【アンモナイトの化石 その1】 (ammonites)


 この黒い石はアンモナイトの化石です。
 ・・・と言って見せると、皆さんエーッと驚かれます。
 だってみんなが知っているアンモナイトというのは、巻貝のような、あるいはオウムガイのような形をしているのに、この石ころと言ったら大きさも色もまるで海苔をたっぷりと巻いたおにぎりのような形をしているからです。
 この黒い石は私の握りこぶしほどの大きさで、手にとってみるとズッシリと重く、そしてヒンヤリとしています。
 しげしげと見ていると、石をぐるりと一周するように細い線があることに気がつきます。
 その線の上部を持ち上げると、アララ!パカッと開くではありませんか。
 そう、まさしくパカッと。なんだかドキドキします。
 二つに分かれた部分を見ると、なるほど確かにその中にアンモナイトの化石が埋まっているのです。
 この不思議な石はネパールのヒマラヤ山脈で採取されたものです。
 どうしてそんな高山に海の生物の化石が?といぶかしく思いますが、実はヒマラヤ山脈はかつては深い海だったところが隆起して出来たのだそうです。驚きですね!
 海の底が大陸移動の末に盛り上がったのは今から約5000万年前から4000万年前の間だと言われています。
 その前はと言うと、約2億年前に「パンゲア」と呼ばれる巨大な大陸があって、それがいくつもに分裂したことが始まりで、そのころ海底だったところがついには海抜7000mものヒマラヤ山脈になったのです。
 ということでこのアンモナイトの化石は約1億5000万年前のジュラ紀後期のものなのだそうです。
 なんとも気宇壮大な物語です。
 人間の寿命なんか、なんてちっぽけな・・・
 ところで私はこの化石の存在を五木寛之の「僕のみつけたもの」という本で知りました。
 私も同じものが欲しくて、新宿紀伊国屋ビルの1階にあるマニアックな店でこの黒い石を見つけて買い求めました。
 「僕のみつけたもの」と続編の「ちいさな物みつけた」は、私にとってバイブルのような存在です。
 もっと言えば、ホームページの「なんなんだ?」という章は五木寛之の2冊の本へのオマージュなのです。