「 教科書では学べない『数学的思考』 」
「数学的に考える」とは、どういうことか
 ジョン・メイソン+リオン・バートン+ケイ・ステイスィー 著  新評論 刊





●凄まじい勢いで変化している今日、昨日までの正解が今日も正解とは限らないこともあり、未知の問題を自分自身で解決していく「数学的思考」がますます必要になっています。では、●「数学的に物事を考える」とは、どの様なことでしょうか?

●筋道立てて、誰にも分かり易く、納得できるようにすることです。●そのために、「特殊化」、「一般化」、「予測」、「証明」というツールを使って、「入り口」、「取り組み」、「振り返り」の三つの段階を進んでいきます。●数学的思考に「数」が必ずしも必要なわけではありません。
【 日本語版へのまえがき 】 
■本書は数学的なプロセス(過程)についての本であって、特定の数学分野について書かれたものではありません。私たちの目的は、興味がそそられる数学的な問題を解くときに、読者のみなさんが熱中して取り組んでもらうことです。■そのうえで、数学的な問題をどのようにはじめたらいいのか、どのように取り組んだらいいのか、そして経験したことからどのように効果的に学んだらいいのかを示すことです。

■このような探究のプロセスを時間と努力を費やしてしっかり検討することは、数学的思考の可能性を最大限に認識するために役立つはずです。あらゆる年齢層を対象にして教えてきた私たちの体験は、数学的な思考が次のことによって向上できると確信するに至りました。

 ▼問題をよく考えて取り組むこと。
 ▼経験から学ぶために、解法と答えを振り返ること。
 ▼自分のとった行動と感情を結びつけること。
 ▼問題を解くプロセスと段階を学んで、身につけること。
 ▼学んでいることが、自分の経験とどのように合致するかに気づくこと。







■これらを踏まえて、本書は数学的思考を育むプロセスの重要な側面に注目しながら、読者に、問題を実際に解くことを促しています。

■本書は、単に読むだけではなく、問題を解きながら読み進めていく本です。提示されている数学的な問題に精力的に取り組むことによって、本書はより価値のあるものになります。それが、あなたに生き生きとした体験を提供し、本書に書かれている解説をより身近に感じることを可能にします。■もし、真剣に問題に取り組まないのであれば、解説はあまり意味をなさないかもしれません。

■最も重要で、覚えておくべき教訓は、「行き詰まり」は大切な状態であり、思考を向上するうえにおいて欠かせない過程であるということす。■しかしながら、その「行き詰まり」の状態を最大限に活かすためには、数分だけ問題を考えて、次に進んでしまってはいけません。その問題について、時間をとってじっくりと考えることが必要です。■そして、あらゆる可能性を試し、しっかり「考えた」と納得できたなら次に進んでください。

■要約すると、私たちのアプローチは、以下の五つの重要な前提に基づいていると言えます。
@誰もが数学的に考えることはできる!
A数学的思考は、振り返りを伴った練習によって上達する。
B数学的思考は、矛盾や緊張や驚きによって刺激される.。
C数学的思考は、質問すること、チャレンジすること、振り返
 ることが大事にされる環境によってもたらされる。
D数学的思考は、あなた自身と世界を理解する助けになる。








 【 行き詰まったときの対処法 】 
■誰しも、行き詰まることがあります。避けられませんし、隠す必要もありません。それは称賛に値するし、たくさんのことが学べるとても前向きな状態でもあります。■行き詰まったときは、そのことを認め、そして受け入れ、さらに、そこから新しく役立つ活動がはじまるかもしれない、鍵となるアイディアや節目を振り返ることが最もよい方法となります。

■取り組みの詳細に入る前に、この章では入り口の段階の活動を練習する二つの問題を扱います。あなたが楽しく行き詰まり、そこから学ぶことを願っています。■行き詰まったときの感情にはいくつかのタイプがあります。例として、私は次のような状態を挙げることができます(リストは、ほんの一部にすぎません)。

  ▼真っ白なページか、問題か、宙をじっと見つめている。
  ▼計算や他の行動を起こすことを躊躇している。
  ▼進展しないので、緊張したり、うろたえたりすることさえある。
  ▼すべてうまくいかないので挫折感を味わう。






