製作 | 1961年 ・ アメリカ映画(サミュエル・ブロンストン製作) | |
監督 | アンソニー・マン | |
出演 | チャールトン・ヘストン、ソフィア・ローレン | |
原題 | EL CID | |
栄誉 | アカデミー賞(候補):美術賞、作曲賞、歌曲賞 | |
時間 | 190分 | |
私の評価 | ☆☆☆☆ |
1961年製作のこの映画はハリウッド全盛期に作られた歴史超大作映画です。 歴史超大作という分野は1956年の「十戎」から始まり、1959年の「ベン・ハー」で頂点を迎え、1963年の「クレオパトラ」あたりから衰退していった一連の作品群です。 「エル・シド」はそれらの中でも比較的初期の作品で、「ベン・ハー」でアカデミー主演男優賞を獲得したチャールトン・ヘストンが次作に選んだ作品として映画ファンの注目を浴びました。 話は11世紀のスペインが舞台で、カスティーリャ王国の救世主となったエル・シドという英雄の物語です。 スペインを旅するとレコンキスタという言葉をよく耳にします。国土回復運動と訳されていますが、当時イスラム教徒に支配されていたイベリア半島をキリスト教の国々が失地回復していくムーブメントをレコンキスタと言います。 エル・シドはそうした歴史の中で登場した英雄でした。 我々日本人にはエル・シドと言われてもピンときませんが、西欧の人たちにとっては有名なヒーローのようで、スペインのみならずアメリカのニューヨークにもエル・シドの騎馬像があるくらいです。 原作はスペインの国民的叙事詩である「わがシドの歌」ですが、それをベースにして新たな脚本が書かれました。 長い話なのであちこち端折った展開になっていますが、それでも3時間を超える上映時間があり映画館では途中で休憩が入っていました。 主演のチャールトン・ヘストンとソフィア・ローレンが終始大画面を引き締めていたこともあって出来の良い歴史劇になっています。 私の評価は、☆四つの高評価です。 【映画の出演者たち】 チャールトン・ヘストンとソフィア・ローレンという二大スターをクレジットしていながら、脇役陣にはそれほど有名な俳優を配していません。 私が知っているのはウラカ王女を演じたジュヌヴィエーヴ・パージェくらいで、その彼女も「昼顔」や「グラン・プリ」で有名になる前のまだハリウッドでは駆け出しの女優でした。 脇役陣を地味にしたおかげで主役の二人がなお一層輝いたのかもしれません。 ソフィア・ローレンはこの年のアカデミー賞で主演女優賞を獲得しましたが受賞の対象となった映画は「エル・シド」ではなく「ふたりの女」という映画でした。 【壮大な映画音楽】 音楽監督はミクロス・ローザ、あの「ベン・ハー」でアカデミー賞を獲得した作曲家です。 「エル・シド」でも壮大な映画音楽や美しい主題歌を作曲してアカデミー賞の作曲賞と歌曲賞にノミネートされました。 残念ながら受賞したのは「ティファニーで朝食を」のヘンリー・マンシーニでしたが、これは相手が強すぎましたね。 【ヤキマ・カヌート】 ヤキマ・カヌートはこの映画で「第2班の監督」という肩書でクレジットされていますが、この人はアクションシーン専門の監督です。 元々はスタントマンとして活躍していて、「駅馬車」でジョン・ウェインが馬車から馬に乗り移るシーンのスタントをして勇名を馳せたりしましたが、現役を引退してからはそのキャリアを生かしてアクションシーン専門の監督になりました。 映画「ベン・ハー」で最も有名な戦車競走のシーンを演出したのが彼だったのです。 「エル・シド」でも一対一の決闘のシーンで迫力ある演出をしています。 その他にも多くの映画でアクションシーンの監督を務めていますが、なにせ第2班の監督ということなので表舞台に出ることは殆んどなく、映画のクレジットの中で時折名前を見かけることがある程度でした。 でも知る人ぞ知る陰の功労者であることから1966年のアカデミー賞授賞式で「名誉賞」を贈られています。 なお、名前に特徴があるのはアメリカ原住民の家系だからだそうです。 【ラストシーン】 ラストシーンはどこかで聞いたことのある結末、と思ったら、そう、三国志の「死せる孔明生ける仲達を走らす」と同じでした。 しかしどちらも有名な話ですからこれはどちらかが真似たわけでは無さそうですね。 (2023.02記) |