★レオロジーとは★
■レオロジーは、物質の変形および流動一般に関する学問分野で、日本語では「流動学」とも呼ばれています。■研究対象とする物質は,通常の弾性学や流体力学で扱う固体、液体、気体のように単純な力学的性質をもつ物質ではなく、油、ゴム、プラスチック、蛋白質のように固体と液体の中間の性質をもつ複雑な物質です。■工業材料のレオロジー挙動が、実際の作業工程において重要な役割を演じることは多く、プラスチック、繊維、ゴム、パルプ、油脂、接着剤、セラミック、薬品、金属材料など、レオロジーが関与する工業分野は広がっています。
■レオロジーという用語は異説もありますが、ヘラクレイトスの有名な言葉 "panta rhei "「万物は流転する」による造語で、レオ(rheo)は、ギリシャ語で "流れ"を意味します。■レオロジーを理解する上で重要なことの1つに「粘度」があります。一般に粘度とは、液体(流体)の流れにくさを表すもので、粘度の高い物質は流動させるために大きな力を加える必要があり、粘度の低い物質はわずかな力で流動させることが可能です。
■例えば、マーガリンと蜂蜜をそれぞれコップに入れて傾けた場合は、蜂蜜は流れ出しますが、マーガリンはコップの底でその形を保持したままで、流れ出ることはありません。しかし、ナイフでトーストに塗るときは、マーガリンも蜂蜜も同じくらいの力で塗ることができます。■さらに、蜂蜜とマーガリンを同じ分量ずつ、それぞれボウルに入れ泡立て器でかき混ぜたとすると、マーガリンは案外小さな力でかき混ぜられますが、蜂蜜をかき混ぜるにはかなり大きな力が必要になります。■ということは、粘度は【蜂蜜<マーガリン】であり、【蜂蜜=マーガリン】であり、【蜂蜜>マーガリン】でもあるのです。これは、マーガリンはかける力によって粘度が変化しているからなのです。■与える力によって粘度が変わることは、攪拌機を扱う上で非常に重要になります。
■レオロジーはプラスチックの成形加工や高分子材料の力学特性から、塗料やインキの塗りやすさ、化粧品の塗り心地、食品のテクスチャーまで、あらゆる分野での現象を理解し、設計をするのに役立つ学問です。■また、多くの産業で流動の制御手段としてレオロジーが使われています。
★流体の種類★
★非ニュートン流体【与える力によって粘度が変わるもの】
■水やアルコールなどのように、与える力が変わっても粘度が変わらないものを「ニュートン流体」と言い、バターやマヨネーズのように、与える力によって粘度が変わるものを「非ニュートン流体」と言います。2種類以上の物質の混合物のほとんどは非ニュートン流体です。■非ニュートン流体の中でも、力のかけ方によって粘度が上がるもの、下がるもの、時間経過で粘度が変化するものもあります。
★ビンガム流体【降伏値を持ちながら、流れ出すとニュートン流体のように一定の粘度となる流体】
■バターはナイフで力を加えるとトーストに塗ることができますが、ある程度の力を加えないと動き出すことはありません。このバターを流動させるために必要な力を降伏応力といい、その値を降伏値といいます。■特に降伏値を持ちながら、流れ出すとニュートン流体のように一定の粘度となる挙動を示すものを「ビンガム流体(塑性流体)」といいます。
★擬塑性流体【力を加えることによって粘度が下がる流体】
■降伏値は持ちませんが、力を加えることにより粘度が下がるものを「擬塑性流体」といいます。力を加えるまでは高い粘度を示すため、あたかもビンガム流体のような振る舞いをします。マヨネーズやケチャップなど、チューブに入った身近な食品の多くは、これにあたります。
★ダイラタント流体【力を加えることによって粘度が上がる流体】
■擬塑性流体とは逆に、力を加えることにより、粘度が上がる流体を「ダイラタント流体」といいます。代表的なものとしては、片栗粉と水を1:1くらいで混ぜ合わせたものがこれにあたり、現象として、そーっと流すと、水のように流れますが、これを棒でかき混ぜると、ぎゅっと締まって流れにくくなります。
★チキソトロピー【与える力だけでなく、時間経過に伴い粘度が変化する流体】
■チキソトロピーを示す流体は、力を加えることで粘度が下がります。この点では、チキソトロピーと擬塑性流体は似ているようですが、擬塑性流体との違いは、加える力だけでなく時間経過に伴い粘度が変化する点にあります。■チキソトロピーは、一定の力を加えることで粘度が下がるが、下がった粘度がある一定時間放置すると元に戻る性質があるのです。例えば、ペンキは、かき混ぜることで粘度が下がり、ハケやローラーで壁に容易に塗布できます。塗布前にかき混ぜるのは、色ムラをなくすためだけでなくチキソ性を引き出し作業性を向上するためでもあるのです。塗布直後のペンキには、もう力は加わりませんから、粘度が上がって垂れずに乾燥します。「塗りやすく、垂れにくい」理想的なペンキは、チキソトロピーの性質を上手く利用しているのです。
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