N-side - No2 |
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今日の軍議の後、趙雲殿に呼び止められた。 趙雲殿に話し掛けられた瞬間、俺の心臓はバクバク激しく動き出す。 「な…なんですか?」 どもりつつも内心の動揺を悟られまいと、思わずそっけない返事になる。 すると趙雲殿は少し寂しそうな表情になる。 あぁぁぁっ! 俺様ってば、なんて馬鹿! 違うんですよー、趙雲殿!! 貴方に話し掛けられて緊張のあまりつい…あんな返事に…(泣) 「あの…きっとご迷惑だとは思うんですが、これからご予定がなければ夕食でもご一緒しませんか?」 !!! な…なんですとーっ!(興奮) 趙雲殿が、俺を食事に誘ってくれている?! 夢じゃないよな…。(頬を抓る) 痛てぇぇぇ!! 夢じゃナイ。 …もしかして趙雲殿も俺の事を……(嬉) んな訳ないよなぁ〜(沈) でも食事に誘ってくれるっていうことは、俺のコト嫌いではないって事だよな? はっっ! もしかして二人で…ってことじゃないのか〜っ! そうだよなぁ…二人でなんて趙雲殿言ってないし…(悲) きっとあの単純馬鹿(注:張飛)とかヒゲ(注:関羽)と一緒なんだろうなぁ…。 んでもって恐怖の大魔王(注:孔明)もいたりするんだよ…。 ちぇっ…そうだよなぁ…。 そうじゃなきゃ俺のことなんて誘ってくれないよな〜(拗) ましてや二人きりだなんてある訳ないよな…。 でも…万が一の可能性に賭けて聞いてみた方が良いのか…(悩) ------------------------------------------------------------------ 「馬超殿…?」 名前を呼んでも反応がありません。 夕食でもご一緒に…って誘った瞬間、固まってしまわれました。 何事か考え込んでいらっしゃるようです。 かと思ったら自分の頬を突然頬を抓ったり、がっくりという感じで肩を落とされたり。 余程私から誘われたのがお嫌なんでしょうか…(寂) やはり馬超殿は私のことお嫌いなのでしょう…。 この間インタビューを受けた時に、関平殿が「絶対そんな事はありません」って仰っていたので、 思い切ってお食事に誘ってみたんですが…。 やっぱりご迷惑だったようです…(悲) 私が「今の事は忘れて下さい」って言おうとしたら、馬超殿が 「…食事って二人きりで… な〜んてことはありませんよね?」 て仰られて。 私は二人のつもりでいたんですけど、 こうお聞きになるってことは二人ではお嫌だということですよね? ------------------------------------------------------------------ 「馬超殿と私と二人で…と思っていたんですけど…。 皆さんお誘いした方が宜しいでしょうか…?」 今の言葉…俺の聞き間違いじゃないよな?!(嬉) 確かに「二人で」って。 俺は急いでブンブンと首を振る。 もちろん二人の方が良いに決まってます…ってか二人がイイ!!(興奮) すると、趙雲殿はあの悩殺笑顔を俺の為だけに!(←強調)向けてくれて…(鼻血) 「そうですか、お断りされるものだとばかり思っておりました。 …関平殿のおっしゃる通りお誘いして良かったです」 んん? 関平??? なんでここにアイツの名前が出てくるんでしょ〜か。 それを趙雲殿に尋ねたら、少し言い難そうに、 「あ…えーと、馬超殿が私の事をその…嫌っていらっしゃるみたいですって言いましたら、 関平殿が『そんなことはないから、お食事にでも誘ってみては?』って仰られて…」 とのお答え。 ええ―――っ!(驚愕) 俺が趙雲殿の事嫌いな訳ないじゃないスか! その全く正反対ですよぉ。 どこでどう誤解されたんだ???(謎) にしても、そっか〜、趙雲殿が自発的に誘ってくれた訳じゃないのか…(悲) いやっ、例え自発的ではないにせよ、誘ってくれた事に変わりはない! ありがとー、関平よ! お前ホントイイ奴だよー。 今度俺様が何か奢ってやるからな! …そういや、最近あいつの姿見てないなぁ〜。 どうしたんだろ? ------------------------------------------------------------------ 馬超殿…私のことお嫌いではなかったんでしょうか? とても驚いたご様子だったので。 どうも私の感覚は皆さんとはズレている事が多いらしいです…。 自分では至って普通だと思うのですけれど。 軍師殿は「ふふっ…それが趙雲殿の良い所なのですよ」って仰って下さるんですが。 