表紙映画メモ>2005.03・04

映画メモ 2005年3・4月

(劇場・レンタル鑑賞の記録、お気に入り作品の紹介など。はてなダイアリーからの抜書です)

恋のからさわぎ / コーラス / フライト・オブ・フェニックス / サイドウェイ / エイプリルの七面鳥 / ミーン・ガールズ / スイング・シフト / 氷壁の女 / Uボート 最後の決断 / アイガー・サンクション


恋のからさわぎ (1999/アメリカ/監督ジル・ジュンガー)

プロムをひかえたアメリカ西海岸のとあるハイスクール。学校一の美少女ビアンカは、パパにデートを禁止されて不満が爆発。抗議するとこう言い渡される。「もし姉さんがデートに出かけたら、お前も許そう」
パパがそんなことを言うのには理由があった。姉のキャット(ジュリア・スタイルズ)は「筋金入りの偏屈者」、男の子と出かけるわけがないのだ。困ったビアンカは自分に夢中のキャメロン(ジョセフ・ゴードン・レヴィット)に相談、めぐりめぐって白羽の矢は不良少年のパトリック(ヒース・レジャー)に。金を受け取りキャットに近づく彼だが…

タイトルからもわかるように、原作?はシェイクスピア(の「じゃじゃ馬ならし」)。キャットの女友達はシェイクスピア狂でロッカーに彼の写真を貼ってるし、授業中に黒人の国語教師がラップ調で朗読するシーンもあります(これらの設定は後にも活かされる)。
冒頭、指導教官の女性(この人もいいキャラ)が転校生のキャメロンに向かって「ここも他の高校と同じ、クソガキだらけよ」と言うのですが、生徒たちは皆元気で、ケンカや事故が起きると飛んで集まる。学校は海に面していて、気持ちよさそうだ。

アジア系のジョセフ・ゴードン・レヴィットは、華奢だから服が余って後ろにひっぱられて、うなじが常に見えてる。「服の中で身体が泳いでる」とはこういうんだ。
ヒース・レジャーは今作では鈴木一真みたいだけど、とにかく可愛い!きれいな上半身を強調したカッコが多くて、ドキドキしてしまった。キャットの機嫌をそこねて考えあぐねたすえ、学校のマイクをジャックして「君の瞳に恋してる」を歌うシーンも最高、すてきすぎる!ブラバンの応援もたまんない。
このシーンに限らずいわゆる少女漫画みたいなエピソード満載で(少女漫画読んだことない人じゃなく私が使うんだから、こういう陳腐な表現も許してね・笑)、「刑務所に入ってた」「肝臓を売った」などのウワサがある不良少年が、じつは心優しかったというの、ぐっときちゃう。そうそう、二人がペイントボール?を投げ合うゲーム場でデートするの、あれいいなあ、一度やってみたい。
パッと見正反対の男の子二人、キャメロンとパトリックが(理科の授業中にキャメロンが初めて話しかけるシーンが可笑しい)、言葉を交わすうちに打ち解けていって、最後には仲良くなってるのも、ストーリー的には大して強調されてないんだけど、良かったなあ。二人とも笑顔がすごくいいんだ。

音楽もとても可愛いんだけど、キャットが(キャメロン達の調査によれば)「女性の怒りを歌ったインディーズロック」好きなこともあり、そういうかんじの選曲で、私は女性ボーカルって聴かないから、誰の歌だか全然わかりませんでした。たとえばキャメロンとマイケルがビールパーティのお知らせをばらまくシーンで流れてたの、印象的だったけど、なんていう曲だろう?
ニック・ロウの「Cruel to Be Kind」とチープトリックの「I Want You to Want Me」(どっちも大好き)をLetters To Cleoという女声バンドがカバーしててなかなか良かったのですが、後者は、学校の屋上でキャットがバンド演奏してる(らしい)んだけど、テレビ用の編集か、最初のサビ入ったあたりで遠景のままブチッと切れてしまったのが哀しかった…

