Hergéの「タンタンの冒険」  Topへ
   ノンセンスと思えるほど目まぐるしい場面展開、これはJeevesシリーズでも味わうのだが、なんとも馬鹿馬鹿しくて息抜きになる。  

  
 
2016年8月8日

The Adventure of Tintin  by Hergé
エルジェ『タンタンの冒険』

暑気払いの読書にこんな漫画に手を出した。間一髪、あわやと思うシーンの連続で、バカバカしいアクシデント、信じられない幸運、謎解き、陰謀、友情・・・なんでもありの活劇、そのスピード感溢れる漫画を追うだけでも楽しいのだが、セリフも結構面白い。原作はフランス語で、私の読んでいるのは英訳本。40以上の言語に訳されており、勿論、日本語訳もある。今更、子供の漫画と思うかもしれないが、英語では、こんな場面でこう言うのか、と味わいながら読むのも楽しいし、何よりも、日本語には訳せないような表現が沢山ある。タンタンの叫ぶGreat snakesとか、Haddock船長の連発する罵り言葉など、日本語に変えては面白くない。(逆に日本語でどう訳してあるのか気になるところ)
1929年から1986年まで描き続けられた24作品。私は、英訳大判を3冊買ったところで、図書館から、3冊一巻本(全部で8巻ある)を借りて読んでいるが、こちらは縮小版なので老人の視力には厳しい。図書館も英訳の大判をそろえて欲しいもの。

この漫画の取り柄は、深刻さがないことである。
The Blue Lotus(初出1934年)は舞台が中国で、中国進出中の日本軍が出てきて、当時は刺激的なものであっただろうが、政治的主張があるわけでないので、今読んでも気楽に読めて、漫画を楽しんだ少年の頃に帰ることが出来る。(タンタン学―例えばユリイカ2011・12号―も既にあるようだが、ここでもオタク的ファンが大勢いるようだ。)


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『タンタンの冒険』はまさに少年漫画そのもので、女性はほとんど現れず、恋愛、性的なものとは無縁なのである。だから少年期に回帰でき、暑気払いとなるのである。
ここにあるのは、冒険、探検、探偵、密林、砂漠、南米、知らない国、海洋、革命、スパイ、戦争・・・登場人物は快男児タンタン、愛犬スノーウィ、ハドック船長、双子まがいのTomsonとTompsonというドジばかり踏んでいる探偵(呼称は英語版による)・・・彼らの口癖も楽しい。
スティーヴン・スピルバークがタンタンに接したのは大人になってからだが、虜になって、映『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(2011年)となって実を結ぶ。これは上の写真と今回の写真Red Rackham’s Treasureなどをもとにしたものである。私は映画を見ていないが,Youyubeで予告編を見ると、漫画のキャラクターを上手く写し取っているように思う。いずれ見ることになろうが、今はエルジェの漫画で十分。
 


  
   

The Adventure of Tintin  by Hergé   (2)      
エルジェ『タンタンの冒険』

暑気払いに始めた『タンタンの冒険』は、なんと言っても、罪が無く、気休めともなるので読み続けている。只今、24作品中、13作品読了。読んだ作品を、一覧表(写真)にハートマークのシールを貼って行くのも愉しい。1952年書き始められたThe Explorers of the Moonは1969年のアポロ計画より17年前のものであるのだが、今読んでもその真迫性に驚く。スピード感溢れる漫画の素晴らしさは云うまでもないが、台詞も結構面白い。フランス語からの英訳本も素晴らしく、ギャグを含む会話が面白いのである。タンタンの口癖、Great snakes やハッドック船長の、Blistering BarnaclesやThundering typhoonsなどは驚き、感嘆、罵倒などの表現に使われる言葉が、Billion of blue blistering BarnaclesとかTen thousand thundering typhoonsなどと変形しながら、随所に使われて面白いのである。日本語版ではどうなっているかと見ると、フランス語版から訳されたせいか、「なんとナントの難波船」とか「コンコンニャローのバーロー岬」と訳されて面白いところもあるが、多くの場合はギャグが無視されている。ギャグを訳すのは確かに難しい。
少年漫画を今頃読むことになろうとは思っていなかったが、外国語で読むと不思議と楽しい。

 

  
   

The Adventure of Tintin  by Hergé   (3)      
エルジェ『タンタンの冒険』

全24作品を読み終えた。英語版で23作品、最後の一冊は下書きの遺稿なのだが、英語版が図書館になく日本語版で。
あわや、間一髪、絶体絶命、千歳の一隅、そんなアホな、はてな? どうなる?なんとまあ、奇想天外・・・・の連続で、書かれた当時は政治的要素もあったのであろうが、時を経て、だだの冒険漫画となっている。
漫画にはスピード感があり、どのカットも細部まで神経が行き届いていて、じっくりと眺めていても飽きない。
会話の面白さは、ハドック船長のギャグの連発をはじめとして、言い間違い、聞き間違い、反復などそれぞれ持ち前の言い方を持っていてギャク連発であるが、冒険小説、探偵小説の筋書きもあるので、一作ごとに、感動、余韻が残る。中高生の英語の読み物として優れていると思うが、登場人物に、オペラ歌手カスタフィオーレ夫人(すごい存在感がある)を除き女性がほとんど出てこないので、男子校向けと言える。
キャラクターが、犬のスノーウィを含めて、みな個性的で、単細胞的と言えなくもないが、私は、「心根が澄んでいる」と呼びたい。彼らと出会って良かったと思う。

エルジェが1929年から1986年まで描き続けられた24作品。56年の歳月をかけて描いたタンタンであるが、いつまでも年を取らない。読む私も心は少年のまま。ただ八ドック船長の影響を受けて、最近ウイスキーの消費量が増えた。
写真は表参道から少し入ったところにあるタンタンの店(下)
キャップテン・ハドック(右上):タンタン、犬のスノーウィ(右下)


竹内 美紀 タンタン、フランス語の勉強のときに使いました。子どもが読みたがったので、日本語版も数冊そろえたのですが、24冊全部とはすごい、どれがおもしろかったですか?
宮垣弘 フランス語で読めるとは素敵ですね。
どの作品も面白かったですが、私は友情を描いた「タンタン チベットへゆく」が好きです。
少年向きに選ぶとしたら、「なぞのユニコーン号」「レッド・ラッカムの宝」の連作、「めざすは月」「月世界探検」の連作を選びます。

竹内 美紀 山登りが好きな私も、「タンタン チベットへゆく」が一番好きです。京都のタンタンショップのおみやげで子どもに「なぞのユニコーン号」を買ってあげたら「レッド・ラッカムの宝」も欲しいと言われて買い足しました。「月」の2冊は読んでないので、探してみます。ありがとうございます。



 

  

  
  2019年9月9日