。■集合住宅における緑化について
現在、東京都の屋上緑化を義務付けする条例の施行なども伴い、緑化というキーワードが話題になっています。今までは都市に対する公共空間の緑化について注目されてきましたが、良好な環境をストックしていくためには今後、単体での緑化も考えていく必要があると思われます。
特に集合住宅についてみると、公団・公社の官主導の計画では多様な緑化計画が実践されてきたといえます。一方、民間の集合住宅では、バブル以降の高品質化、高仕様化に伴い住戸の差別化は難しくなる中、その差別化を図る手段として外構の緑化や屋上緑化等が行われてきました。しかし、十分な緑化空間を実現しているものは少ないといえます。緑化の普及に対して大きな障害になっているものとしては、コストとメンテナンスの問題があげられます。
■ガーデンハイツ加美における緑化について
緑化がもっとも進み難いハウジングタイプと考えられる都心の民間賃貸集合住宅の中で、積極的に緑を取り入れた事例として「ガーデンハイツ加美」を調査しました。
ここでは緑化部分に対する住民意識をアンケートによって集計しています。その結果、全体的にはどの部分の緑化も必要とされています。
しかし、この緑化を維持していくのには、多くのランニングコストや住民の労力が必要とされます。ガーデンハイツ加美では、年に2回業者による剪定を依頼しています。竣工時から、住民にどこまで管理を任せるかという議論はありましたが、集会所で住民に対して植木屋さんによる説明会を行い、理解を求めた上で、基本的にはオーナーと管理人が主導となって管理しています。共用部分の植栽で環境的に適合せず枯れてしまったものもありますが、他の樹種に植え替え対応しています。また、専用部分(バルコニー等の花壇)は、自動散水(水道代は住民負担)で管理しています。賃貸ということで借りるときに、植栽等について説明がなされ、居住者が見て借りているのでクレーム等はでてきません。今後は、この環境をどのように長く維持していくのか考えていく必要があると思います。
■今後の集合住宅における緑化の課題について
集合住宅単体での緑化も周辺への波及効果を考えれば、良好な住環境をストックするのに効果的と考えられます。
民間の集合住宅では、制約が多いですがその限られた中で、アイデアを出していく必要があると思われます。
今後は、どこを緑化するのかという計画緑化について、また、それを維持管理していくソフトの部分をマーケティングから居住者レベルまで幅広く考えていく必要があると思います。