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この建議は建設省のインターネットからダウンロードしました。
専門紙報道によれば、平成10年度内に省エネ法に基づく次世代基準を決め告示し、制度化に向け詳細を検討し、マーク制度や各種助成制度拡充を検討するとされています。


住宅・建築分野の環境対策のあり方に関する建議 平成10年6月1日
(建築審議会(会長 鶴田 卓彦)建議・要旨)

1.背景
 地球温暖化、オゾン層破壊、生態系の変化等の様々な環境問題は、住宅・建築物に直接・間接に関わるものが少なくない。住宅・建築物に係る環境問題は、
「地球環境問題」「地域環境問題」「室内環境問題」の三つに大別できるが、特に、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された
「京都議定書」の数値目標の達成に係る地球温暖化対策に早急に取組むとともに、現状では早急な対策が困難な課題についても、
中長期的な視点から対応策を検討する必要がある。

2.住宅・建築分野の環境対策の基本的方向

 (1)住宅・建築物に関する環境問題の現状と問題点

 住宅・建築物の使用段階でのエネルギー消費量は増加しており、特に家庭部門のエネルギー消費増加が著しい。また、最終処分場の新規立地が困難となる一方で、産業廃棄物の不法投棄等の不適正処理の多発が指摘されている。さらに、近年、住宅室内のホルムアルデヒドをはじめとする化学物質等による健康影響への適切な対応が不可欠となっている。

 このように、住宅・建築物に関わる環境問題は多岐にわたり、的確に現状と問題点を認識しつつ、適切な対策を講じることが重要である。

 (2)対策の視点

 住宅・建築分野の環境対策のあり方を検討するに当たっては、?目的別(省エネ、省資源、自然環境保全、室内環境保全等)、?プロセス別(建設段階、使用段階、処分段階)、?主体別(公的主体、住宅・建築生産者、消費者)、?対策手段別といった視点から整理しつつ進めていくことが有効である。

 主体別に整理すると、公的主体においては、公的住宅・建築物の建設・使用・処分における率先的な対策に取り組むとともに、生産者及び消費者に対する支援・誘導・規制等を行う。住宅・建築生産者においては、自主行動計画の策定、環境負荷の少ない商品の企画・開発・提案・供給及び情報提供等を行う。

 消費者においても、取得・居住・使用の各段階において対策に取組むことが必要である。

 対策手段別に整理すると、消費者及び生産者への情報提供や普及啓発等を通じた自主的取組みの促進が重要であり、これとあわせて、環境に配慮した住宅・建築物が適切に評価・選択され建設される市場条件の整備や、財政的支援措置等による市場の誘導が必要である。しかしながら、こうした対策のみでは効果が不十分である場合には、必要性・合理性があることを前提としつつ、規制措置についても検討する必要がある。

3.地球温暖化問題への対応のため早急に講ずべき対策

 COP3の議定書に盛り込まれた温室効果ガスの数値目標を達成するため、住宅・建築物の建設・使用・処分に伴うエネルギー消費量の低減対策を総合的に講じることが必要である。

 具体的には、次のような対策を講じることが必要である。

省エネ法に基づく住宅・建築物の省エネ基準の改正・強化(現行基準と比して、住宅の暖冷房エネルギー消費を約20%低減、建築物のエネルギー消費を約10%低減)住宅金融公庫、日本開発銀行等による誘導措置の活用・拡充、住宅性能表示制度及び建築物(非住宅)の省エネルギーマーク制度の整備等による省エネ性についての消費者への情報提供、関連業界団体等における自主的行動計画の策定と着実な実行 等

4.環境問題への対応のためあわせて積極的に講ずべき対策

 地域レベル、室内レベルの環境問題等への対応についても、適切な対応を的確かつ着実に進めることが必要である。

 具体的には、次のような対策を講じることが必要である。

住宅・建築物の長寿命化の促進と、廃棄物排出量の削減対策の充実、住宅室内の化学物質による健康影響低減策の検討と、情報提供体制の整備、環境関連技術の開発と、企業における環境マネジメント体制整備の支援、環境対策に関する情報交換、共同研究等による国際協力の推進 等

5.対策のフォローアップと継続的な改善

 環境対策の着実な実施を図るため、目標数値や基準の達成状況についての的確なフォローアップを実施することが不可欠である。

 また、今後の環境問題をとりまくこのような状況の変化に応じて、目標や対策を適宜機動的に見直していくことが必要である。

6.まとめ

 本報告を踏まえ、公的主体、住宅・建築生産者、消費者の各主体が、それぞれの立場で実効性のある環境対策を総合的かつ計画的に講じるべきである。