★人間関係とほどよい状態★
■人間関係の質を決める重要なファクターとして、「対人距離」があります。■職場であれ、学校であれ、家庭であれ、人間関係がつきもので、人生を良いものにも悪いものにもするのが人間関係です。■どんなに能力があっても、どんなに努力しても、どんなに良い事をしていると思っても、人間関係がうまくいかない、というだけで生きにくくなるものです。
■人間関係には様々な要素がありますが、その中でもお互いの「ほどよい」状態を保つ事が重要です。■とは言っても、自分はほどよいと感じても相手はそうでないなど、相手によってほどよさの基準が異なります。■その尺度となるのが、「対人距離」です。対人距離は、何メートルというような物理的な距離と、心理的な距離があります。■その場にふさわしい適切な対人距離を持てるのは、重要なスキルと言えるでしょう。
★対人距離★
■対人距離は、パーソナルエリアやパーソナルスペースなどとも呼ばれています。■他人に近づかれると不快に感じる空間、他者が自分に近づくことを許せる限界の範囲、つまり心理的な縄張りのことです。■縄張りですから、誰かがこれより内側に侵入してくると、人は不快に感じたり落ち着かない気持ちになります。防衛本能が働いている状態になるのです。
■空いている電車では、座席の一番端や人から離れているところに座りませんか?■人は無意識のうちに他者との一定の距離を保ち、またある程度の距離があることが当然という意識が根底にあります。■一般に女性よりも男性の方がこの空間は広いとされていますが、社会文化や民族、個人の性格やその相手によっても差があります。■また、親密な相手に接するとき対人距離は狭く、反対に嫌いな相手に対しては広いものです。
■対人距離は、国や文化によっても異なります。■対人距離を大変重視してているルーマニア、ハンガリー、サウジアラビア、トルコ、ウガンは、相手との間に120p以上の距離を保つことを好みます。しかし、アルゼンチン、ペルー、ブルガリア、ウクライナ、オーストリアは90pぐらいまで近づいても気にしません。アメリカはそれとほぼ同じぐらいで、見知らぬ人とは95pは距離をとっていたいと思っています。
■そうは言っても、誰だって見知らぬ人との距離が75p以下になることは好みません。ですから、すし詰めの通勤電車に乗っていてどうしようもないとき以外は、そこまで他人に近づかないようにしましょう。それから、特筆すべきこととしては、女性と高齢者は文化を問わず、相手と平均以上の距離を置くことを求める傾向があります。
★ホールの分類★
■アメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールは、パーソナルスペースを、●密接距離(相手の体温や匂いが分かる距離。非常に親密な間柄の相手の距離)、●個体距離(自分の独立性を保つために他者との間にとる距離。自分や相手が、手を伸ばせば、触れることのできる距離)、●社会距離(相手に触れることのできない距離。同僚同士の会話、公式な場での距離)、●公衆距離(二者間のコミュニケーションは不適切な距離。演説や講演の距離)の4つに分類しました。

■自分一人の能力はたかが知れていますが、相手の関心を惹き、対人距離を縮め、親密な関係を構築できる能力を持っている人は、周りの大勢の人を味方にして、一人でするよりもはるかに効率よく目的を達成することができます。
■ホールの分類によれば、ビジネスシーンでは「社会距離」になります。この距離内で少しずつ縮めていき、個人的な付き合いが出来るようになれば、「個体距離」になります。■また、距離だけではなく位置も大事です。テーブルに向かい合って座ったり、いきなり隣に座るよりも、角を使って横位置に座るようにするなど、心理的な対人距離を考えることも必要です。議論する際は向かい合わせ、なぐさめるようなときは隣り合わせ、説得する際は90度の角度で座るなど、目的と状況に合わせて工夫も必要です。(スティンザー効果) |