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製作 | 1963年 ・ アメリカ映画(20世紀FOX製作) |
監督 | ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ | |
出演 | エリザベス・テイラー、レックス・ハリソン、リチャード・バートン | |
原題 | CLEOPATRA | |
栄誉 | アカデミー賞(受賞):撮影、美術、衣装デザイン、視覚効果 アカデミー賞(候補):作品、主演男優賞(レックス・ハリスン)、編集、音響効果、作曲 | |
上映時間 | 192分 | |
私の評価 | 4点 |
ハリウッド黄金時代の超大作「クレオパトラ」は評価が難しい映画です。 1950年代から1970年代のハリウッド映画はスター俳優と多くの出演者、それに豪華なセットや衣装、さらに壮麗な音楽を70mmフィルムの巨大スクリーンに映し出す歴史超大作が花盛りでした。 まだテレビが出始めでそれも小さな白黒画面であったことから、動画の分野は映画の独擅場であり、次々と製作される大作映画はまさに目の前に繰り広げられる歴史絵巻として観客を魅了したのです。 そのためよほどの失敗作でない限り興行的な成功は約束されていたも同然で、この「クレオパトラ」もその年の全米トップの興行収入を挙げ、日本をはじめとする全世界の興行収入でも一位になりました。 ところが、エリザベス・テーラーの病気をはじめとする製作中の様々なトラブルによって製作費用が膨大な金額になったため20世紀FOX社は大赤字になり、倒産の危機に瀕してしまったのです。 さらに、エリザベス・テイラーとリチャード・バートンのW不倫が発覚したことでこの混乱に拍車がかかってしまいました。 その結果、損失を取り戻そうとする20世紀FOX社の思惑もあって無理な編集作業が行われることになりました。 そもそもが6時間を超える長い映画で、本来はシーザーのエピソードとアントニーのエピソードを分けて前後編として公開する予定だったのですが、W不倫の話題を営業上に活用しようとする会社側の思惑で一本にまとめられ、さらには時間が長すぎるからとズタズタに切られたため、なんとも中途半端な映画になってしまいました。 製作中は脚本も演出もゆったりとしたドラマとして撮影されていたのに、編集の段階で約半分の長さに編集されたものですから、まるでNHKの大河ドラマを年末に総集編として見ているような感じでした。 シーザーと言えば有名な「ブルータス、お前もか」という名台詞の場面なども無音声でさらっと描かれています。一方、豪華絢爛なクレオパトラのローマ入城のシーンはたっぷりと時間が取られているのです。 そうした編集上のバランスの悪さや、製作会社を経営の危機に追い込んだ張本人としての悪評などから、世間的には失敗作とみなされており、私の評価としても4点しか付けられません。 【エリザベス・テイラーってどうなの?】 当時「映画史上最高の美人女優」として圧倒的な人気を博していたエリザベス・テイラーですが、だからと言ってクレオパトラの役を演じるのは無理があったように思います。 エリザベス・テイラーに決まる前はオードリー・ヘップバーンはどうかという話もあったようですが、それも無理がありますよね。 さらにその前には黒人俳優のドロシー・ダンドリッジという話もあったそうですが、現在ならともかくも当時は成立しない話で、結局はハリウッド好みのエリザベス・テイラーになってしまいました。 当時誰が適役だったかは分かりませんが少なくとも豊満なエリザベス・テイラーではなかったように思います。 ちなみにクレオパトラの時代のファラオは現在のギリシャ系の人種だったそうですよ。 であれば案外クレオパトラはワシ鼻だったりして。 となると例えば、バーブラ・ストライザントのような女優? エッ! 或いはサンドラ・ブロック? ふーむ。 【レックス・ハリスンってどうなの?】 エリザベス・テイラーの起用と同様にレックス・ハリスンのシーザーってどうなの、という気がします。 レックス・ハリスンと言えば「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授役が有名ですね。あの鼻につく英国調の発音や台詞回しと身のこなしははどう見ても勇猛果敢なローマ軍を率いた英雄のそれではありません。 もっと荒々しさや冷徹さを持った役者が良いと思うのですが。 これまた誰が適役かと問われてもよく分かりませんが、ローレンス・オリヴィエなんかどうでしょうか? あるいはクリストファー・プラマーなんかも良さげです。 【有楽座でのロードショー公開】 この映画をロードショー公開した有楽座の案内チラシが手元にあります。 それによると上映は12時半からと5時40分からの2回だけ。最近の映画は一日4回から5回は上映しているのでその半分の上映回数だったということですね。 これで興行収入のトップになったのですから凄いことです。 ちなみに同じチラシには料金表も載っていました。それによると全席指定入替制で一番安い席が500円、一番高い席が2000円でした。 【映画の主役】 結局のところこの映画の見どころは「豪華でリアルな映画セット」「これも豪華な衣装」「それらをより美しく撮影した技術」に尽きるように思います。 実際にこの3つはアカデミー賞を受賞しています。 でもそれだけだったら単なる見世物になってしまいます。 そうなってしまったのはズタズタに切り刻んでしまった編集とスター俳優優先のキャスティングのせいだったと思います。 残念なことです。 (2021.10記) |