小さいきのこ撮影法


−ピントが合わせが難しいきのこの撮影−


きのこさんぽを日課としているといろいろなきのこに出会う。ときにはほんとうに小さなきのこに出くわすことがある。そのきのこが変形菌の地べたを這う姿なら撮影は容易なのだけれど,ほそーい柄の上に小さなカサがちょんと乗っているようなきのこだと,AFまかせで綺麗に撮るのはけっこう難しい。今回はこんなきのこをどのようにして撮影するかを取り上げよう。定規を使う方法は前回に取りあげたから,こんどは別の方法である。

細いきのこが一本だけ立っているとき,カメラのAFはピントを合わせてくれない。オートフォーカスのカメラの多くは最大コントラスト法でピント位置を求めているため,背景と似たような輝度の小さな物体に対してはコントラストを検出できない。とくにピントが外れているときにはコントラストはほとんどなくなっているのでカメラはフォーカス位置をきのこ側に持っていこうとはしない。

仮に指などをきのこの位置に置いてコントラストを与え,カメラを導いて撮影しても,ピントが外れていることもある。液晶モニタそのままでは小さなきのこのピントを判断するのは難しい・・・。マニュアルフォーカスでもピント位置が分からなければ使いようがない・・・。こんなことから,直接目で覗いてピントを合わせられる一眼レフタイプのデジタルカメラが安価になるのを待っているユーザーもいるらしい。

が,その判断はあまり正しくないかもしれない。デジカメの機種によっては確実なピント合わせ法があるからだ。その方法のヒントはメーカーのカタログにも,そして本ページにも記載されている。すでに気づいて実行している方には余分な情報になってしまうが,その点はご了承願いたい。

1 新聞紙法

この方法は至近距離(2cm〜30cm)の物体に適している。カメラは最大コントラスト法でピントを検出するのであるから,構図を決めたらカメラを固定し,ピントを合わせたい位置に適当なサイズに切った白黒印刷面の新聞紙片を置けばよい。カメラは活字のエッジ部分を検出してそこのコントラストが最大になるようにピントを合わせるだろう。そうしたらシャッターボタンを半押しにする。そうするとフォーカスロックと同時にAEロックが行われる。そこで新聞紙片を抜き取り,そのままさらにシャッタボタンを押し込んで撮影する。

たったこれだけなのだが,コツを覚えるとこれまで写せなかったものが比較的簡単に写せるようになる。この方法で新聞紙を用いるのにはワケがある。新聞紙面の平均反射率は,被写体の平均反射率18%に近いのである。だから新聞紙の活字の多い面でピントを合わせてAEロックしても,露出が大幅に狂うことは(あまり)ないのである。

2 電子ズーム法

この方法は20cm〜60cm程度の距離で,望んだ位置にピントを持っていきたい場合に適している。顕微鏡撮影のページを読まれた方はすでにお気づきであろう。電子ズームを最大にしてマグニファイヤ代わりに使う方法である。デジカメはマニュアルフォーカスに設定し,三脚に固定する。構図を決めたら電子ズームを最大にして,ピントを追い込む。ベストピント位置が定まったら適当なズーム位置に戻し,ストロボをOFFにしてセルフタイマーで撮影する。これだけである。群生しているきのこを撮影するとき,もっともチャーミングなきのこにピントを合わせたい。そんなときにこの方法が役に立つであろう。









































画像はスーパーで購入したエノキタケを立てて,背景とのコントラストを少なくしたものである。きのこがないところにはコントラストの高い背景が入るようにした。こうするとカメラはきのこを無視してその部分のピントを合わせようとする。これを電子ズーム法でピント合わせをして撮影した。ピントは背の低いエノキのカサに合わせてある。得た画像は縮小してある。画像が荒れているのは,コントラストが一様になるように背景設定したので,jpg圧縮するときに圧縮の影響がもろに出ているためである。

この画像を見るとモニタの画素数が少ないからモニタで精密なピント合わせはできない,との考え方は必ずしも正しくないことがわかる。モニタの一部を拡大できるなら,少ない画素数の液晶モニタでもピントの山は十分にわかるのである。上記の方法も万能ではないが,これらの方法をマスターすることで,手持ちのデジカメの活用機会がさらに増え,貴重なかわいいきのこたちを記録に残すことができれば幸いである。





(Apr 21, 2002)