関羽殿や張飛殿からはよく「そのぽやや〜んっていうのがお前らしいんだよ」って。 ぽやや〜んって何なんでしょう?(悩) 以前殿に伺ったら「それは子龍の為にあるような言葉だな」ってお笑いになられて、 結局お答え下さいませんでした。 ああっ、いけない! 今は自分の事を考えている場合ではありませんでした。 今日の食事する場所とか決めないといけません。 どこがいいですかって?って馬超殿に尋ねたら、 「趙雲殿と一緒なら何処でもいいです」 って…良い方ですよね、馬超殿って。 で、結局いつも張飛殿がよく連れて行って下さる屋台に行きました。 その話を後日張飛殿にしたら「ムードも何もねぇーじゃねぇか、アイツ凹んでただろ?」 って爆笑されました。 ??? 何故私と馬超殿の間にムードが必要なんでしょうか?(悩) さっぱり分かりません。 兎にも角にもあの日はそういうどころではなかったんです―――。 ------------------------------------------------------------------ 確かに俺は趙雲殿と一緒ならどこでもいいって言ったさ。 けど…まさか城下の屋台とは、トホホ(泣) 屋台のカウンタの他に、路上に何席かあるんだけど、どこもかしこもむさ苦しいオヤジばかり。 がははっと大口開けて笑いながら酒と料理をかっ喰らってる。 まるであの馬鹿(注:張飛)がそこいらじゅうにいるようだ…。 な〜んてブルー入ってたら、趙雲殿が 「ここはよく張飛殿に連れて来て頂くんですよ〜。 賑やかでいい所でしょ〜」 って追い討ち…(沈) もっと静かで二人っきりを堪能できるようなムーディーな場所がいいっス! …とはとても言えないシャイな俺様。 取り敢えずカウンタ席に並んで座って、酒と料理を注文した。 肩が触れるか触れないかの微妙な距離…。 右横を伺うと、間近に趙雲殿の横顔。 うっわ〜、やっぱ綺麗だなぁ〜。(見惚れる) 睫毛とか超長くて、色も透けるみたいに白くてさ〜。 とても武将とは思えないよ…。 でもこう見えてすんげ〜強いんだよな、この人。 「ここはお料理もとても美味しいのですけど、お酒の種類がとてもたくさんあるんですよ。 ですから、張飛殿はとてもこちらが気に入っておられて…」 俺の前で他の男の話なんてしないで下さいよ〜(嫉妬) …!! 待てよ…今趙雲殿ここは酒の種類がいっぱいあるって言ったよな? そこで聞いてみる、趙雲殿はお酒をよく飲まれるのですかって。 「ん〜、あまり自分から好んで飲みませんね」 だって。 やっぱり!(ニヤリ) どう見てもあんまり酒強そうにないもんな〜。 宴とかでも飲んでる姿を見た覚えがあまりない。 けど趙雲殿って勧められれば断れないタイプ。 趙雲殿に飲ませまくって、酔わせて…それから…(ムフフv) ------------------------------------------------------------------ 「そんなに酒の種類がたくさんあるのなら、飲み比べしてみませんか?」 と馬超殿が妙に楽しそうにそう仰いました。 えぇー、飲み比べですか?! ここのお酒、張飛殿がお好きなだけあってとっても強いものばかりですよ。 って言ったら、馬超殿は 「構いません! その方が願ったり叶ったりですから…」 って満面の笑顔で。 そんなに馬超殿ってお酒お好きなんでしょうか? 今日お誘いしたのは私ですし、馬超殿がそこまで仰られるなら…。 同意したら馬超殿…本当に嬉しそうにされてました。 これぐらいの事でそんなに喜んで下さるなんて、本当に良い方です。(笑顔) 「オヤジ!! どんどん酒持ってきてくれ!」 屋台のご主人にそう言いながら、腕まくりまでされてます。 でももう少しちゃんと食べておかないと、お酒早く回っちゃうと思うんですけど…。 思う私を余所に、馬超殿は私にお酒を注いで下さいます。 「ささ…趙雲殿、ぐびっといっちゃって下さい!」 私が飲み終わると直に次のお酒が注がれて…。 私も馬超殿に返杯。 こうしてしばらくひたすら飲み続けていたんです―――。 ------------------------------------------------------------------ …何てことだ。 飲み始めてどれくらいったのか…、空けた酒も数知れず…。 だが…。 趙雲殿強えぇ―――!! 全く酔う気配無し!! 顔とかもこれっぽちも赤くなってないし…(驚) 今も平然と俺が注いだ酒を飲んでる。 さっき、あんまり酒は飲まないっていってたのにぃぃぃ!(絶叫) 「ええ…、お酒を飲んでも酔うことがないので、あまり自分からは飲みません。 