そういやパーティで、ビアンカが広告モデルのジョーイに「これは下着の」「これは水着の」とどれも同じポーズ見せられてうんざりしてたけど、あれ、私も似たようなのやられたことある。いや結構楽しかったけど。
(そのイタリア人男性とは、留守中に私の部屋模様替えされたりして、別れてしまった。部屋を空けた自分にも責任あるけど、勝手に模様替えはないだろう!と思う…)


コーラス (2004/フランス/監督クリストフ・バラティエ)

1949年、フランスの片田舎。門扉と柵で囲まれた寄宿舎「池の底」には、孤児や問題児、諸事情により預けられた子どもたちが暮らしていた。教師兼舎監として赴任してきたマチューは、厳しい校長のやり方に疑問を感じ、合唱を通じて皆をまとめようとする。

冒頭マチューが赴任してくるシーンでは、私も春から学校の先生になったばかりなので、思わず重ね合わせて観てしまいました。勿論彼はベテラン教師だし、私の環境とは時代も国も雰囲気も違うけど。それでも、初めて子どもの前に出て、腕組みしようかどうしようか、それとも後ろで組んでおこうか、戸惑う彼の姿が可笑しい。いきなり「集合の鐘を鳴らす」よう言われても、物の置き場なんて全然わかんなくて、ええっ?と。
そして、教室に向かうと、ドアの向こうから聞こえる声、声、声…が冷たい校舎に響いてる。あれ、初めはうるさく感じるんだけど、すぐ馴染んじゃう。見知らぬ他人のたてる音は騒音だけど、知り合っちゃえば気にならない、というのと似てる。

さすがフランスだけあって、校舎や先生達の服装も、素っ気無いながらどこか雰囲気がありました。ランチの時間に大人はワインを飲むの。でもゴハンは不味そうだった(笑)
(飲み物といえば、マチュー達がカフェで飲んでた緑色のは、リキュールかな?この場面では、鮮やかな色の素朴な花束が印象的)
マチューはいい先生だけど、結構思い切ったこともする。子どもの母親にむかっていきなりあんなこと言うなんて、今ならセクハラすれすれなんじゃ。
彼も子どもたちも、先生方も、皆人間くさいとこがよかったです。すごいコンクールに出たりとか、そういうこともしない。変わったようで変わらない人だっているし。

「天使の歌声」を持つモランジュ(ポスターに大きく出てる子/サンマルク少年合唱団に所属する本物のソリスト)は、美少年というんじゃないけど面白い顔で、横顔がとくに美しい。誰もいない教室で、黒板を上目づかいで眺めながら歌う姿には、ちょっと見惚れてしまった。私はなんとなくカトリーヌ・ドヌーヴの息子を思い出しちゃったんだけど、実際比べたら全然似てないんだろうな…
ちっちゃいペケルは可愛すぎ!歌えない彼はメトロノーム番?なんかしながら、教卓に座ってるの。マチュー先生みたいにほっぺをギュッとしたくなっちゃう。
映画は二人が50年ぶりに再会するシーンで始まるのですが、老人となった今では体格が逆転してるのが面白い。

サントラ、先に買っちゃったけど、観たあとに聴くとやっぱり全然違う。

(05/04/19・劇)


フライト・オブ・フェニックス (2004/アメリカ/監督ジョン・ムーア)

劇場ガラガラだった。一人で行ったら、いやな目に遭った…
でも映画は面白かったです。

(以下の文章は映画の結末に触れています)
まずはリメイク元の「飛べ!フェニックス」の話から。
アルドリッチの映画ってどれもオープニングがかっこいいけど、私が一番好きなのはコレです。正確には「オープニングタイトル」かな。説明しちゃうとつまらないんだけど…雰囲気としては昔の土曜ワイド劇場みたいな感じ。
砂漠に不時着した飛行機の乗客たちが残骸で小型飛行機を組み立てて脱出するのですが、冒頭の墜落でまず二人が死んじゃう。そのうち一人は機内でギター弾いてた記憶があるんだけど、今回のリメイク版でもちらっとギターが映ったような。ちなみに「生きてこそ」でも墜落後にギター弾いてる人がいる。飛行機内でギター見かけたら、事故のサインか…(笑)