■私の経験では、自分で気づく前に、しばらくの間は行き詰まりの状態が続いているはずです。最初は、ぼんやりとしていてはっきりとしません。そして、その意識ははっきりと行き詰まり、それに気づいた状態になるまでゆっくりと成長します。■その後、「自分は行き詰まっている」と感じ、気づいたときにようやく行動に移せます。それが、書き込みが役立つ理由です。■特に、行き詰まりやそれに似た状態について書くことが役立ちます。自分の感情を表現するという行為は、自分が行き詰まりの状態にいることから距離をとらせてくれます。動けないほどの状態から自由になり、自分がとれる行動を思い出させてくれるのです。

■行き詰まりの状態に対処する方法は何でしょうか? 行き詰まりを認識して受け入れた場合、取り組むことをやめるか、小休止を取るか、そのまま取り組み続けるか、といった選択肢があります。■行き詰まったとき、諦めることが魅力的に思えますが、それは必ずしも最善の方法ではありません。よいアイディアは、しばしば一番望みがないと思ったときにやって来ることが多いからです。■もし、小休止を取るなら、その前に行き詰まっていると思える理由をできるだけ詳しく書き出すことを忘れないでください。

■一方、もし取り組み続けたい場合はどうしたらいいのでしょうか? 第2章では個人的な指導者(チューター)があなたを助けるときに役立つ質問に焦点を当てましたが、それらが本当に役立つのは、三つの質問があなたの数学的思考の一部になったときです。■そのとき、あなたは、自らのなかに専属のチューターをもったことになります。いずれにしても、最も合理的な活動は、入り口の段階に戻って以下の三つの質問に答えることとなります。
@私は何を知っているのか?  A私は何か知りたいのか?  B私は何を使えるのか?

■これらの質問が、以下のことに導いてくれます。
  ▼知っていることと知りたいことのすべてを集約してくれる。
  ▼問題を、具体的で、これまでとは異なる自信をもたせてくれる形で表現してくれる。
  ▼すでに試した特殊化をうまく活用させてくれる。
  ▼問題の読み直しをさせてくれたり、解釈のやり直しをさせてくれたりする。

■問題を注意深く読み直すことは、1回目の読みが不十分だったからではありません。それどころか、いくつかの例で特殊化を試みたあとのほうがより意味のある経験をもち込むことになり、問題をより意味のある形で読めるからです。■意図的に問題に戻って読み直すことは、自分の思考力に自信をもっており、思考のプロセスに気づいている人の特徴と言えます。■もちろん、新鮮に取り掛かり直すことは、やみくもに繰り返し読み直すことではありません。異なる解釈を求めながら、間近にした体験を読むことに関連づけることになります。

■まだあなたは問題を解いていないので、知っていることと知りたいことの間にはギャップがあります。取り掛かり直すことで、あなたは何を知っていて、知りたいことからあなたがどれだけ離れているかを把握することになります。■自分が知っていることと知りたいことのすべてを自らの言葉でまとめられれば、意識的に取り掛かり直したと言えます。
 【 問    題 】 
 スーパー
■スーパーで、あなたは20%の値引きを受けることが出来ますが、10%の消費税を払わなければなりません。あなたは、どちらを先に計算してほしいですか?値引きですか?それとも消費税ですか?

ロープでつながれたヤギ
■牧草地の中にある4m X  5mの小屋の角に、ヤギが長さ6mのロープでつながれています。このヤギは、どれくらいの面積の草を食べることが出来るでしょうか?

 ご婦人たちの昼食会
■5人の女性が丸いテーブルを囲んで座り、昼食をとっています。オズボーンさんは、ルイスさんとマーティンさんの間に座っています。エレンは、キャシーとノリスさんの間に座っています。ルイスさんは、エレンとアリスの間に座っています。キャシーとドリスは姉妹です。ベティーの左手にはパークスさんが、右手にはマーティンさんが座っています。ファースト・ネーム(名)と「さん」がついているファミリー・ネーム(姓)が一致するようにしてください。

 ホットプレートで早くパンを焼く方法
■ホットプレートで3枚のパンを焼きます。しかし、一度に2枚の片面しか焼けません。片面を焼くのに30秒かかります。そして、パンを入れたり出したりするのに5秒ずつかかり、別の面にひっくり返すには3秒かかります。3枚のパンの両面を焼くのに必要とされる最も短い時間は何分ですか?