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製作 | 1969年 ・ 日本映画 (創造社・ATG) |
監督 | 大島渚(他に「青春残酷物語」「戦場のメリークリスマス」など) | |
出演 | 渡辺文雄、小山明子、阿部哲夫、木下剛志 | |
上映時間 | 98分 | |
私の評価 | 7点 |
大島渚監督の映画「少年」は、実在した当たり屋一家をモデルにしたロードムービーです。 10歳の少年と母親が当たり屋をして、父親が車の運転手から治療費や示談金を脅し取ります。 家族はそれを生きる術として日本各地を転々と渡り歩きます。 いい加減な生き方の強圧的な父親と、少年に心を寄せながらも父親に同調してしまう母親、まだ何もわからない3歳の弟、そして徐々にその生活に馴れていく少年の4人家族。 観客はこの歪んだ生活の中で少年がいつか正しい道を見つけ、新たな希望を見出すことを願いますが、なかなかそうはなりません。 いくらひどい親でも子は親を選べないという現実を突きつけられます。 10歳の子供に自立の道なんか無いんだ、と残念な気持ちになりますが、映画の最後に少年が初めて見せる一筋の涙にようやくホッとしました。 私が大学生だった頃、大島渚の映画は一種カルト的な人気がありました。 「安保反対、ナンデモ反対」の時代です。 その不安定な社会を表すかのような大島映画が学生たちの気持ちを掴んでいました。 映画好きだった私もせっせと映画館に通って大島映画を観ていました。 大島渚のデビュー作である「愛と希望の街」や、それに続く「青春残酷物語」や「太陽の墓場」などの松竹時代の映画は面白いと思いましたが、独立して以降の大島映画はどれももう一つノリ切れませんでした。 不安定なカメラワークや、起用した素人のぎこちない演技や台詞の棒読みに違和感がありました。 そんな中で1960年代の最後に登場したこの映画には大拍手を送りました。 私の評価は、当時の思いを反映させて7点の評価です。 【少年】 主人公の少年を演じた阿部哲夫君は当時9歳、大島渚が50もの養護施設を訪ねて見つけ出したアマチュアの少年です。 大島渚は、児童劇団に所属してテレビ局の廊下でうろつくような子供ではこの役を演じることは出来ない、と考えたからです。 その考えが正しかったことは映画を観てのとおりです。 映画の出演を終えた阿部哲夫君は再び施設に戻り、映画界とは縁を切ったそうです。 【ATGについて】 日本アート・シアター・ギルド(ATG)は国内外の良質な映画を上映することを目的として1961年に設立されました。 当初は海外の作品の上映が主でしたが、その後、独立プロとATGとが制作費を折半して1,000万円で映画を制作するという試みが行われ、本作もその一本として制作されました。 数々の名作を世に出しましたが、1992年にその役目を終え、長らく休眠したのち、2018年に東宝映画に吸収合併されました。 ATGが配給もしくは制作した映画をいくつか列挙しておきます。 「野望の系列」オットー・プレミンジャー 「8 1/2」フェデリコ・フェリーニ 「市民ケーン」オーソン・ウェルズ 「戦艦ポチョムキン」セルゲイ・エイゼンシュテイン 「華氏451」フランソワ・トリュフォー 「肉弾」岡本喜八 「もう頬づえはつかない」東陽一 「ヒポクラテスたち」大森一樹 「転校生」大林宣彦 「家族ゲーム」森田芳光 「台風クラブ」相米慎二 (2024.12記) |