クローズアップレンズによる撮影


−マクロモードよりも大きく・顕微鏡写真よりも小さい−


最近のデジカメはほんとうによくできていて,レンズ前端2cmまで近寄ってマクロ撮影できるものもある。無限遠にピントが合って,ズームができて,マクロもできるとは,20年前のカメラ小僧には想像できなかった。当時のズームレンズは高い上に性能も悪く,単レンズにはかなわないのが素人にもわかったからである。ところがいまはズーム全盛で,単レンズなどあまり見かけなくなっている。世の中そんな状況なのだが,それでもマクロ撮影は専用のレンズを用いた方がよい,と筆者は思っている。無限遠にある物体を結像させる場合と,近距離にある物体を結像させる場合とでは,必要とされるレンズの配置やパワーは全く異なるからである。

ところがコンパクトタイプのデジカメではレンズ交換ができない。だから「クローズアップレンズ」なるものをフィルターリングにねじ込んで撮影するのだが,このレンズの性能によっては,像質がかなり劣化してしまう。そこで今回はこの対策を考えてみよう。

といっても答えは簡単である。筆者の顕微鏡撮影・コリメート法の解説に,「顕微鏡の接眼レンズはコリメート法のリレーレンズに使えますよ」と書いてある。これをそのまま応用するのである。顕微鏡撮影に使用して高品質の像が得られるのなら,一般撮影でもよい画像が得られるハズなのである。さてその方法であるが,下の画像をご覧いただきたい。


























これはケンコー(株)から発売されているアダプターに顕微鏡用の10倍接眼レンズを接続し,接眼レンズのスリーブ(顕微鏡に差し込む部分)を外したものである。工作は不要でじつに簡単である。それでいて,マクロ用のクローズアップレンズとして充分な性能を持っている。ニコンのE990に装着した場合,マクロモードで最も接近した場合の約2.5倍の拡大率が得られる。なんだ,たった2.5倍か,と思わないで欲しい。この拡大率はちょうどマクロ撮影と低倍率の顕微鏡撮影の橋渡し付近なのである。下にアブラムシの幼体の画像を示す。上が990で接写,下が接眼レンズ使用による画像である。そのままでは写らない微細な構造が,接写レンズ使用では明瞭に写っているのがわかるであろう。























































この接写レンズをリュックに放り込んでおけば,きのこのヒダの接写や,小型菌・変形菌などの接写に便利だろう。研究用顕微鏡の広視界アイピースは2群4枚程度の構成で,1群2枚程度のクローズアップレンズよりも収差は少ない。手持ちのものがある方は,流用して遊んでみたらいかがであろうか。なお蛇足ながら書き記すと,この接写用接眼レンズはそのまま,コリメート法による顕微鏡写真撮影に用いてよいことはもちろんである。





(July 13, 2003)