【ひまわり】
製作
1970年 ・ 伊、仏、ソ、米 合作映画(カルロ・ポンティ・プロダクション製作)
監督
ヴィットリオ・デ・シーカ(他に「自転車泥棒」「ああ結婚」など)
出演
ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベーリエワ
原題
Sunflower
栄誉
アカデミー賞(候補):
作曲賞
上映時間
107分
私の評価
7点
戦争中に捕虜になったり行方不明になった兵士と、その家族の物語は数多くあります。
無事に帰還して家族と再会した兵士や、捕虜中に死亡したことが確認された家族の物語などは戦争以上にドラマチックです。
その中にあって、ずっと行方不明のまま帰りを待っているという宙ぶらりんのケースがあります。
この映画の主人公ジョヴァンナ(ソフィア・ローレン)もその一人です。
結婚後まもなく出征した夫アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)が何年たっても帰ってきません。
諦めきれないジョヴァンナは風のうわさを頼りにロシアまで探しに行きます。
モスクワの赤の広場やウクライナの広大なひまわり畑や近隣の村などを探し回ります。
そこでようやく見つけたアントニオは現地の女性マーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)と暮らしていました。
二人の間には子供までいます。
絶望してイタリアに帰るジョヴァンナ。
それから数年後、アントニオがジョヴァンナに会いにイタリアへ戻ってきました。
しかし今度はジョヴァンナの方に子どもが出来ていて、それを知ったアントニオはマーシャが待つロシアへ戻って行くのでした。
戦争によって引き裂かれてしまった夫婦に何の咎もありません。
けれども新しく始めた生活を無かったことにして、昔の生活に戻ることも出来ません。
結論としては辛い別れしかないのですね。
この切ない物語の映画に、私は7点の評価を付けました。
【ヘンリー・マンシーニの音楽】
この映画を観たことがない人でも、「ひまわりのテーマ」は聞いたことがあるでしょう。
映画音楽の巨匠ヘンリー・マンシーニと言えば、「ティファニーで朝食を」の主題歌「ムーン・リバー」や「グレートレース」の主題歌「スィートハート・ツリー」など、美しい曲がたくさんあります。
それらの中でもひときわ情感が溢れているのが本作の「ひまわりのテーマ」です。
【二人の女優】
気性の激しいナポリ女を演じたソフィア・ローレンはまさに彼女の本領発揮です。
本作のプロデューサーであるカルロ・ポンティは彼女の旦那だし、監督のヴィットリオ・デ・シーカは彼女の大恩人、共演したマルチェロ・マストロヤンニは彼女の大親友、ということで彼女にとっては完全にホームグラウンド。主役をリラックスして演じています。
ついでに言えば、本作の終盤に登場する赤ん坊は彼女の長男です。
一方、死にかけていたアントニオを助けて一緒に暮らしているロシア女性を演じたリュドミラ・サベーリエワは、ロシア映画「戦争と平和」でナターシャの役を演じ、その可憐さで世界中の映画ファンを魅了しました。
本作はその2年後の映画出演でしたが、その後に出演したロシア映画は西側諸国では公開されていないため、彼女の活躍ぶりは伝わっていません。
【映画公開時の世界情勢】
本作が公開された1970年は、米ソの冷戦が雪解けし、東西の緊張緩和(デタント)が進み始めた時期です。
つまり、本作の企画が始まった頃は既にその機運が高まっていたため、ソ連国内でのロケやソ連の有名女優の出演などが認められたのだろうと思います。
一方で、ひまわりが咲き乱れるウクライナの地は、まだソ連の一部でした。
その後ソ連は崩壊し、2025年現在、ウクライナとロシアは戦争状態にあります。
国際関係の移り変わりの激しさと、それに影響を受ける映画などの文化には驚くばかりです。
【ひまわり畑】
映画の冒頭、一面のひまわり畑。
当時の私は「ひまわり畑」なんてものがあること自体知りませんでした。
ひまわりは夏に咲く鑑賞用の花だとばかり思っていたので。
後年、イタリア北部を列車で通った時に延々と続くひまわり畑を目にしてようやく納得しました。
本当にひまわり畑があるんだと。
(2025.01記)