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8/02/2005*

  先週から今週にかけて、ヴィデオで溝口健二監督作品 『赤線地帯』、山中貞雄監督作品『人情紙風船』、佐藤純弥監督作品 『新幹線大爆破』、仙台セントラル劇場にて市川崑監督作品 『ぼんち』、仙台フォーラムにて木下恵介監督作品 『二十四の瞳』を鑑賞。なんかもう、日本映画史上重要と思われる作品ばかり、だな。おかげで、というかなんというか、まったくもって感想が追いつかない状態である。かといって何も書かないのもアレなので、とりあえず『人情紙風船』を観て思ったことを少しだけメモしておきたい(自分のために)。

 『人情紙風船』は昭和12年に封切られた作品で、山中貞雄監督の遺作である。彼はこの作品の完成と同時に召集令状を受け取ったそうで、大陸の戦地へと渡ったのち、再び日本に帰ることはなかったという。そんな製作背景に捕らわれすぎてしまうと作品の本質が見えにくくなりそうな気もするが、まあ事実は事実としてとりあえずは踏まえておきくべきであろう。で、作品自体はどうかというと、名作であると言う人が多いのも頷ける内容であり、ペシミスティックな空気と、その中でうごめく繊細な心理が見事に描かれている。今から70年近く前の、戦時下で製作された作品とは思えぬほど、完成度は高い。

 たまたま先日観たばかりであるが、戦後の今井正監督作品 『どっこい生きてる』でも夫婦として主演することとなる河原崎長十郎・山岸しづ江夫妻が、本作においても同じく夫婦役として主演している。まあいずれも前進座全面協力のもとで製作された作品なので、そうなってしかるべき、なのだろうが。ただしかし、この2作品を比べてみると、同じ主演役者であるがゆえに、その共通点と相違点とが"戦争"を軸として鮮明に伝わってくるような気がした。

 『どっこい~』と『人情~』、前者が現代劇、後者が時代劇と、設定はまったく異なるが、河原崎・山岸夫妻が演じるのはともに落ちぶれた生活を余儀なくされている夫婦である。そして『どっこい~』では心中を試みつつも最終的に前向きに生きようとしたのに対し、『人情~』では救いようのないラストが待っている。この違いが監督によるものなのか、あるいはまたほかの理由があるのか、今のところ明確には言い表すことはできない。ただ私はこの相違点から、「戦争がパーソナルな部分に与える影響」というものを深く考えさせられてしまった。

 山中貞雄は『人情~』において直接的に戦争を描きはしなかったが、やはり召集されるという不安は心のどこかにあったのだと思う。だからこそ、ダウナーな世界をここまで緻密に創り上げることができたのではないだろうか。そして今井正は、戦争が終わったからこそ『どっこい~』において生き生きとしたラストをなんの迷いもなく描くことができたのではないだろうか。

 うわーなんかメモとか言いながら長くなっちゃったな。これら解釈はおそらく的はずれかもしれないし、なんの意味もなさないかもしれない。でもこの2作品が「戦争」と「個人」との関係性を考えるきっかけになったのは紛れもない事実。つまりはその事実というものを記しておきたかったのです。ただそれだけ。

 ついでに書いておくと、声高ではないものの直接的に戦争を描く木下恵介監督作品 『二十四の瞳』は確かに名作だった。日本人の琴線に触れる映像が暴力的に展開し、さすがの私も久しぶりに劇場で泣いてしまった。ただその涙が作品のメッセージを洗い流すこともあるようで、観賞後に上記のような「何か」を考えることは、なかった。



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