オープンジュリー学生コンペ(テーマ「環」)結果報告


JlA近畿支部大会ハートフルフェスタ'99の開催に伴い、メインテーマ「環」という言葉からイメージする表現ということで、関西の建築関係の学科のある大学、高専に呼びかけオープンジュリー形式のコンペを応募した。この企画の主旨は、・建築家を目指す若い人達が、自然、社会環境の悪化と人々の精神的な荒廃という状況の中で、ただ手をこまねいているだけではなく社会に対して何を語りうるかという、批判性のある作品を提議してもらう。
・提出された作品を、ハートフルフェスタ'99の開催中(八月一九日〜二三日)和歌山県民文化ホールで展示し、建築関係者や市民の方々に、自分達の主張をプレゼンテーションできる場を応募者に提供する。
・審査形式は審査員となる建築家達の議論を開示し応募者にも発言の機会を与え、同時に世代間の交流を計るという三点であった。
プレゼンテーションはA一パネル二枚と八〇cm立方内に納まる模型によって行ってもらうのだが、各大学グループ、個人参加は自由として作品数は二作品までに絞った。審査委員長は和歌山大学教授の本多友常氏、審査員は久保清一、楠田悟、坂本昭、高口恭行、竹原義二、吉羽逸郎、吉村篤一、各氏に私を加えた九名と応募作品の指導教官の先生方にも加わっていただいた。募集の結果、13大学17作品が寄せられた。
<テーマ>
キーワード「環」からは様々な事柄が想起されます。それは輸形のイメージから派生する多様なシステムであったり、また私達の周囲を取り巻く外界、環境、状況というような空間領域に関わるイメージでもあるでしょう。ここで広義な意味における「環境」というキーワードを意識しながら、さらに「環」一文字によって拡大するイメージに可能性を見い出してほしいと思います。しかしながら、この問いかけはリアリティーのない単なるイメージだけを求めるものではありません。具体的な地域への眼差し、現実の社会状況や環境問題を把握する中での構築的提案が必要です。以上が審査委員長の本多氏より学生に送られたメッセージである。ゆるやかなくくりのテーマであるが、自分達の身体性に基づき地域性と時代性を見据えた構築的提案を求め、その中に個人や地域を越えた二一世紀への私達が共有すべき志向の可能性を見い出せることを期待した。
<オープンジュリー>
寄せられた作品は多岐に渡り、マルチメディアネットワーク社会における個の空間、ゴミ、水処理等、廃棄物問題などを扱ったもの、エコロジーの視点からの集住体、人間の死や、風水から癒しをテーマにしたもの、現代教育に対しての提案、サウンドスケープを扱った作品等、力作が目立った。各作品とも審査員から学生に対して再度質問を行い担当教官による補足が行われ、各作品を十分理解した上で投票が行われ、作品が以下の六点に絞られた。

京都精華大学東田達也「morphing」
京都芸術短期大学清水瞳「3S」
奈良女子大学大学院渡辺奈々他6名「Linkup−誘発する小学校システム」立命館大学大石吉寛、川上隆之「Nostalgia」
近畿大学藍紹華「親水道」
滋賀県立大学大学院内田知美「rounding along the river」。
その後再討論を行い最終結果は以下の通りである。
最優秀賞「rounding along the river」
この作品は、滋賀県を流れる全長一九〇kmの愛知川の流域で、九ヶ所の地域を設定し、季節の移り変わりと人間の行為の場を水を介して際立たせるというアースワークに近い作品で、地形の持っている特性を生かした造形、自然と人間の営みのリンク「環」としてテーマを読み込んだ作品であった。
優秀賞「3S」
楕円形のトラックが斜めに大地に突き刺さった形態の中に、幼稚園から中学校までの十一年間の教育施設を設け、楕円の接線の様な線路上を通り過ぎる列車の中から建物を見せる事により、少年時代の記憶を蘇らせるという作品。
難解な作品だが、プレゼンテーションの美しさと、時間をテーマにした新鮮さと,一方向に走り去る時と環る時との対峙が評価された。
優秀賞「Linkup−誘発する小学校システム」/「morphing」
前者は奈良町自体が小学校であるという構想で、カリキュラムから教育空間のシステムまでを実際の町の建物を取り込んで提案したものである。いわゆる建築以前のプログラム作りだけではないかという批判もあったのだが、リアリティーの高いものとして荒廃した教育現場に一石を投じるものだという評価が上回った。
後者は一個の住居のような社会に対して閉じられた空間で、その内部の中心をヴォイドとして周囲をわずかに傾斜した動線空間が巡る作品である。閉じられた小さな空間の中で機能は巡るという説明があったが、それ以上に建築としての魅力が審査員の票を得た。
八月二一日の展示会場で十時〜一七時半にかけて行われた公開審査は、審査する建築家の社会に対するスタンスも明解にし、応募者達にも自分達の思考をより先鋭化する作業でもあった。
JIA近畿支部ではこの企画を今後とも続けていき、建築をめぐる人々交流を深めていきたい。

(社)日本建築家協会近畿支部