オリジナル版はとにかく「灼熱地獄」の印象が強かったけど(加えて暑苦しい顔の人が集まってるし)、今回の最大の敵は「砂嵐」です。コンタクトレンズしてる私は見てるだけで目が痛い。メガネにしても一瞬でふっとんじゃいそう。また、オリジナルの方は何となく舞台劇ぽい感じがするのに対し(舞台でも観てみたいという意味で。とくにラストの、完成した飛行機で飛んでくとこなんて、学芸会ぽくない?)、今回のは、砂漠の描写はツルツルしてて人工的なんだけど、奥行きが感じられました。
でもって冒頭の墜落シーンがすごい。おいおい漫画かよ!この飛行機、よく離陸にこぎつけられたなーと思ってしまうほどの盛大なふっとび方。面白かった。
キャストに関しては、主役のデニス・クエイドは顔が古臭いから話に合ってるし、まだ結構いい身体してる(私が一番最近彼を劇場で見たのは「エデンより彼方に」…ここでもある意味「男」だった)。そうそう、彼に限らず今回の男たちはよく脱ぎます。あるいはつなぎ着るんで、つなぎ好きの人(私)には楽しいかも。
「飛行機技師」のドイツ人は顔がオリジナルにそっくり。少年隊のヒガシじゃないどっちかに似てる。
音楽もかっこよくて、Outkastが流れるシーンも楽しかった〜。

デニス・クエイドといえば「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー」でジェリー・リー・ルイスを演じてるの、ビデオ持ってるんだけど、すごく熱演してて。この話はまた次の機会に。

(05/04/11・劇)


サイドウェイ (2004/アメリカ-ハンガリー/監督アレクサンダー・ペイン)

ジャック役のトーマス・ヘイデン・チャーチって、見覚えある顔だと思ったら、「ジャングル・ジョージ」でジョージのライバル役やってた人じゃん!あのボンボン役、憎めなくて良かったなあ。すごく小柄な印象があったけど、ブレンダンがデカいからそう見えただけなんだ。今作では肉がついて、すっかりオジサンになってました。
(ちなみに「サイドウェイ」って「結婚前の最後のお遊び」の話なんで、ブレンダンの出演作「風と共に去る20ドル!?」を思い出してしまった。結婚を控えた彼のために仲間がストリッパーを呼ぶんだけど、ブレンダンはいかにも彼らしい対応をするという…)

作家志望の国語教師マイルス(ポール・ジアマッティ)と、結婚を控えた元俳優のジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が、一週間の旅に出る。長い付き合いの彼等だが、性格は正反対。マイルスは別れた妻にい未練たらたらだが、ジャックは楽観的なプレイボーイ。旅先で出会ったのは、マヤ(ヴァージニア・マドセン)とステファニー(サンドラ・オー)という二人の女性…

ロードムービーは楽しい。カリフォルニアを発った二人の車はまず、誕生日を迎えたマイルスの母親の家へ。なんか同じような家ばかり並んでるフシギな町。翌朝出発して、ドライブウェイでゴハン…食事シーンはどれも楽しく撮られてました。
生真面目なマイルスは細かいプランを立てるんだけど、「独身最後の女遊び」目的のジャックは彼を放って出て行ってしまう。でもお互いの事は思い合ってるの。「ルームメイト」だった学生当時もこんなかんじだったのかな?と思ったりして。
しかし、ワインおたくのマイルスの話は聞いてて眠かった…
ワイナリーには団体客がたくさん来てるんだけど、日本でいう「日帰りバス旅行」みたいなノリなのかな。ロゴ入りの帽子やシャツなどが売られてて。そういうの、とくに意図も感じさせず淡々と撮られてて、面白いなーと思いました。

