(社)日本建築家協会近畿支部環境部会活動報告
連続セミナー「寺子屋で学ぶ」-報告
近畿支部環境委員会では現在、「寺子屋で学ぶ」と題した連続セミナーが主な活動内容です。過去、講師を招いてのシンポジウムやセミナーが、とかく一方通行に終わり、物足りない思いをした経験から、参加者が相互に、ある問題に対して持っている意見をぶつけ合い、議論することで啓発され、個々の建築活動にフィードバックする「相互啓発の場」となることを意図しました。
「寺子屋」の由来は、本会会員で大阪の名刹、一心寺の住職でもある高口恭行氏の好意で、たたみ敷きの信徒会館「日想殿」を定会場として借りることができ、この会場の持つ場所性が、同じ目線で議論したいと願う委員会の活動主旨にピッタリ、というので名づけました。机は用いず座布団にくるま座、休憩時にはビールにおつまみも出て、江戸時代の寺子屋の雰囲気とはちょっと違いますが、環境問題はしかめっ面で論ずるのではなく、ある種の気長さと和やかさが大事、と解釈した次第です。毎回、まずは高口和尚の講話から始まります。
環境を考えるうえで、示唆に富んだ仏教的講話は参加者の楽しみですが、今回は割愛しました。以下、毎回のセミナー内容を簡単に報告いたします。●第1回「活かしたい住まい方の知恵」
エコロジカルデザイン入門と題した林昭男委員のガイダンス(なぜこのテーマか、環境共生時代のデザイン思潮、シム・ヴァンダーリンの仕事、REF="ecogsk.html">エコロジカルデザイン―五つの原則―、寺子屋シリーズへの期待)の後、参加者から実体験に基づく活発な意見交換を行なう。●第2回「続・活かしたい住まい方の知恵」エコロジカルデザイン入門?
機を熟して出版された『エコロジカル・デザイン』(著:シム・ヴァンダーリン、スチュアート・コーワン。訳:林昭男、渡和由)の紹介と参加者の意見交換。特に屋上に土を乗せることの議論が沸騰し、今後への問題提起とされました。●第3回は少し技術的な話をということで、
コニシ?ボンド事業部里井マネージャーに「のりの話」と題した興味深い講義をいただき、その後3名の委員から「ものとものをくっつける」=「のりの役目をする建築デザイン」というテーマで経験談が披露されました。●第4回は「寺子屋の遠足」です。
関西の自治体が共同で進めている「関西文化学術研究都市」(学研都市)計画の中核クラスターにある「地球環境産業技術研究機構(RITE)」では、地球環境保全のための様々な調査研究・技術開発が行なわれています。設計は日建設計、省エネルギー形態及び自然エネルギー利用の設備設計による建物で、先端のエコ技術に触れることができた遠足でした。● 第5回は「循環する地域づくり」(講師:吉村元男氏)
ゼロ・エミッションの話ですが、字数が尽きましたので、次の機会に譲ります。ともあれ、環境問題は関心を「持続」することがサステイナブル社会への第一歩、との思いでこれからも関心を持ち続けていきたいと思います。(菅家克子/菅家設計室.JIA NEWS99.05記事より)
*ゼロ・エミッション(zero・emission)とは企業活動や生産活動を通じて、排出物や廃棄物を一切出さないようにする仕組み。1995年国連大学はゼロ・エミッション構想を提唱。ある産業の生産工程から排出される廃棄物を別の産業の再生原料として利用していくような産業連鎖=産業クラスター(クラスターとはひとつの固まり、ぶどうの房の意味)により廃棄物ゼロの循環型生産システムを構築できるという構想である。
「地域で社会で排出する廃棄物はその地域で資源化して処理する・地域で必要なエネルギーはその地域で確保する」というふうに地域社会のあり方を変えていけば、ゼロ・エミッションが達成できるという考えを吉村氏らが推奨。
屋久島をモデルにゼロ・エミッションをすすめている。●上記報告以降
第6回「建設廃棄物〜その問題点と対策」。(講師:橋本征二氏)会場を京都の名刹「大徳寺・瑞崇院」に移して、2000.3.18に開催。
当時国会で審議中の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正」や「建設工事に係わる資材の再資源化等に関する法律」(建設・リサイクル法)の最新情報や求められる対策や効果について