●プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)とは、グーグルが2012年に開始した労働改革プロジェクトの総称のことです。●プロジェクトの語源は、「全体は部分の総和に勝る」というアリストテレスの言葉からきています。●このプロジェクトの目的は、「効果的なチームを可能とする条件は何か」で、社内で最高の業績をあげているチームに焦点を当て、チームの生産性を高める秘訣を探ろうというものでした。
●調査をはじめる前、Googleの経営陣は、最高のチームをつくることは、最高の人材を集めることであると信じていました。●最高のエンジニアに、MBA、博士を集めれば、最高のチームのでき上がりそうですが、それはまったくの間違いでした。●Googleが発見したのは、心理的に安全な環境にあるチームのメンバーは、離職率が低く、個性を生かしやすく、結果的に、成果を上げられやすくなるということでした。●最高のチームをつくる方程式は、私たちの期待よりもずっと主観的なものでしたが、5つの要素にフォーカスすることで、ドリームチームができあがる可能性を高められることがわかりました。

「集団規範」を決める、5つつの因子
●心理学者や社会学者による、「集団規範」(チームがどのように機能するのかを規定する不文律、慣習、行動基準のこと)をテーマとした研究を調べてみると、5つつの重要な因子が発見されました。●「信頼性」(チームメンバーは、基準をクリアする品質の仕事を、決められた時間内に終わらせることができる)、●「構造と透明性」(チームメンバーは、明確な役割、計画、目標を持っている)、●「意味」(チームメンバーは、仕事に個人的な意義を感じている)、●「影響」(チームメンバーは、自分たちの仕事には大きな意味があり、社会全体の利益にプラスの影響を与えると信じている)、●「心理的安全性」の5つつが重要な因子でした。
心理的安全性とは
●心理的安全性とは、「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」という英語を和訳した心理学用語で、チームのメンバー一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のことを指します。●新しいプロジェクトを始めるときや終了したプロジェクトの振り返りをするときなど、チーム内での心理的安全性が高ければ高いほど、建設的な議論が可能になると考えられています。
●心理的安全性が不足していると、4つの不安が引き起こされ、個人やチームのパフォーマンスに悪影響が出ると言われています。●不安@無知だと思われることへの不安が増す、不安A無能だと思われることへの不安が増す、不安B邪魔をしていると思われることへの不安が増す、不安Cネガティブだと思われることへの不安が増す。
●心理的安全性が担保されると、メンバーは不安を感じることなく主体的に行動し、メンバー同士で自然と協力し合えるようになります。●自分らしく働けるようになるので、一人ひとりの思考やビジョンが明確化します。また、コミュニケーションが増えることで新しいアイデアが出てきたり、建設的な議論ができたりするようになるでしょう。●結果として、メンバー自ら強みを発揮しやすくなり、生産性の向上につながります。
●心理的安全性を測るには、メンバー一人ひとりがチームの現状をどのように捉えているか、確認する必要があります。●心理的安全性を測る手法として有名なのが、組織行動学者エイミー・エドモンソン氏が提唱した以下の7つの質問です。●これらの質問に対して、ポジティブな回答が多ければ「心理的安全性の高いチーム」、逆にネガティブな回答が多ければ「心理的安全性の低いチーム」だと判断することができます。
・質問@:「チームの中でミスをすると、たいてい非難される」
・質問A:「チームのメンバーの間で、課題や難しい問題を指摘し合える」
・質問B:「チームのメンバーは、自分と異なることを理由に、他者を拒絶することがある」
・質問C:「チームに対してリスクのある行動を取っても安全である」
・質問D:「チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい」
・質問E:「チームメンバーは誰も、他人の仕事を意図的におとしめるような行動をしない」
・質問F:「チームメンバーと一緒に仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる」
●心理的安全性を担保するには、@発言機会を均等に与える、A競争よりも協力を促す、Bポジティブ思考を意識する、C上司が部下を尊重する、D価値のある1on1を実施する、E腹を割って話すきっかけを作る、F新人をチームとしてサポートする、G評価方法を見直す、H風通しの良い組織を作る、Iチーム編成を見直す、等を考慮して行動する必要があります。●心理的安全性を担保するさまざまな方法の中から自分のチームに合ったものを選び、心理的安全性の高いチームを構築してはどうですか。 |