ポスターなど見ると男女四人組の話のようですが、メインは男二人の珍道中。二人の会話が面白い。でも女性たちもいい雰囲気。
サンドラ・オー演じるステファニーは、ポリシーがあって、格好も自分に似合うものをちゃんと知ってるふう(アジア人の細腰を強調している)。席を抜けるとき目配せするのが、いかにも女同士のアレという感じで…陰でどんな話してたんだろう(笑)
彼女の一軒家はゆったりしたかんじで、椅子がたくさんあるんだけど、マヤ(マドセン)が玄関先のやつにマイルスと並んで座るの、彼の方向いて、肘掛にヒザ乗せて座るんだよね。大人の女のそういうのってカワイイ。
ヴァージニア・マドセンの顔って、今にも語りかけてきそうな口元、たまに浮き出すメガネみたいな眉間のシワ…ちょっと杉田かおるに似てると思うんだけど、なんともいえず魅力的。彼女が暮らす部屋も、こじんまりしててとてもすてきでした。

ところで、大体フィクションに出てくる「セックス好きな女」というのは(この話のステファニーのように)情熱的なものだけど、実際は、少なくとも日本では、知ってる限り、べつにそんなこともない。まあこの話でも、ジャックが「ああいう太った女は男に飢えてるから〜」などと言うのが全く当たってなかったりするわけで、そういうもんだ(笑)

(05/04/03・劇)


エイプリルの七面鳥 (2003/アメリカ/監督ピーター・ヘッジズ)

ギンレイホールで再上映してたので観てきました。すごく面白かった、去年観てたらベスト3に入ってた。

感謝祭の朝。ニューヨークの下町に暮らすエイプリル(ケイティ・ホームズ)は、恋人のボビー(デレク・ルーク)に叩き起こされる。今日は家族がやってくる。七面鳥を焼かなくては。
いっぽう一家も、エイプリルの所めざして車を走らせる。母親のジョイ(パトリシア・クラークソン)と娘との関係は複雑。エイプリル側と家族側の混乱の数時間が交互に描かれます。

自分のことを「一枚目のパンケーキ」=「できそこない(の長女)」だと思っているエイプリル。万引きなどを重ねたあげく家を飛び出し、何年間も音信不通。意を決して家族を招待したものの…料理なんてしたことがない(彼女が作ろうとしているのが「マッシュポテト」だとわかったときの衝撃!(笑))。でも一生懸命だ。彼氏のボビーもとてもいい人。
ニューヨークに向かう車には、パパ(オリヴァー・プラット)とママ、弟と妹、おばあちゃんが乗っている。長い道中、写真を撮ったり歌をうたったり、その間ママは、何度も引き返そうとする。
お母さんの名前はJoy。お父さんは車のナンバーをJOYにしている。エイプリルは食卓のウェルカムカードに「MOM」と書いたのを破り、JOYと書き直す。
家族ってどこもむずかしいけれど、映画は優しく、笑いをもって、皆を描いています。

エイプリルの暮らす古いアパートには、多種多様な人が住んでいる。人種や年齢も色々なら、流れてる音楽も様々。同じ間取りでこうも違うのかあと、部屋の中の様子を見るのも面白い。
住人達に親切にしてもらいながら、あまり顔や態度に出さないエイプリルを見て、ああ私ならもっと嬉しそうにするのになあ、お喋りするのになあ、と余計なお世話ながらやきもきしてしまったのですが、人はそれぞれ、ああいうふうだからこそ彼女なんだよね。でも七面鳥が出来上がったときの「thank you!」はとても可愛かった。
オーブンを貸してくれたものの、ギャグを冷笑されて急にヘソを曲げてしまう男性が最高でした。二人のやり取りのオチには爆笑。

