デジカメできのこがきれいに撮れないとき


−写真が苦手な人のデジカメきのこ撮影法−


デジタルカメラできのこ画像を撮影する方々が増えてきたようである。きれいなきのこに出会ったときなど,わくわくして撮影したくなるのは自然な心の成り行きである。その情景を美しい画像として残せれば最高だ。

けれどもせっかく撮った画像がボケボケだったらがっかりである。きのこの細部はつぶれ,全体にぼやけたイメージが残っているだけ。あーあ。多くの人がそのような経験をしたものと思う。中には,何度撮影してもボケた画像が得られるばかりで,デジカメの買い替えを考えている方々もおられるかもしれない。

これらボケボケ画像の原因は,デジカメを買い替えることなく少しの工夫で取り除くことができる,と筆者は考える(ボケ画像の原因がデジカメにあると判断できる人は,相当の撮影技術を持っているはずである)。デジカメでも一眼レフでも撮影の基本は変わらない。デジカメでシャープな画像を得るには,一眼レフでもシャープに撮影できる技術が要求されるハズなのである。そこで今回は,「きのこの写真撮影はデジカメ買ってから始めた」という方々がどうすればきれいな画像を得られるようになるかを考えてみることとしよう。


ボケの原因

撮影時のボケの原因はおおきくまとめてしまうと2つしかない。まずピンボケ。次にブレである。ピンボケは,画像を記録するCCDに対するレンズの繰り出し量が適切でないことが原因。焦点がCCD面以外のところに結んでしまっている。ブレは,シャッターが開いている間にカメラまたは被写体が動いてしまい,画像が流れてしまうことにより起こる。手持ちカメラが動いた場合を手ブレ,固定カメラに対して被写体が動いた場合を被写体ブレという。

まず説明書を読む

デジカメきのこ撮影のときに起きるピンボケは,大半がきのこに近づき過ぎか,モード選択の誤りであろう。まず何よりも説明書を読んで欲しい。必ず「最短撮影距離」という項目があるはずだ。また,「マクロ撮影」という項目もあるだろう。大事なのはこの二つを熟読することだ。

普通撮影モードで最短撮影距離が1mと書いてあったら,1m以内にきのこに近寄って撮影してもボケるだけである。もし普通撮影モードできのこを撮影するのなら,それはほとんどの場合,大群生の様子や樹上のきのこの撮影の場合だろう。きのこは普通,マクロモードで撮影するのである。

マクロモードとは,接写撮影モードのことである。多くのデジカメではマクロ撮影のモードのときに"チューリップ"のマークが表示されるようになっている。このモードの時,デジカメのレンズは接写撮影に最適なように配置され,物体に近寄ることができるようになる。マクロモードでどこまで物体に寄れるかはデジカメによって著しく異なる。数センチまで物体に寄ることができて,かつ,そのモードで無限遠にまでピントが合う機種もあれば,マクロモードでは撮影距離が固定(例えば20cm)されてしまうものもある。撮影距離が固定されるデジカメではピント合わせは行われない。指定の撮影距離を守ること自体がピント合わせの行為となる。撮影距離を守らないとボケる。この点を説明書でしっかり確かめて欲しい。

テスト撮影

マクロでも自動でピントを合わせてくれるデジカメの場合,合焦範囲の撮影距離で撮影することを心がければ多くの場合,問題は生じない。しかし,もしお手持ちのデジカメがマクロモードで撮影距離が固定されるタイプの場合は,テスト撮影することが非常に重要である。例えば以下のようにすればよい。

1)デジカメを三脚に固定する。床に置くだけでもよい
2)デジカメのレンズ位置から出発(0cm)するようにメジャー(定規)を伸ばす
3)マクロモードにセットし,指定の撮影距離に新聞や雑誌の記事を置く
4)セルフタイマーでシャッターを切り,撮影を行う
5)前後に2cm間隔程度にずらしていき,何枚も撮影する
6)画像をモニタに表示し,活字を見ながら最もピントが良いものをみつける

