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製作 | 1979年 ・ イギリス・フランス映画(日本ヘラルド映画配給) |
監督 | ロマン・ポランスキー(他に「チャイナタウン」「戦場のピアニスト」など) | |
出演 | ナスターシャ・キンスキー、 ピーター・ファース、リー・ローソン | |
原題 | Tess | |
栄誉 | アカデミー賞(受賞):撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞 アカデミー賞(候補):作品賞、監督賞、作曲賞 | |
上映時間 | 171分 | |
私の評価 | 7点 |
映画「テス」の原作はイギリスの文豪トーマス・ハーディの代表作「ダーバヴィル家のテス」です。 トーマス・ハーディの小説に登場する人物は運命に翻弄されるタイプが多いようですが、本作でもヒロインの人生は運命のなせる業か悪い方へ悪い方へと転落していきます。 そしてテスはついには殺人を犯してしまうのですが、それはテス自身や相手の男の問題というよりも、当時のイギリスの社会観や倫理観などによって彼女の行く末が最初から定められていたようにも思えてしまうのです。 「テスが美人に生まれついたが故の悲劇」だなんて、今の世の中から見れば不条理極まりないことですが、物語はテスの思いや願いをよそに破滅の終局へと向かっていくのです。 トーマス・ハーディの小説が映画化されたものとしてこの映画の前に「遙か群衆を離れて」という作品がありました。 「遙か群衆を離れて」の主人公バスシーバは遺産相続によってにわかにお金持ちになった女性、いっぽう「テス」の主人公テスは自分が名門の家系に連なることをにわかに知った極貧の女性、という設定です。 かたや金持ち、かたや貧乏人という両極端な設定ですが、どちらも「にわかに」というのがキーワードで、それまで平凡に暮らしていたのにそこから運命の歯車が回り始めてしまうのですね。 アカデミー賞では作品賞や監督賞など6部門にノミネートされ、撮影賞などの3部門で受賞しました。 ヒロインを演じたナスターシャ・キンスキーは儚くも美しい主人公にぴったりで良い演技でしたが、アカデミー賞では主演女優賞にノミネートさえされませんでした。新人俳優に対する「アカデミー賞あるある」ですね。 私の評価は、物語の展開がやや駆け足ながらも原作の雰囲気をよく出していたので7点にしました。 【ストーンヘンジ】 映画のクライマックスは逃避行の末にストーンヘンジで一夜を明かしたテスが、翌朝目覚めると騎馬警官たちに取り囲まれているところで終わります。 画面には「テスはその後絞首刑になった」とテロップが流れます。 イギリスの古代遺跡ストーンヘンジはたいへん有名で見栄えも良いのですが、映画の撮影地として撮られることは案外ありません。 私の知る限りでは「トランスフォーマー 最後の騎士王」に少しだけ出てきますが、もちろん映画が映画だけにCGで描かれていて全くリアリティがありませんでした。 やはりストーンヘンジと言えば「テス」が定番ですね。映画の中でもとてもミステリアスに撮影されていました。 【ゴールデングローブ賞 外国語映画賞】 この映画はイギリスとフランスの合作映画で、言葉は英語で話されているのですが、ゴールデングローブ賞では外国語映画賞を受賞しています。 えっ?外国語?と思うのですが、当時のゴールデングローブ賞はアメリカ映画だけが作品賞の対象になっていて、イギリス映画もオーストラリア映画も外国語映画賞の対象になっていたのです。 我々からすると英語も米語も豪州語も全て「英語」だと思えるのですが、当時のハリウッドは厳格に区別していたのですね。 もっともこの映画はアカデミー賞では外国語映画賞ではなく作品賞の方にノミネートされていましたから、ゴールデングローブ賞の方が閉鎖的な区分けをしていたようでした。 現在のゴールデングローブ賞はイギリス映画もオーストラリア映画も作品賞の対象になるようになりましたが、一方のアカデミー賞は外国語の映画も作品賞の対象になるなど一歩前を進んでいます。 日本映画の「ドライブ・マイ・カー」も第94回アカデミー賞で作品賞にノミネートされていました。 【シャロンに捧ぐ】 映画のタイトルロールの最後に「シャロンに捧ぐ」という文字が出ます。 シャロンとはロマン・ポランスキー監督の奥様だったシャロン・テートのことです。 ロマン・ポランスキーが女優のシャロン・テートと結婚したのは1968年で、翌1969年に妊娠8ヶ月だったシャロンは自宅パーティの最中にチャールズ・マンソン率いるカルト教団に襲われて無惨にも殺されてしまったのです。 大変にセンセーショナルな事件だったため当時テレビや新聞を賑わせていたことを覚えています。 それからちょうど10年後に製作されたこの映画を亡き妻シャロンに捧げていたのですね。 (2023.04記) |