【ウィーン美術史美術館】(オーストリア ウィーン)
ウィーンの王宮のすぐ近くに、女帝マリア・テレジアの像が建つ公園を挟んで双子の立派な建物があります。
19世紀の終わりに建てられたこの2つの建物は、左側が「ウィーン美術史美術館」右側が「ウィーン自然史博物館」です。
その左側の建物「ウィーン美術史美術館」が私のお気に入りで、世界で一番好きな美術館です。
(画像は美術館の大階段から見上げたクリムトの壁画です)
私がこの美術館を好きな理由の一つは「ブリューゲルの間」があることです。
ピーター・ブリューゲル(父)の絵は約40点が現存していると言われますが、そのうちの12点を「ウィーン美術史美術館」が所蔵しています。
これはハプスブルク家がヨーロッパ中を探して集めたコレクションだそうで、手に入れた絵は王様の輿に乗せてウィーンまで運ばれたそうです。
私が1994年に初めて「ウィーン美術史美術館」を訪れた時、朝10時の開館と共に一番乗りで美術館に入り「ブリューゲルの間」を目指したのですが、すぐには部屋が見つかりませんでした。
入口正面の立派な階段を上って、降りて、それでも分からないから案内図を貰って、もう一度上の階まで行ってよくよく見ると、大きな頑丈そうな扉がありました。
まさかと思いながらその扉を開けると、そこが展示室でした。なんとまあ、自分で扉を開けて入るのです。
入って二つ目の部屋がお目当てのブリューゲルの部屋でした。
有名な「バベルの塔」(画像)や「雪中の狩人」など12点のブリューゲルが部屋を取り囲んでいました。
部屋の中央にソファがあって、そこから眺めたり、絵に近寄ってしげしげと見たり、開館直後ということもあって暫くのあいだ部屋を独占することができました。
それはとても幸せでとても贅沢なひと時でした。
ブリューゲルの部屋ですっかり満足した後はルーカス・クラーナハのコーナーに向かいます。
じつは私はこの美術館で出会った「ユディット」(画像)に心を奪われてクラーナハのファンになったのです。
クラーナハの「ユディット」は正式には「ホロフェルネスの首を持つユディット」と言って、他の画家も題材にして描いていますがクラーナハのそれは他の画家に無い妖しい魅力があります。クラーナハの真骨頂と言えるでしょう。
その脇に並ぶ10点ほどのクラーナハの絵もどれもが独特の美に満ちています。
例えば「選帝侯フリードリヒ賢公の鹿狩り」は他の美術館では見たことのないユニークな作品です。
「ウィーン美術史美術館」にはその他にもたくさんの名画があります。
ラファエロの「草原の聖母」(画像)はラファエロの母子像の中でも特に美しい作品です。
フェルメールの「画家のアトリエ」は画家自身の後ろ姿が描かれている変わった構図の作品です。
また、3部屋にわたって展示されているルーベンスはいずれも大作ぞろいで圧倒されます。
レンブラントも出来の良い自画像がありましたし、デューラーやホルバインも良い作品が並んでいました。
などなど、まことにハプスブルク家の財力と鑑賞眼に敬服しました。
画像は1994年に購入した図録です。ブリューゲルの「雪中の狩人」が表紙になっています。
なお、美術史美術館へは1994年と2005年の2度訪れましたが、自然史博物館の方は2度とも行きそびれました。
ハプスブルク家のお宝がいっぱいあるそうなので行けばよかったなと少し後悔しています。
(2023.11記)