これでデジカメのマクロモードでの最適距離がみつかるはずである。同時に最適距離から何センチずれたらピントが外れ始めるのかもわかるだろう。本来はテストチャートを撮影すべきであろうが,新聞紙面はテストチャートの代用品として十分である。

最適距離がわかればしめたものである。きのこ撮影時に常にメジャーを持参し,きのこのピントを合わせたい部分からメジャーを当てて最適距離になる場所にデジカメ(のレンズ前端)をセットすればよい。このルールさえ守れば,概ねピントの合った画像が得られ,しかもオートフォーカスのデジカメよりも失敗が少ないのである。オートフォーカスのデジカメは,たまに勝手なところにピントを合わせてしまい,ピンボケ画像になることがあるからである。

応用になるが,この方法はマニュアルフォーカス機能を持ったデジカメでも有効である。特に小型で柄が細く,オートフォーカス(最大コントラスト法)でピントが合わない種類ではこの方法を用いるとよい結果になる場合がある。

ブレの原因と対策

ピントがちゃんと合うことがわかったなら,次はブレ対策だ。ブレはシャッターが開いているときにカメラあるいは物体が動くことが原因だから,デジカメを固定して物体が動いていないときにシャッターを切れば理論的にはブレは起こらない。手持ちの場合は1/250秒より早いシャッターを切ることができれば手ブレがほぼ防げると考えて良いが,普通のきのこ撮影ではそんな場面は少ないだろう。ということで対策は

1)デジカメを三脚などに固定する
2)セルフタイマーを使って撮影する
3)風や他の振動のないときに撮影する

の3つを同時に実行することに尽きる。1)で「三脚など」と書いたのは必ずしも三脚である必要はないからである。例えば地面すれすれに顔を出しているきのこは,デジカメを地べたに置いてセルフタイマーを使えばよいし,リュックのくぼみにデジカメを載っけてセルフタイマーで撮影できる場面もあるだろう。とにかくシャッターが切れる瞬間に,カメラを触らないことがブレを防ぐ上で大切だ。ケーブルレリーズの使用を薦める人もいるが,ここではその立場はとらない。レリーズは撮影が上手い人が使うと効果があるが,ブレの根本的対策を考えたらセルフタイマーに勝るものはないからである。セルフタイマーなら費用もかからない。風できのこが揺れたらせっかくの努力もムダになるので,風にも充分配慮しよう。「他の振動」というのはあまり考えられないが,地震や,建設現場の振動,大型車の通行などがあるだろう。筆者はセルフタイマーで撮影中に地震に遭遇したことがある。このときの画像は見事にブレており,カメラときのこの揺れのモードが違うことがよくわかった(もちろん,撮り直してちゃんとした画像も得ている)。

以上がボケボケ画像を防ぐ主要なコツである。これさえ守れば甚だしいピンボケ画像ばかりということはなくなるはずである。逆に言えば,これらを守らなければ,いつでもピンボケ画像が生まれるということだ。


細かいこと

あといくつかのポイントがある。

1)ストロボを使わないこと
2)できるだけ大きく撮影すること
3)いちばん画質の高いモードで,大きなサイズで撮影すること

ストロボを使うと自然な感じが損なわれる上に,影の部分が極端に暗くなってしまい,得られた画像は鑑賞に耐えない。必ず発光禁止にしておくこと。同様の理由により,直射日光の下での撮影も原則として行わない方がよい。また,画素数を有効に使い,解像感を高めるために,撮影距離の許す範囲でデジカメのモニタいっぱいになるように撮影しよう。同じ理由から,撮影画像のサイズは大きくし,また画質モードは最高画質にする。画質モードを"普通画質"にすると,撮影が済んだ段階で画像は高圧縮されており,画質はすでに劣化している。画像処理の段階で画質はさらに劣化することを考えれば,画質モードは最も高品質に設定しておくのがよい。

ここまでできればまずオッケーな画像が得られるはずである。そうしたら「きのこ撮影法−画像の処理−」にしたがって適切に処理をすれば,200万画素以上のマクロモードのついたデジカメならほとんどの機種できれいな画像を得られるのではないだろうか。





(Sep 14, 2001)