うつくしきもの



 城之内を初めて見たとき、全てが好みだと単純にも思った。

柳のようなその肢体、フランスのビスクドールの様なその肌、意外にも繊細な動きをするその指先、そ
の筋肉の流れ一つとっても。
黄金律かと思われるような、服の上から見てもわかる等身のバランス。
細さ。
その意志の力を反映した深みのある鮮やかな琥珀の眼、鼻、ふっくらとピンク色に染まっているその唇。
全てののパーツ、髪の先まで。
そしてくるくると良く変わり、全てを魅了するその生き生きとした表情。


 ・・・・・海馬の眼に、城之内は完璧に映った。




「と、言うことは。」
ぱんっと、手を打って、朗らかに遊戯が言った。
放課後の教室である
 バトルシティ終了後、アメリカから一時帰国して珍しく学校に出てきた海馬を遊戯とその仲間カテゴリ
の人間が囲んでお話中である。
ちなみに城之内は微妙で、皆の中ではベン図における遊戯周辺の円と海馬に関連がある人の円が重なって
いるところにいる。ちなみに遊戯の中のファラオもその位置である。
もちろん母集団は「遊戯と愉快な仲間達」、だ。
更に社長的にはもう一つ、海馬の恋人の円があってその三つの円が重なったところに城之内のみがいる。
王様がいたらH&K社製HK69グレネード・ランチャーを撃ちまくってでも追い出したであろう。
「城之内くんと海馬くんって恋人なんだ。」
「なの?」
「なのかっっっっっ?」
「なにっっっ」
「なんだ〜」
 上から順に、遊戯、杏子、本田、御伽、獏良。
 たったいま海馬に城之内は俺のものだ宣言をされたのである。ちなみに闇遊戯は遊戯の横に浮きながら
へえそうなんだと言っていた。城之内好きの王様のこと、騒ぐかと思えば海馬も気に入っているのでそれ
がいちゃつくのは見てて微笑ましいから構わない、という姿勢らしい。
海馬が城之内君を泣かせた場合は締めれば良いし。
王様はさすが三千年前のエジプトの王だった。暴君め。
「いやあのそのだからええとっっっっっ海馬ぁっっっっっっ!」
 当事者の片割れ、城之内が海馬の胸ぐらを掴んで叫ぶ。赤くなっているその顔を見て、照れてる照れて
る、と本田と御伽以外が思った。
「言うなよ恥ずかしいっっっっっ」
「言っておいた方が後々面倒がなくて良いだろう?」
第一。
海馬は胸ぐらを掴んでいる城之内の手を握ると外してから本体を抱き込んだ。
「貴様をいつでも抱きたいからな」
「ぎゃ〜〜〜〜〜〜」
抱き殺される!と城之内が思ったかどうかは解らないが、逃げられないという事だけは明白だ。
でも城之内が嬉しそうなのは、眼の錯覚じゃ、ない。
「ところで海馬君、気になることがあるんだけどね。」
そのいちゃつきモードに突入した海馬に、獏良がのほほんと声を掛ける。勇者だ。
「なんだ?」
城之内を抱き込んだまま、海馬は獏良をちらりと横目で見る。手は堂々と城之内の身体をまさぐっていて、
城之内の顔をどんどん赤くなっていった。
「城之内君のどこに惚れたの?」
聞きようによっては失礼な質問だが獏良に他意はない。なにせこの間まで険悪な二人だったので、ふとし
た疑問。
 それに、海馬はニヤリと笑った。
「ふん、聞きたいか愚民共聞きたいかそうかそこまで聞きたいというのなら勿体ないが特別にこの俺が直
接教えてやろう!静粛に聞くが良い!」
わははははと笑い声オプションで海馬は言った。わあノーブレスだね!と獏良と遊戯は楽しそうだ。
「・・・・・・・耳塞いで良いか?」
「・・・・駄目。」
しかし本田と御伽は逃亡寸前。杏子に諦めればと言われて大人しくなった。
海馬は話し出す。
「この犬を初めて見たときは驚いたぞ。こんなに美しい人間がいるかと思ったくらいだからな。」
え。ウツクシイッテナンデスカ。
「この身体といい、この顔と良い、非の打ち所が無い。性格はどうかと思えば犬のように吼えてきてなか
なか可愛い。どんな表情をするかと思ってからかって見れば最高に良い表情をする。
正に俺の理想だな。性別などどうでも良い。これでコイツを手に入れなければ男ではないぞ?」
そんな疑問系で聞かれても。
クククク、と笑いながら話す海馬はどこか恍惚としていて怖い。
もう泣きそう。城之内を評価するにはあまりにもかっとんだ発言のため、真面目に本田と御伽は思った。
杏子は「まあ人の好みだし・・・・・」と呟いて私は関係ないわと壁を作ってるし、獏良は微笑ましいな
あと笑ってるし。
 しかし城之内はそこまで褒められて悪い気はしない、どころか嬉しいらしく、眼を輝かせて「そこまで
俺の事を・・・・・!」と感動している。
やめておけ、何か落とし穴があるぞ、っていうか良いのかこんなヤツで。と、今現在さりげなく一番気が
合う本田と御伽のコンビは城之内に対して思ったがでもやっぱり黙っていた。命が惜しい。
「だからこの間まで苛めてたんだ〜〜」
獏良の言葉に、しかしそれに乗る筈の遊戯は押し黙ったままだった。
何か引っかかっているらしい。
「美しい・・・・かあ・・・・・。」
遊戯は呟くと小首を傾げて(可愛いぜ相棒!の王様絶賛付き)海馬を見た。
「・・・・あのね海馬君。君が美しいって思うモノ、上げてみて?」


「三幻神と青眼白龍と城之内だが。」


そう来たか!!!!!


「てめー!一体俺をなんだと思ってやがるんだーーーーー!!!!!!」


 モンスターだと思ってるんじゃないの?という声の横で、海馬に抱かれていたはずの城之内の拳が、社
長の腹のめり込んだのは言うまでもない。


 海馬を殴り飛ばせるんだからやっぱりモンスターだ城之内、と他の面々に言われつつ、モンスターの何
処が悪いんだい、とは王様談。
まあ、多分、社長的には最高の褒め言葉なんだろうけど、ね。


「もう一度言うが、こいつは俺のモノだ。貴様ら、気安く触れようなどと思うなよ?」
城之内の本気の拳を受けて多少のダメージを引きずりつつ、社長は言い放った。
「あれだね〜〜。踊り子さんには手を触れないで下さいって言いたいんだね海馬くん。」
獏良の脳天気な声に、もう誰も突っ込む人はいない。

 という訳で、ここで皆のベン図と社長的ベン図が見事に一致したのだった。


 後日。
「城之内君、君が格好良いと思うモノって何だい?」
「そりゃやっぱりもう1人の遊戯と真紅眼黒竜と海馬だろ。」

 モンスターレベルの二人は、やっぱり今日もべたべたしている。




                                     バカップルのまま終。



*社長の審美眼に物申したいSS。ただのギャグです。ペーパー用SSでした。
 最初の城之内褒めまくりを強化したら目眩がしました・・・・。
 ちなみに参考として、社長的ベン図は以下の様になってます。



 会社でベン図ってなんでベン図っていうの!と話題にしてみたが回答は得られず。



拍手が送信されました。
ありがとうございました!




ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)


web拍手CGI公式サイト