やっぱりお酒飲んでいつまでも素面っていうのも、周りの方達の雰囲気を壊してしまうような気がして…。 張飛殿にも『お前が飲んでも酒がもったいないから、飲むな』って言われまして…」 とニッコリ笑顔で答えてくれた。 ……(号泣) そうだよ…さっき趙雲殿、酒はあんまり好んで飲まないっていっただけで、別に弱いとか言ってなかったよ…。 俺が勝手に勘違いしただけさ…。 でも…でもさ、とてもこの可憐な外見からは酒強いなんて考えられないじゃーん! 100人に聞いたらきっと99人までは俺と同じ風に考えるぜ。 打ちひしがれながら、趙雲殿が返杯してくれる酒を飲んでた。 しばらくして――― 「馬超殿!大丈夫ですか? 顔がすごく赤いですよ!?」 趙雲殿が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。 …大丈夫ですよ〜。 これしきで…酔ったり…なんか…してましぇ〜ん…・・。 んん?あれあれ? なんだか趙雲殿の顔が2重にも3重にも見えるんですけど…。 あはは…趙雲殿がいっぱい〜♪ ぼかぁ〜幸せだな〜♪ ------------------------------------------------------------------ 「馬超殿!しっかりして下さ〜い! 呂律が回っていませんよ!」 馬超殿…完全に酔ってしまわれたようです。 目の焦点も合ってません。 あぁ…やっぱりあまり食事を召し上がらないうちに飲んだのがいけなかったんでしょうか。 どうしよう…って思案していたら、急に馬超殿がガバっと立ち上がられて、 千鳥足で路上席の方に歩いていきます。 で、やおら衣を脱ぎ始めました!!(驚) いけませ―――ん、馬超殿! このような公衆の面前で、何てことをなさるんですか―――!(赤面) 脱ごうとする馬超殿を必死で抑えてたんですけど、それはもう凄い力で…。 周りの方々は面白がって「いいぞ〜、脱げ脱げ〜!!」なんて仰るし(泣) と、その時―――。 「ふふっ…お困りのようですね、趙雲殿」 何故か軍師殿が目の前におられました。 いつの間に来られたのでしょう?(謎) 傍らには姜維殿もおられて。 両手にはたっぷりと水の入ったバケツを持っておられます。 「姜維!やっておしまいなさい!」 「はい!丞相! 趙将軍、離れて下さ〜い!!」 いきなり言われて、反射的に飛びのいてしまいました。 姜維殿は両手に持っていたバケツの水を馬超殿へ向けて続けざまに掛けられて…。 馬超殿は硬直して、そのまま倒れてしまわれました。 呆然とする私に軍師殿は羽扇をひらひらさせながら優雅に微笑まれて…。 「ふふっ…酔っ払いにはこうするのが一番ですよ」 今のってただの水だったんでしょうか? 馬超殿…ぴくりとも動かれないんですが(汗) 「ふふっ…趙雲殿がとても困っていらっしゃるようでしたので、冷やした特別製です。 普通の水だと0℃で凍ってしまうんですが、塩を入れると更に凍らず冷やせるのですよ。 凍る限界ギリギリまで冷やしておきましたから…ふふっ」 ええっ! 今って1月ですよ…軍師殿。 こんな季節にそのような水を掛ければ、酔いが醒める所か亡くなってしまいますよ!(焦) 「心配いりません。 馬超殿は(こう見えても)五虎大将の一人です。 体力(だけ)は自信がおありでしょう…ふふっ」 「だいじょ〜ぶですよ、趙将軍v ちゃんと心臓動いてます!」 姜維殿が馬超殿の心音を確かめて下さったようです…。 ホッ…良かったです。 「ささっ、趙雲殿、何時までもこんな所におられては風邪を引いてしまいますよ。 帰りましょう」 えっ、まだ馬超殿が…。 「ふふっ…心配いりませんよ。 しばらくしたら目を覚ましますよ。 酔った挙句に趙雲殿にこれ程迷惑を掛けたんですから、放っておきなさい。 どうせよからぬ事でも考えていたのでしょう…想像がつきます」 軍師殿はそう言われて私の手を引っ張って歩き出されました。 もう片方の腕は姜維殿にしっかり掴まれて…(汗) ば…馬超殿〜〜〜っ! ------------------------------------------------------------------ 次の日から1週間、馬将軍は風邪でお休みされました。 「姜維―――。 何とかは風邪引かないというのは、嘘だったようですねぇ…ふふっ」 って丞相は楽しそうに笑われてました。 ―――終幕(笑) written by y.tatibana 2003.02.26 |
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