オーブンが壊れてるのに気付いてあたふたするエイプリルを見て、以前、母親の大事なときに、買い物に寄ってたら車のライトつけっぱなしでバッテリーあがっちゃって、半泣きでそのへんの人に助けてもらったのを思い出してしまいました。予行練習や注意、きちんとしなくちゃと思うけど、なかなかそうはいかない。愛が足りないわけじゃないんだよ…

(05/03/25・劇)


ミーン・ガールズ (2004/アメリカ/監督マーク・ウォーターズ)

アフリカ育ちのケイディ(リンゼイ・ローハン)は、16歳にしてアメリカの高校に編入することに。初めての学校社会はわからないことだらけ。戸惑っているうち、女王様レジーナ(レイチェル・マクアダムス)とその取り巻きによる「ドールズ」(原語では「the plastics」)の一員にされてしまう。ところがレジーナの元彼にひとめ惚れしてしまい…
(以下の文章は結末に触れています)

マイケル・レーマン「ヘザース ベロニカの熱い日」のような話かと思ってたら、リンゼイが主演だけあり、取りあえず丸く収まってめでたしめでたし?でした。作中のコネタは辛辣だけど、傍から見てるぶんには面白い。
私は小学校から大学に至るまで、こういう環境に遭遇したことがないので、階級・派閥バリバリの小社会も結構面白そうだな〜と思ってしまう。まあ今や大人になって「学校なんて数年間過ごすだけの世界」ということが分かってるからだろうな。
しかし学校って、ほんと色んな子がいるよなあ!学食の机が派閥によって分かれてるんだけど、「いけてるアジア系」「いけてないアジア系」「よく食べる女」「食べない女」「運動部」「クスリ漬け」…ドールズの三人も皆個性的で見飽きない。
リンゼイと最初に親しくなるゴスっ子メイクのジャニスも肉肉しくて面白い顔で、ほっぺを引っ張りたくなる!ずっとスッピンを想像しながら見てたんだけど、普段はこんなかんじなんだ。「オレンジ・カウンティ」にも出てたそうだけど、思い出せない…

終盤、レジーナに取って代わっただけの自分(「shut up!」口癖まで移ってしまってる)を反省したケイディ。ポロシャツにまとめ髪で数学大会に出場すると、敵チームの女の子はとんでもなく冴えないヤツ。「眉毛くらいそろえればいいのに…なんてダサいの」。
でもふと思う、「相手を罵倒したって、勝負に勝つわけじゃない」「他人をデブと言ったところで、自分が痩せるわけじゃない」。
彼女がこのことに気付くシーンがこの映画のクライマックスです。

数学の先生がすごくいいカンジだな〜と思って調べてみたら、ティナ・フェイという名で、この映画の脚本も担当しているらしい。
あと、リンゼイが好きになるジョナサン・ベネットがすごくカッコいい!昔好きだった人に顔や体格が似ていて…リンゼイは授業中振り向いた彼にひとめ惚れしてしまうんだけど、私も同じくドキッとしてしまった。
「誰にだって悪いところはあるさ、レジーナの場合はちょっと目立つだけ」…ほんと、そうなのかもしれない。しかしこんなこと言える彼はなんてオトナなんだ。却って接しづらい(笑)

(05/03/22・劇)


スイング・シフト (1984/アメリカ/監督ジョナサン・デミ)

観たことなかったので借りてみました。ゴールディ・ホーンとカート・ラッセルが出会った作品だそう。

第二次世界大戦中のアメリカ。ケイ(ゴールディ・ホーン)は夫のジャック(エド・ハリス)が戦場へ駆り出されたのをキッカケに、軍需工場で働くことに。職場の主任“ラッキー”(カート・ラッセル)はトランペット奏者をめざし、夜は店で演奏している。二人はやがて深い仲に…

