【隊長ブーリバ】

製作1962年 ・ アメリカ映画(ユナイト映画製作)
監督J・リー・トンプソン
出演トニー・カーチス、ユル・ブリンナー、クリスチーネ・カウフマン
原題Taras BULBA
栄誉アカデミー賞(候補):作曲賞(フランツ・ワクスマン)
上映時間122分
私の評価7点


 1960年代の懐かしい大作映画です。
 この映画が公開された1962年の映画界は「アラビアのロレンス」があり、「アラバマ物語」や「酒とバラの日々」「史上最大の作戦」などの名作が目白押しでした。まさしくハリウッドの黄金時代ですね。
 原作はロシアの文豪ゴーゴリ。ストーリーが面白くて飽きさせないのは原作が良いせいでしょう。
 その原作は文庫本にもなっていて小難しい小説ですが、映画のほうは戦争や恋に重きを置いて、ハリウッド映画らしい娯楽作品に仕上がっています。
 監督は名作「ナバロンの要塞」を監督したJ・リー・トンプソン。音楽を作曲したフランツ・ワクスマンはこの映画でアカデミー賞候補になりましたが、残念ながら受賞は逃しました。受賞したのは「アラビアのロレンス」のモーリス・ジャールでしたから、これは仕方がありませんね。
 それにしても「隊長ブーリバ」という日本語の題名はどうにかならない?
 原題の「タラス・ブーリバ」は主人公の名前ですが、それではインパクトがないと思ったのでしょうか? 「隊長ブーリバ」という題名にしたためになんだか薄っぺらい印象になってしまいました。
 この映画は、ポーランドに裏切られたコサックたちが長い年月の末に復讐を果たす物語と、族長のブーリバの息子が敵のポーランド貴族の娘と恋に落ちることから起こる愛憎劇を描いた壮大な物語です。
 それを2時間の映画に納めるのでダイジェストになるのはやむを得ないことですが、それなりに印象的なシーンが散りばめられていてそこそこ見ごたえのある映画でした。
 評価としては「可も無し不可も無し」の5点が妥当なところでしょうが、個人的に懐かしい映画なので7点にしました。

【主演の二人】
 「王様と私」でブレイクしたユル・ブリンナーと永遠の二枚目トニー・カーチスが親子役で共演しています。
 でも、親子というには二人は体型も顔立ちも全然似ていないし、そもそもこの二人がコサック役とはどうなんだろうと思ってしまいます。
 まあ、当時のハリウッド映画にはよくあった話で、人物関係の設定だとか歴史的な考証だとかは全く無視で、出演スターのイメージ優先の映画作りでした。
 そういえば、1965年制作の「ジンギス・カン」という映画では、主役のジンギス・カンをオマー・シャリフが演じていてズッコケた思い出があります。だって、本当のジンギス・カンは朝青龍のような顔をしていたのですよ。

【美しいヒロイン】
 この映画でヒロイン役を演じたのは、当時まだ17歳だったクリスチーネ・カウフマン。
 とても美しい女優で、青い瞳と透き通るような肌。当時すでに人気女優だったオードリー・ヘプバーンを追うような女優になると期待されていました。
 ところがこの映画の撮影で恋人役を演じたトニーカーチスと実生活でも恋に落ち、18歳で結婚、芸能界引退。
 とても残念でした。
 だって、トニー・カーチスとは20歳の年の差、しかもトニー・カーチスは撮影のロケ地に前妻を帯同していたのですよ。けしからんことです。

【当時のロケとは】
 最近の映画では群衆シーンや戦争シーンなどはCGを使うことが常態化していますが、1962年当時は実写での撮影が主でした。
 原作の舞台であるウクライナに似たロケ地を探して世界中を駆け巡り、ようやく見つけたのが南米のアルゼンチン。
 ここで1万人のエキストラと1万頭の馬を集めてコサック軍とポーランド軍の戦闘シーンを再現しました。
 今の映画作りではとても考えられないことですね。

【ペストの蔓延】
 ポーランド軍が立てこもった城壁に囲まれた町にペストが蔓延していく暗くて絶望的なシーンが妙に記憶に残っています。
 中世のヨーロッパって何となく暗黒のイメージがありますよね。
 以前、オーストリアの首都ウィーンを訪れた時に、町の中心地に「ペスト記念塔」が立っていて驚きました。
 ヨーロッパの国にとってペストの脅威はとても深刻で身近かだったのですね。

(2020.02記)