ブナシメジその後




ブナシメジの画像を撮り損ねた話は以前に「ブナシメジが・・・」に書いた。八王子のきのこを追い求める筆者の頭には、それ以来、ブナシメジの再会の日を待つ夢が去来する。「いつかきっと見つけてやるぞ、まっててくれ、ブナシメジ」。たとえそれが春でも夏でも、筆者の脳裏にはあの白いブナシメジが焼き付いているのであった。

昨年ブナシメジを収穫したのは11月半ばであった。狙いはエノキタケだったから、けっこう冷え込んできてからの話だ。さて、今年はいつ発生するか・・・。筆者は去年の暮れに八王子を離れているので、30分で見に行けた「第二きのこ場」にも今は二時間もかかるのだ。おいそれとは見にいくことはできない。

しかし何年もきのこを追い求めていると、体内に「きのこ暦」が発生し、リズムを刻み始める。晴天が続くと雨乞いをし、週に2,3回の雨が降るとご機嫌である。すっと冷え込みがあると、すわ発生刺激かと山が気になりだし、落ち着いていられない。頭のなかのきのこ暦が回りだし、気象条件に最適な獲物をリストアップする。

10月後半まで、筆者の「きのこ暦」はコガネタケ・ハタケシメジ・ヒラタケ狩りを推奨していた。ところが、ハタケシメジを収穫してわずか3日後、「きのこ暦」はブナシメジ探索を強力に推奨しはじめた。去年の発生確認日よりも2週間も早い。自分の頭のなかのことなのに、まことに不思議である。

よし、いくぞ。例によって相棒Rをつれて第二きのこ場へ。オニグルミがたくさん落ちている第二きのこ場では早速Rがクルミ拾いに勤しむことになる。そして筆者はブナシメジが生えているであろう材を探して歩く。おおっ。どうわけか材が移動され、大事な大事な「ブナシメジのなる木」が見えないぞ。が、しかしである。

その足下から2センチほどの小さなきのこが顔を出している。しかもたったの一本だけである。その弱々しいカサを見れば、あの水玉模様があるではないか。おお、おまえはまだここにいてくれたか。50キロ離れたところからオレはおまえを見つけにきたんだぞ。出ていてくれてありがとう。小さなきのこ一つなのだが、八王子に生えるブナシメジに再会できた感激は筆舌に尽くしがたい。早速、デジカメで撮影した。そして来年もまた出てくれよと、小さなきのこを撫でてそのままにしてきた。

この日、市内の西部でブナシメジをさらに2株発見した。やはり放置された材から出ていた。こちらはもちろん収穫し、同時に採れたヌメリスギタケ、コムラサキシメジと一緒にきのこご飯になった。さわやかな香りですばらしいきのこご飯であった。毎年秋に、ささやかながら天然のきのこの恵みにありつける幸せを感じる一瞬である。



ブナシメジ

(Oct 29, 2000)