ダンナのエド・ハリスは海兵として戦場に赴くので(冒頭、駆逐艦がどうとかいう話をしてる)、裏「Uボート」映画ともいえるかも。エド出演作としては、少し前に書いた「コードネームはエメラルド」と同時期の軍服ものになります。とはいえナチスの制服きりっと着こなしてた向こうと違い、こちらではほぼセーラー服。彼は若い頃から指揮官顔だから、ちょっと違和感が…

ゴールディはどのような役柄でも、作る側がついそういうシーンを入れてしまうのか、ちょこっとした言動で笑いを誘ってくれますが(「潮風のいたずら」の冒頭、高慢ちきな金持ちマダムなのに、ペディキュア塗ってよちよち歩くところとか)、コメディとまではいかないこの映画でも、そうした仕草に心なごまされます。テーブルクロスで涙拭いちゃったり。
そもそも彼女のこうしたキャラクターがなければ、この映画、単なる生真面目なメロドラマに感じられたかも。外で働くだなんて考えたこともなかった妻が、髪を切り、化粧をし、いつしかガムを噛み噛み一人前に仕事をこなすように…だけど冒頭の「貞淑な妻」の頃から茶目っ気を醸し出している彼女だから、肩の力を抜いて見られる。
とはいえ、あの顔で「戦争に勝たなくちゃ!オー」と言われても、チャーチルの名前口にされても、気が抜けちゃうけど(笑)

あらすじからすると男と女のゴタゴタがメインのようですが、お向かいに住む歌手のヘイゼル(クリスティーン・ラーチ)の存在もいい。ラストシーンがケイとヘイゼルのカットだということからも、この映画のテーマのひとつが「戦時中の女たち」であることがわかります。
人手が足りなくなれば駆り出され(タクシーの運転手も女性である)、男が帰ってくれば速攻クビ。家に戻された女たちは「私たち、ちゃんとやったよね」と声をかけあう。でも男だって、家畜みたいにぎゅうぎゅうづめで戦地に送られて、ああ戦争っていやだなあ。
ちなみにゴールディのお相手の“ラッキー”カート・ラッセルですが、私はこれ以降の映画の印象が強いんで、まだまだアクも筋肉も無いのが物足りない。でもトランペット吹く姿はなかなか板についてます。

はじめと終わりに流れるのがカーリー・サイモンの「Someone Waits For You」(大きくクレジットが出る)。この曲に合わせて、オープニングでは40年代当時のアメリカ市民の写真の数々が、エンディングでは映画のシーンが振り返られます。これはいかにもジョナサン・デミというかんじ。
いい曲なのでフルで聴きたくなったけど、検索したら、このBOXにしか入ってないみたい…


氷壁の女 (1982/アメリカ/監督フレッド・ジンネマン)

「山の映画」その3です。これは面白い。

1932年。初老の医師ダグラス(ショーン・コネリー)とうら若いケリー(ベッツィ・ブラントリー)はアルプスのふもとにあるロッジにやってきた。年の離れた夫婦は周囲から珍しがって見られるが、彼等はじつは叔父と姪であった。幼い頃から慕っていたダグラスとの旅行に胸はずませつつも、妻ある彼とのこれからを考え思い悩むケリー。
二人は現地ガイドのヨハン(ランベール・ウィルソン)と雪原に出かけ、40年前の結婚式前日に遭難したという男の死体を発見する。その後、心揺れるケリーはヨハンに自分達の関係を打ち明けた。彼女に惹かれているらしきヨハンは複雑な面持ち。
翌日、ダグラスとヨハンはケリーを残し、雪山に出かけるが…

