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製作 | 1964年 ・ アメリカ映画(ワーナー・ブラザーズ製作) |
監督 | ジョージ・キューカー | |
出演 | オードリー・ヘップバーン、レックス・ハリソン、スタンレー・ハロウェイ | |
原題 | My Fair Lady | |
栄誉 | アカデミー賞(受賞):作品賞、監督賞、主演男優賞(レックス・ハリソン)、撮影賞、編曲賞、衣装デザイン賞、美術賞、音響賞 アカデミー賞(候補):助演男優賞(スタンレー・ハロウェイ)、助演女優賞(グラディス・クーパー)、脚色賞、編集賞 | |
上映時間 | 170分 | |
私の評価 | 7点 |
ハリウッドでミュージカル映画が全盛だった頃の、最良の作品の一つです。 この映画の前後数年間に「ウェスト・サイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック」などの名作ミュージカル映画が次々に製作されています。 いずれもニューヨークのブロードウェイで上演された舞台を映画化したものですが、中でもこの「マイ・フェア・レディ」は1956年に上演が開始され1962年に終演するまでに上演回数2,712回という、当時のブロードウェイのロングラン記録を打ち立てています。 映画の撮影はそのほとんどのシーンが屋内にセットを組んで行われました。 それは例えば競馬場のシーンでも屋内のセットで撮影されたほどで、そのためにワーナー撮影所の26のステージの内の3分の2が独占的にこの映画のために使われたそうです。 ヒギンズ教授役のレックス・ハリソンやイライザの父親役のスタンレー・ハロウェイは共に舞台での当たり役で見事な演技を見せています。 主役のイライザ役は舞台ではジュリー・アンドリュースがこれも当たり役で当然起用されるものと思われていましたが、製作者の腹積もりは最初からオードリー・ヘップバーンだったようです。 結果的にイライザ役がオードリー・ヘップバーンだったからこそ日本を始め世界的に大ヒットになったと思います。 しかし、ハリウッド的にはジュリー・アンドリュースへの同情が集まったか、あるいはオードリー・ヘップバーンの歌が吹き替え(いわゆる口パク)だったせいか、オードリーはアカデミー賞の主演女優賞にノミネートすらされませんでした。 オードリーの演技は決して悪いものではありませんが、ジュリー・アンドリュースのイライザも見てみたかったですね。 前半の花売り娘のあたりはジュリー・アンドリュースの方が似合っている感じがしますが、貴婦人に変身してからの美しさは圧倒的にオードリー・ヘップバーンの勝ちでしょうね。 さらには、ヒギンズ役をピーター・オトゥールがやるというアイデアもあったそうで、こちらも見たかったですね。 とっても華のある良い映画です。でも私の評価は、もう一つ乗り切れないところがあって、7点にしました。 【素晴らしい作詞・作曲家コンビ】 ミュージカルの魅力はやはり劇中で歌われる歌曲の数々に尽きると思います。 「マイ・フェア・レディ」の作詞家はアラン・ジェイ・ラーナー、作曲家はフレデリック・ロウです。 このコンビで作ったミュージカルは他にも「ブリガドゥーン」や「キャメロット」などがあります。 ミュージカルの世界ではリチャード・ロジャース/オスカー・ハマースタインU世のコンビが有名ですが、ラーナー/ロウのコンビも魅力的ですね。 【原作とは異なるラストシーン】 皮肉なイギリス人作家としてつとに有名なジョージ・バーナード・ショウが書いた「ピグマリオン」という戯曲が「マイ・フェア・レディ」の原作です。 何しろ皮肉屋のバーナード・ショウですからこの戯曲の結末はヒギンズ教授がイライザに去られて意気消沈しているところで終わります。 自分の意のままに操っていた教え子に最後は裏切られるという皮肉っぽい結末ですね。 しかし世間の人々はヒギンズ教授がかわいそうという声が多く、しばしばヒギンズ教授のもとにイライザが戻ってくるという演出がされ、そのつどバーナード・ショウがイラついていたというエピソードが残っています。 この映画でも最後はイライザが戻ってくると言う甘いラストシーンになっています。 【オードリー・ヘップバーンの歌声】 当時、ハリウッド女優がミュージカル映画に出演する際は、歌の部分は本職の歌手が吹き替えをすることがありました。 オードリー・ヘップバーンがこの映画の主役を引き受けた際にも当然その話があったのですが、彼女は「ぜひ自分の声で歌いたい」と、1日5〜6時間もの発声練習を行って全ての曲を録音したのですが、結局マーニ・ニクソンという歌手が大半の歌を吹き替えることになりました。 ただしいくつかの歌ではオードリー・ヘップバーン自身の歌声を聞くことができます。 例えば「今に見ていろエンリー・イギンズ」と歌う歌では、最初と最後がオードリー自身の声で、中央部がマーニ・ニクソンの声です。 比べてみるとオードリーは役者としての演技力溢れる声ですが、マーニ・ニクソンは本当に美しい歌声です。 これではオードリーも吹き替えを認めざるを得なかったでしょう。 そのマーニ・ニクソンですが、彼女はその前にも「王様と私」でデボラ・カーの歌を、「ウェスト・サイド物語」ではナタリー・ウッドの歌の吹き替えをしていましたから、たしかに「最強のゴーストシンガー」と呼ばれるにふさわしい陰の主役だったのですね。 (2023.08記) |