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製作 | 1965年 ・ アメリカ映画(MGM映画製作) |
監督 | デビッド・リーン | |
出演 | オマー・シャリフ、ジュリー・クリスティ、ジェラルディン・チャプリン、ロッド・スタイガー、トム・コートネイ | |
原題 | DOCTOR ZHIVAGO | |
栄誉 | アカデミー賞(受賞):脚色賞、撮影賞、作曲賞、美術賞、衣装デザイン賞 アカデミー賞(候補):作品賞、監督賞、助演男優賞(トム・コートネイ)、録音賞、編集賞 | |
上映時間 | 197分 | |
私の評価 | 9点 |
この映画が有楽座でロードショー公開された当時のことをしっかりと覚えています。 「アラビアのロレンス」を監督したデビッド・リーンが次にどんな映画を作るのかとても期待されていましたし、それがノーベル文学賞の作品だと分かった時の期待感や、主演が前作でアラブの族長を演じたオマー・シャリフだと聞いた時の驚きや、スペインでロケが始まったと聞いた時の安堵感や、いよいよ全米公開されて良い評判だったことなどを胸をワクワクしながら聞いていました。 だから全米公開から半年遅れの1966年6月にいよいよ有楽座でロードショー公開された時は映画が始まる前から大興奮でした。 途中の休憩を挟んで3時間以上という長い映画ですが、雄大なウラル山脈のふもとで行なわれる葬儀のシーンや、赤い旗をなびかせて列車が走っていくシーンや、戦闘前の林の中での緊迫したシーンなど、記憶に残る場面がたくさんあって、退屈することは一瞬たりともありませんでした。 映画は主人公のユーリ・ジバゴがロシア革命の荒波に翻弄されながらも、戦場で出会ったラーラとの愛を育んでいくという物語です。 ユーリは正義感の強い真面目な医者である一方、ロマンチックな心を持った詩人でもあります。 しかしロシア革命の真っただ中において不倫愛は正当化されるはずもなく、二人の仲は引き裂かれていきます。 このあたりの心理状態をもっと丁寧に描いてほしかったのですが、背景のロシア革命が大きすぎて、心理表現がやや雑になってしまったのは少し残念な気がします。 私の評価としては、前作の「アラビアのロレンス」にはやや劣るということで9点にしました。 【主演俳優のアカデミー賞的評価】 アメリカの映画界というのは随分と偏ったところがあって、新人俳優はなかなか高い評価が得られません。 デビッド・リーン監督の前作「アラビアのロレンス」におけるピーター・オトゥールはアカデミー主演男優賞部門で大本命と言われつつも受賞を逃しましたし、皆様ご存知の「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオに至ってはノミネートすらされませんでした。 この映画のオマー・シャリフも同様で、堂々と主演を果たしたのにアカデミー賞ではノミネートすらされませんでした。 もっと言えば、タイトルロールでの順番は7番目。ちょい役のアレック・ギネスよりも下でした。 このシステムはどう考えてもヘンですよね。やはり主演俳優の名前はタイトルロールのトップに記載されるべきです。 ちなみにこの年の主演男優賞の受賞者は「キャットバルー」のリー・マーヴィンでしたから、余計に新人俳優への偏見を感じずにいられませんでした。 【原作】 ノーベル文学賞は個々の作品に対して贈られる賞ではありませんがボリス・パステルナークに関して言えばこの映画の原作が受賞の引き金になったことは間違いありません。 原作はロシア革命の大義がユーリとラーラの愛を押しつぶすものとして描かれていることから体制批判とみなされて、ソ連国内では発禁図書になっていました。 それがイタリアを始め各国の言葉に翻訳されて広く知られたことでノーベル文学賞の受賞になったのですが、当然ソ連政府は面白くなくパステルナークに「スウェーデンでの授賞式に出席したら二度とソ連の土は踏めないぞ」と脅したため、パステルナークは授賞式には出席できませんでした。 発行禁止が解けてソ連国内で出版されたのはパステルナークが没した1960年から四半世紀も経った1988年のことでした。 【スペイン ロケ】 1960年代のソ連は「鉄のカーテン」で固く閉ざされていたので、モスクワでアメリカ映画を撮影するなんてまったく不可能なことでした。 ましてや原作はソ連国内で発禁処分されているのでなおさらです。 そこでロケ地に選ばれたのがスペインのマドリッド郊外で、ここにモスクワの広大なセットが再現されました。 アカデミー賞の美術賞を受賞したジョン・ボックスの凝りようは半端でなく、町の通りにある店のショーウィンドーの陳列物は物語の30年間の進行に合わせて随時変更されていったそうです。 【音楽監督】 この映画の音楽を担当したのは前作「アラビアのロレンス」でアカデミー賞を受賞したモーリス・ジャールです。 「アラビアのロレンス」の時は音楽監督が何人も交替した挙句の、いわばピンチヒッター的な起用でしたから、モーリス・ジャールにとっては本作のほうが本領発揮と言えるでしょう。 前作は女性がほとんど登場しない映画でしたが「ドクトル・ジバゴ」は主人公とラーラの愛の物語が映画のメイン・テーマでありモーリス・ジャールの美しい旋律が公開当時大変評判になりました。 アカデミー賞では「シェルブールの雨傘」のミシェル・ルグランや「偉大な生涯の物語」のアルフレッド・ニューマン等を抑えて作曲賞を受賞しています。 (2020.07記) |