なんとなくアガサ・クリスティを思わせる映画です(ミステリーではないけど、本来の意味でのサスペンス…ではあるかも)。ダグラスが「インド帰りの医者」だったり、ロッジに詮索好きの中年姉妹(自転車でよたよたと散策に出かける)や厳格な軍人風の男(ストップウォッチを持って山に登る)が泊まっていたり。
30年代の風俗描写も面白い。登山の格好も、セーターの上にツイードのジャケットとズボン、ぐるぐる巻きのロープを背負い、アイゼンを靴に留めるバンド?も素朴なもの。ロッジのダイニングや調理場(手回しの配膳器が面白い)、シャワーじゃなくついたての向こうでスポンジ使っての水浴び(寒そう!)、などの様子も楽しい。
私からすると、二人とも登山経験があるとはいえ、男女の旅行であんな岩登ったりしなくても…と思ってしまうんだけど(笑)快晴のもとのアルプスが美しく撮られており、見ていて気持ちがいいです。

冒頭、夜行列車の中で、眠れずに彼のシガレットケースを取り出すケリー。車窓にもたれかかる様子は「わけありの女」といった風情だ。しかし翌日、毛布をかぶって駅のベンチで横になる姿や、彼に起こされて目覚める笑顔、輝く山の風景にはしゃぐ様子などは、まるで少女のよう。このアンバランスさに興味を惹かれ、どういう女性なのかな、と観ていると、ロッジでのシーンの合間に、二人のこれまでの経緯が挟み込まれていきます。
上に書いたあらすじからは三角関係の話みたいだけど、そういうんじゃなく、大自然の中での数日間が丁寧に描かれており、見ごたえがある。

村のガイド、ランベール・ウィルソンがいかにも素朴で健康的な青年で(「冬は子供たちに読み書きを教えてるんだ」)、私なら一目で惚れてしまいそう。今の彼もカッコいいけど。
(それにしても公式サイトが可愛くてびっくり(笑))


Uボート 最後の決断 (2003/アメリカ/監督トニー・ギグリオ)

潜水艦映画大好き!公開も残り一週間になったんで、出かけてきました。
(金曜の昼間だったからかわかんないけど、お客さん5人位しかいなかった)
冒頭早速ソナーの音が響いてくるんだけど、これまでの潜水艦映画に比べてやけにキンキンしてるように感じて、落ち着きませんでした(潜水艦映画のほとんどは自宅で鑑賞してるから?)。クライマックス頃には慣れたけど。

第二次世界大戦下の大西洋。米軍の潜水艦ソードフィッシュは独軍Uボートの魚雷を受け大破。生き残った乗組員8名は捕虜として拘束された。
しかし両軍乗組員を乗せたUボートも、伝染病の蔓延や米駆逐艦の攻撃により、本国帰還が危うくなる。艦長ユナス(ティル・シュヴァイガー)は米軍チーフのネイト(ウィリアム・H・メイシー)に対し、協力してアメリカを目指そうと持ちかける。
(以下の文章は、映画の結末に触れています)

前半では、ドイツ側とアメリカ側がめまぐるしく交互に描かれます。冒頭十分ほどの間に、主な登場人物の顔をアタマに叩き込まなきゃならない。
…といってもアメリカ軍は全員制服+中に白シャツ、ドイツ軍は私服なんで、カンタンに見分けつくんだけど。ちなみに両軍ともにムキムキ担当の人がいて、彼等だけはランニング姿(笑)
でもってラストシーン、米軍の収容所に入ってる独軍副艦長クレマー(トーマス・クレッチマン)は清潔な制服+白シャツ姿。アメリカ風になっている。

