【聖母教会】(ベルギー ブルージュ)


 聖母教会はブルージュで一番背の高い建物です。
 ブルージュは案外広い町だし曲がりくねった道が多いので、つい道に迷いそうになりますが、この教会の尖塔はどこからでも見えるので安心して町歩きが出来ます。
 ただし、ブルージュにはもう一つ目立つ建物があって、それがマルクト広場に面して建つ鐘楼です。
 散歩をしているときに目に付くのはどちらかと言えば鐘楼の方なので、間違えないようにしなければ本当に迷子になるかもしれません。
 で、今回の作品があるのは聖母教会の方です。

 それがこの作品、ミケランジェロ・ブオナローティ作「聖母子像」です。
 えっ、どれが聖母子像かって?
 うーむ、分かりにくいですよね。
 画像の真ん中の下の方にある白い彫像がそれです。
 何しろ彫像そのものが小さい(高さ128cm)上に、あまり近くにまで寄れないし、そもそも教会だから基本的に暗いのでこんな写真しか撮れませんでした。
 これではどう目を凝らしてもよく分からないので、あとで大きな画像を貼っておきます。

 さて、彫刻家として大変有名なミケランジェロですが、作品のほとんどはイタリア国内にあります。
 有名な「ダビデ」はフィレンツェ、「モーゼ」はローマ、「ピエタ」は一応独立国ですがローマ市内にあるバチカン市国にあります。
 イタリア国外にあるのはパリの「ルーヴル美術館」とロシアの「エルミタージュ美術館」と、そしてここブルージュの「聖母教会」だけなのです。
 そんな貴重なミケランジェロの作品がなぜこんな田舎の教会(失礼!)にあるのかと言うと、なんでも、ブルージュの裕福な織物商人のムスクロン家がミケランジェロに依頼して自分の家の礼拝堂に置く作品を制作してもらったのだとか。
 当時はまで20代の半ばだったミケランジェロですが、「ピエタ」や「ダビデ」が大評判だったため法皇や枢機卿たちから注文殺到の状態でした。
 そうした中で一介の織物商人からの製作依頼に応えたのは、一体どんな事情があったのでしょう。
 一説には、この聖母子像はシエナの枢機卿からの依頼でシエナ大聖堂に飾られるはずだったのですが、枢機卿側と契約上のトラブルになったミケランジェロが引き渡さず手元に置いてあったものを、ヤン・ムスクロンが大金をはたいて購入してブルージュに持って行ったのだ、なんてうわさ話もあります。
 さて、本当はどうなのでしょうか。

 いよいよお待ちかね。ミケランジェロ作「聖母子像」です。(この画像はネットから拝借しました。著作権があればゴメンなさい)
 バチカンのサン・ピエトロ大聖堂にある「ピエタ」が完成して間もない頃に制作されたとのことなので、ミケランジェロが絶好調だった時代の作品ですね。
 マリア様の衣服のひだなどは固い大理石から削り出されたとは思えない優雅な曲線を描いています。
 マリア様のお顔が「ピエタ」のマリア様によく似ているのは、恐らくミケランジェロの理想の女性像だったのでしょう。
 マリア様もイエス様もややうつむいて視線を下に向けているのは、この彫像が本来はもっと高い場所に置かれることを意図したものではないでしょうか。
 二人のお顔が少し大きく見えるのも、下から見上げた時にちょうどバランスよく見えるからだ、という説明を現地で受けました。
 私が「聖母教会」を訪れたのは2003年ですが、その後、2011年から「聖母教会」の一部が有料化され、「聖母子像」は防弾ガラスで覆われるようになったそうです。
 これも時代とは言え、残念なことです。

(2025.01記)