【東京富士美術館】(東京都 八王子市)
「東京富士美術館」はJR八王子駅からバスで20分ほど離れた小高い丘に建っています。
美術館の周辺は創価大学や創価学会の施設などがあって、実は「東京富士美術館」も創価学会系の美術館なのです。
そう言うと宗教にアレルギーがある人は敬遠しそうですが、美術館自体は宗教色は全くなく、純粋に西洋絵画の逸品を楽しめる美術館として万人にお勧めできる美術館です。
とは言え、日によっては全国各地の信者さん(殆んどがお年寄り)が観光バスで来館するらしく、それらの信者さんの中には美術館に馴れないせいか大声で話をしていることがあります。
でも、しばらくすると一斉に館外に出ていくので暫くの辛抱です。
私が訪れたある日は、ボッティチェッリの絵を見ていたおばあさんが「本物の絵ってずいぶん大きいんだね」と感嘆しておられました。
展示室に入るとすぐ目に付くのがドメニコ・ギルランダイオの「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」(画像)です。
この絵は丸紅が所有するボッティチェッリの「美しきシモネッタの肖像」にも似て、気品のある素晴らしい作品です。
この絵の作者ドメニコ・ギルランダイオは若き日のミケランジェロが最初に師事した画家としても知られています。
次の部屋に移る角にルーカス・クラーナハの「ザクセン選帝侯ヨハン・フリードリヒ豪胆公の肖像」(画像)がありました。
この絵が私のお気に入りで、この絵を見たいがために何度も「東京富士美術館」を訪れています。
2016年に国立西洋美術館で開催された「クラーナハ展」にこの絵が貸し出されなかったのが不思議なくらいに人物描写にすぐれた作品です。
「東京富士美術館」は15世紀〜17世紀にかけてのヨーロッパ絵画が充実しています。
ベルリーニやティントレット、それにフランス・ハルツなど、国内でこの時代の作品をこれだけ多く所有している美術館は国立西洋美術館くらいでしょうか。
質的には国立西洋美術館よりも東京富士美術館の収蔵品の方が優れているように思います。
そうした作品の一枚、ホーフェルト・フリンクの「犬を抱く少女」はまさに師匠のレンブラントを思い起こさせる作品です。
ピーテル・ブリューゲル(子)の2枚の絵のうち、「農民の結婚式」も興味深い絵です。
父親が描いた原画の方はウィーン美術史美術館に収まっていますが、長男のピーテル・ブリューゲル(子)はそれを模写しながら結婚式の舞台を室内から屋外に変えたりして、独自性を出そうとしています。
一度、二枚の絵を並べて見たいものです。
印象派以降の絵画を並べた部屋に移ると、マネの「散歩」やモネの「睡蓮」をはじめとして、これもなかなかの充実ぶりです。
それはそれで悪くはない(というよりもはっきり言って素晴らしい)のですが、私はこの美術館の見所は日本では珍しい中世ヨーロッパの絵画にあるように思います。
また、ゴッホも一枚ありましたがオランダ時代の暗い色調の絵でした。
画像は「東京富士美術館」の図録です。
何分冊にも分かれており、これは第2巻の「ヨーロッパ絵画 伝統の400年」です。
画像は充実していますが残念ながら絵の解説はほとんどありません。
(2011.02記)