私にとっての潜水艦映画の面白さのひとつは、当たり前だけど、こちらの敵である「相手方」の潜水艦や駆逐艦にも乗組員がいるということ。広い海をバラバラにゆく幾多の共同体のこと考えたらしみじみしてしまう。魚雷の照準を合わせる画面になると、あああの中でも皆がんばってるんだなあとドキドキする。だから、さほど話に出てこないクルーたち(この映画なら、最後にUボートを救助する米駆逐艦とか)にこそロマンを感じてしまう。あの人たちはこれまでどうやって来たんだろう?
この映画では、ドイツ側、アメリカ側をほぼ公平に、加えて主人公?である米軍チーフ(ウィリアム・H・メイシー)の家庭での様子まであっけらかんと描いてくれるんで、私としては少々、ベールまくられすぎ…といったかんじ。
とはいえ、潜水艦の描写はやっぱり面白かったです。潜望鏡がぐんぐん出てくる様子をスクリーンで見るだけで楽しい。艦内は当然小汚い…わりには、あまり息苦しさは感じられなかったけど。やっと浮上してハッチが開いたシーンは、もっと大仰にしてほしかった!
乗組員も色んな顔の人がいて良かった。
ウィリアム・H・メイシー、私はいまだに「ブギーナイツ」のあのイメージなんで、主役で(米軍艦長より年上で、一人だけ結構年がいっている)がんばってて新鮮でした。
独軍副艦長のトーマス・クレッチマンはかっこよかったなあ。「戦場のピアニスト」ではデコ出してたせいか心に残らなかったけど…

(05/03/04・劇)


アイガー・サンクション (1975/アメリカ/監督クリント・イーストウッド)

「山の映画」その2は、イーストウッドの「アイガー・サンクション」です。

登山好きの大学教授ヘムロック(イーストウッド)の裏の顔は、プロの殺し屋。仕事収めにCIAのドラゴンから「サンクション」(報復殺人)の依頼を受ける。
標的について分かっているのは、片足が不自由だということと、アイガー国際登山隊の一員だということだけ。ヘムロックは登山学校を営む旧友ベン(ジョージ・ケネディ)の許でトレーニングを積み、3人の男たちとアルプスの岩壁に挑む。

冒頭、講義を受ける女子大生が、登山姿のヘムロック先生の図入り教科書に「私にも登ってほしい」なんて落書きして、隣の子とにんまりし合ってる。イーストウッドがモテモテの美術教授なんて、違和感…
前半は雰囲気が暗くって、ベッドシーンやら、ドラゴンが血入れ替えるシーンやらは、いかにもこの時代を感じさせる映像。
しかしそのおかげか、後半、イーストウッドとジョージ・ケネディがグランドキャニオンの岩を征服するシーンなどは、いっそう晴れ晴れと見え、美しいです。

クライマックスのアイガー登山はそれほど長丁場ではないのですが、イーストウッドが自分でやってるだけあって、やっぱりすごい。
さらに面白いのは、この北壁が、ふもとのホテル(有名なシャイデックホテル・画像)から望遠鏡で一望できるということ。晴れてる間は、ジムがはりついて4人の動きをチェックしている。
一転して、壁をはう男たちが映ると、思わせぶりな仕草でナイフを取り出す男や、イーストウッドの肩をつかむ男が…。ベタな演出に、結末分かっててもドキドキしちゃう。ラストシーンもシブいんだなあ。

ジョージ・ケネディといえば同時期の「サンダーボルト」('74/監督マイケル・チミノ)も大好き。元銀行強盗のイーストウッドと、彼に心酔してくっついてくる流れ者のジェフ・ブリッジス、イーストウッドの昔の仲間のジョージ・ケネディとジョフリー・ルイスが4人で組んで再び大仕事を…という話。準備期間の生活費のため皆で働くんだけど、ジョージ・ケネディとジョフリー・ルイスの仕事はミニカーでの移動アイスクリーム屋さん。クルマ倒れそう。
(しかしその後は、そんな可愛いエピソードから想像もつかないアメリカンニューシネマな展開に…)
ちなみに冒頭、イーストウッドは村の牧師として身を潜めているのですが、大学教授以上に似合わない。ジェフ・ブリッジスも一言「牧師には見えないねえ」。
イーストウッドとジェフ・ブリッジスって、顔の醸し出す世界が違うというか、一緒に居ても全然溶け合ってないんだけど、そういうとこも面白いです。



表紙映画メモ>2005.03・04