きのこ撮影法−画像の処理−




筆者なりのきのこ撮影のポイントについては以前に述べた通りであるが(きのこ撮影法)、そこでの説明ではいくつか大事なことが抜けている。今回はテクニカルな面を補足しよう。

まず、デジタルカメラできのこ撮影することの意味だが、筆者はデジカメ画像は専らモニタ観賞用と割り切っている。"写真"としてプリントアウトすることは一切考えない。現在の300万から400万画素級のデジタルカメラでも、プリントアウトでの画質を考えたら、遠く一眼レフに及ばないからである。

単純に考えても、ふつうのネガフィルムで撮影する場合の一眼レフの画素数は、デジカメのそれよりも桁違いに大きい。白黒ならさらに差は広がる。ミニコピーHRUフィルムをASA感度3程度で露光し、D72などの適当な現像液で1分程度の短時間現像をすると圧倒的に粒子の細かいネガができる。全紙判に焼いても粒子はほとんどわからない。もしデジカメの画像を全紙判にプリントしたらどうであろうか。おそらく鑑賞に耐えないであろう。

そんなわけでデジカメ画像はモニタで鑑賞するに限る。モニタなら元々72dpiなのでよほど少ない画素数でもないかぎり、十分な画像サイズにできる。ドットピッチが粗いから、CCDの画像がちょうどよいのである。

さて、モニタ上で美しく画像を再現するには、ちょっとばかりコツがいる。画像処理ソフトを用いてちょっとだけ工夫をすれば、プリントに耐えないような画像でも画面上ではまあまあ見れるようになるのである。

コツその0: 当たり前のことだが、撮影時に十分注意を払い、できるだけよい画質を得ることを心がけよう。できの悪い画像はいくら画像処理を施してもまともなものにはならない。ブレのない、ピントのしっかりした画像を得るよう努力しよう。復習になるが主なポイントを列記すると、1)必ずマクロモードで撮影する。もし固定焦点のカメラなら、合焦範囲を必ずチェックし、被写体との距離がピント範囲にあるかどうかを確認する。2)セルフタイマーやレリーズ等を用い、風のないときにシャッターを押す。3)撮影した画像をその場で確認し、ブレているものは捨てる。デジカメのモニタで不鮮明な画像は、パソコンのモニタ上ではどのようにしてもシャープにはならない。

コツその一: サイズに気をつけよう。モニタの解像度が72dpiしかないのである。つまり1インチ=2.54センチメートルの中にたった72個の点を打つことしかできないのである。このdot per inchという単位がくせ者で、ミリ単位に直すと2.83dot per mmということになる。絵を表現するにはあまりにも低い解像度と言わざるをえない。一ミリの構造物を表現するのにたった3個のドットで足りるはずがない。だから小さな構造を表現したいのなら、画面上で実物の数倍の大きさになるようにするとよい。

ちなみに筆者のホームページで最も小さいきのこは「コチャダイゴケ」である。大きさは約5ミリである。このきのこの微細な毛とペリジオール(小さなつぶつぶ)を十分に表現するために、15インチモニタ上で16倍に拡大している。

もちろん、CCD上で十分な大きさで撮影されていないと意味がないので、ぎりぎりまで寄って接写し、微細な構造を撮影してある。CCD画像の情報量は拡大率で決まる。表現したいきのこを、十分な大きさで最高のピントで撮影しておくことが望ましい。撮影するときにパソコンのモニタを思い浮かべながら構図を決めるといいだろう。

蛇足であるが、画像を大きくする分、jpeg圧縮を強くする。圧縮率を低くして高画質で保存したものを掲載している方がおられるが、画面で見ている分にはほとんど意味がない。ダウンロード用のデータならそれもいいが、閲覧用ならできるだけ軽いファイルサイズにするのが実用性の点からオススメだ。圧縮率が低い小さなサイズの画像よりも、高い圧縮率のでかい画像の方が見栄えがする。サイズが同じなら圧縮率が低い方が画質はよいが、45%程度までの圧縮ならばモニタ上では目立った変化はない。だからファイルサイズが小さくなり表示時間が短縮される高圧縮の画像の方がメリットがあるだろう。

なお老婆心ではあるが、巷ではjpgで保存することとjpg圧縮することを混同している方がおられるようである。トリミングしたりjpg保存したりしても、圧縮率を調節しないことにはファイルサイズをコントロールしていることにはならない。640*480の画像サイズで50Kbyteを目標に圧縮すればいいだろう。

コツその二: 軽くシャープフィルタをかける。ヒトの目は情報量の多寡よりも、鮮鋭度に敏感だ。シャープフィルタをかけると画質は劣化するが、輪郭はきれいにみえるようになる。この方が「見た目にキレイ」な画像になる。但しシャープフィルタを使いすぎると画質が非常に劣化し、ざらついた絵になる。そうならないような度合いを探すことが大事である。

コツその三: 明るさとコントラストを調整する。現場の雰囲気を重視することはもちろんだが、より大切なのは「見やすさ」である。楽に細部が見えるように明るさとコントラストを調整しよう。この調整も生画像の出来具合によって大きく左右される。直射日光が当たっているようなきのこの画像だと、いくら調節してもみやすい画像にはならない。一眼レフ時代と同様に、明るい曇天が最適な撮影条件である。

コツその四: 状況判断を適切に。上に書いてきたことは、逆用することもできる。やや不鮮明でどうもうまくない画像をぼーっと表示するのである。明るさとコントラストを適切に調整し、きのこの細部がわからないように縮小する。それからシャープフィルタをかける。そうするときのこの全体像を強調した表示のしかたができる。

以上の注意でホームページ向けに最適化された画像ができあがる。本当はデジタルカメラの機種によって画像処理の方法が異なるのだが、よほど再現性にこだわらない限り満足いくものと思う。筆者は2000年の7月まではピンボケ固定焦点カメラ、それ以降は自動焦点カメラを使用している。だから固定焦点のカメラで撮影した画像の多くは不本意ながらもゴマカシ方式(コツその四)、自動焦点のカメラで撮った画像は細部表現方式(コツ一〜三)で処理し、ホームページに載せているのである。





(Nov 1, 2000)