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製作 | 1984年 ・ アメリカ映画 (MGM/UA製作) |
監督 | ピーター・ハイアムズ(他に「カプリコン・1」「エンド・オブ・デイズ」など) | |
出演 | ロイ・シャイダー、ジョン・リスゴー、ヘレン・ミレン | |
原題 | 2010: The Year We Make Contact | |
上映時間 | 113分 | |
私の評価 | 7点 |
「2010年」は名作の誉れ高い「2001年宇宙の旅」の続編映画です。 「2001年宇宙の旅」は冒頭に登場するモノリスや、ラストシーンのスターチャイルドの解釈が難しく、モヤモヤとしたまま終わってしまいましたが、いよいよ続編映画の登場で謎が解かれると期待して観に行きました。 前作の「2001年宇宙の旅」が製作されたのは1968年で、当時のSF映画はCGの技術など未だ存在しない時代でしたからスタジオ内に大きなセットを作って撮影していました。 メイキングビデオなどを見ると撮影の苦労がよく分かります。 それに比べると16年後に製作された「2010年」は随分と撮影技術が発達して宇宙空間の映像などもそれっぽくなりました。 この映像技術はその後も発展していくのですが、近年のSF映画の内容の空虚さを考えると映像技術はこのあたりでピークとしても良かったのではないかとも思えます。 さて続編となるこの映画の物語は、木星の軌道上で消息を絶ったディスカバリー号を調査するために開発責任者のフロイド博士らがソ連の宇宙船に便乗して木星に向かうという話です。 しかし、そこに当時の米ソ間の冷戦と緊張が絡んできてただの宇宙の旅ではなくなります。 そこらへんの筋立てが上手いですね。 この映画の原作はアーサー・C・クラークというSF界の巨人です。 前作の「2001年宇宙の旅」は映画のために書き下ろしたオリジナルの脚本だったのですが、アーサー・C・クラークは映画製作後にそれをノベライズ化し、さらに本映画の原作となる「2010年宇宙の旅」、その後「2061年宇宙の旅」「3001年終局への旅」と書き進めるのです。 SF界の巨匠の渾身の作品と言えるでしょう。 だから物語もしっかりしているし技術的な裏付けもされているので、映画を観ていて「なんだかなあ」なんて思うこともありません。(少しあるけど・・・) 物語は進み、前作「2001年宇宙の旅」でコンピュータは何故反乱したか? ラストシーンのスターチャイルドは何を意味したか? などの謎が解かれていき、そしてモノリスが無限に増殖して・・・という結末を迎えるのです。 さて私の評価です。前作「2001年宇宙の旅」に比べるとインパクトは少ないもののSF映画としての出来は良いし前作でのもやもやもだいぶ晴れました。そこで私の評価は7点にしました。 【モノリスの謎は解けたか?】 前作「2001年宇宙の旅」の冒頭にモノリスが人類の祖先たちに道具を使うことを教えるシーンがあります。「2010年」でもラストシーンで木星の衛星エウロパの海にモノリスが立っていることからモノリスは高等生物の知的進化を促す装置であることが確認できます。 しかしモノリスの役割がそれだけではないことは、「2010年」のラストで長辺2kmの巨大モノリスが分裂増殖してついには木星全体を覆い、それが爆発して新たな太陽を出現させることで分かります。 どうやらモノリスは単なる教育装置ではなく、太陽系そのものを改造する装置であるようです。 それではモノリスは遥か昔にそうした装置を太陽系の惑星に残した者の遺産なのか、それともその者たちは今でも宇宙のどこかで活動して人類を監視しているのか、本作ではまだそれ以上のことは分かりません。 【スターチャイルドの謎は解けたか?】 前作「2001年宇宙の旅」のラストに登場したスターチャイルドはその形では「2010年」には登場しません。 スターチャイルドになったボーマン船長は「2010年」の映画の中ではボーマン船長の姿のままで地球に住む母親の前に姿を現わしたりフロイド博士の前に登場したりします。 しかしそれは意識エネルギーとして宇宙生命体の中に取り込まれていくボーマン船長のかすかに残された個人的な感情や意思であって、本来はスターチャイルドになった時点でそうした感情や意思は消滅しているものなのです。 しかしそれでは映画の観客を混乱させるばかりなのでボーマン船長の姿での登場シーンになったのでしょう。 スターチャイルドはボーマン船長が宇宙生命体の一員として生まれ変わったことを視覚的かつ象徴的に表現したものだったのですね。 【2010年の後はどうなる?】 原作者のアーサー・C・クラークはその後も続編を書き続け、1987年に「2061年宇宙の旅」を、1997年に「3001年終局への旅」を上梓しました。 この2作については映画化されていないのでポイントだけ書きます。 ・モノリスはエウロパで新しい知性体を育てる一方で人類の進化にも寄与し人類は大きく発展する ・太陽系から450光年離れたところに宇宙生命体の本部(正確には全宇宙における銀河系支部)があり、人類の歴史やその好戦的な性向などがモノリスから宇宙生命体の本部に伝えられる(光の速度での報告のため片道450年かかる) ・宇宙生命体の本部は人類が宇宙生命体の秩序にとって危険な害虫であると判断しモノリスに人類のせん滅を指示する ・モノリスはそれを実行しようとするが、それを知った人類は・・・ 最後はH・G・ウェルズの「宇宙戦争」を思い起こさせる終わり方をします。 安直ではありますが一応ハッピーエンドにしたかったのでしょう。 その結果として話としては3001年以降に続く種を残しましたが、原作者のアーサー・C・クラークが2008年に90歳で没したため宇宙生命体との直接対決などの続編は発表されることなく終わっています。 【主演のロイ・シャイダーについて】 ロイ・シャイダーは「ジョーズ」のブロディ署長役で有名ですね。 エキセントリックな船長役のロバート・ショウや知的な科学者役のリチャード・ドレイファスに挟まれて良い味を出していました。 風貌からしてもカーク・ダグラスの再来かチャールトンヘストンの後継者かと期待していたのですが、あまり良い作品に恵まれずに消えていきました。 それでもアカデミー賞の主演男優賞と助演男優賞にそれぞれ一回ずつノミネートされていますからあと少しで大スターになれたところでした。 (2023.04記) |