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設計及び工事監理の資格
◆建築士法は
建築物の設計や工事監理を行う技術者の資格を定めて、業務の適正化をはかり
建築物の質の向上を図る事を目的に制定された法律です。
◆建築士には木造建築士、2級建築士・1級建築士の資格があり、それぞれの資格者でないとできない業務が定めてあります。(建築士法第3条)
◆1級、2級、木造の資格は別にして、一戸建住宅で、建築士でないとできないかどうかは次のようになっています。
1.木造の場合
階数 床面積 2階建以下 100m2以下 建築士でなくてもできる 100m2超 建築士でないとできない 3階建以上 建築士でないとできない 2.木造以外の場合(鉄骨造・鉄筋コンクリート造等)
◆つまり、2階建以下の場合でも木造で床面積100平方メートル超、
階数 床面積 2階建以下 30m2以下 建築士でなくてもできる 30m2超 建築士でないとできない 3階建以上 建築士でないとできない
木造以外で30平方メートル超の住宅を建てようとするときは
必ず建築士に設計や工事監理を依頼しなければいけないことが法律で定められているのです。
なお、大阪府や兵庫県では条例で、木造住宅でも50?超は建築士でないとできないと定めています。
建築の件数が多い、木造住宅で安全性を高めるためです。◆工務店に設計を依頼する場合は、建築士が必要な規模や構造であれば、
工務店の中にその資格者がいるのかどうか確認が必要です。*建築士でないと設計監理を行えない規模・構造の建築物であれば、建築士のいない工務店や不動産業者等が設計・監理が行っているような錯覚を
注文者や購入者に起こさせる事も法律違反となります。
このようなケースでは、モラルの低い建築士が形式上名前を貸して、設計と監理をしており(名義貸し:違反行為です)、
また実際建てる予定の建物は法律違反であるため官公庁への建築確認申請では虚偽の申請を行っているような、欠陥住宅が生まれている例が多数あります。
(施工の手抜き以前にもともと安全性のないような計画をしているため)
◆以上は建築士法で定められている条件です。
建築士には建築における構造などの安全性等についての
最低限の基準である建築基準法の内容がわかり、
これを遵守することにより建築物の質の向上を目指すことが求められています。
つまり日本の場合、住まいの設計は一定規模以上の場合は
○設計と工事監理を建築家に依頼し、建築家の指導のもとで施工者を選定をする方式
○建築士のいる工務店やハウスメーカーに依頼する(設計と施工一括発注)の2つに分かれます。
*建築士がいない工務店が設計を行い、建築主が知らないうちに、名目上の建築士が
設計、監理を行っているように(名義貸し)ている場合もありますのでご注意下さい。当然名義貸しは法律では禁止されています。
しかし、欠陥住宅報道に見られるよううに、法律が定めた最低限の基準も守られていないことがあります。
建築主は少しでも安い価格で少しでもいいものをと考えるのに対し、
施工者は1つの建築で少しでも利益を得たいと考え、
本来は利害が対立します。この利害対立を調整するのが設計・監理の大きな役割のひとつです。
そのため諸外国では、設計・監理者と施工者を分けることを、原則としている国も多くあります。
日本でも戦後、建築士法を制定するに際して、当初の占領軍の指令では設計・監理と施工者は分けるべきという見解でしたが、
日本では伝統的に大工の棟梁が設計も施工も兼ねるという方法が根付いてたため、混乱を避けることや
戦災の復興のため大量の建築を行わなければならない理由で、設計−施工の兼業が認められることとなりました。
いい建築物を作るには設計と施工の技術が一体となることも必要で、
設計施工の一括も理想的に行われた状態では、いい建築が生みだすことも理論的には可能ですが、
現実には施工者と雇用関係にある建築士が設計監理を理想的に行うには困難なことは事実が語っています。
<例えば、建材にはピンからキリまであり、素人である建築主が、
住宅でも1万以上にわたる部材(柱から釘や金物まで)のひとつひとつを吟味することは不可能に近いからで
それを予算に応じたバランスよい選び方をしてくれるのかどうかなど>われわれ、(社)日本建築家協会とその会員である建築家は設計・監理を理想的に行うためには、
施工者と一線を画くし、設計監理を専業に行うことが必要であると考えています。
参考1−建築士法
(一級建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条 左の各号に掲げる建築物(建築基準法第八十五条第一項又は第二項に規定する応急仮設建築物を除く。以下この章中同様とする。)を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
一 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が五百平方メートルをこえるもの
二 木造の建築物又は建築物の部分で、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるもの
三 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロツク造若しくは無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が三百平方メートル、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルをこえるもの
四 延べ面積が千平方メートルをこえ、且つ、階数が二以上の建築物
2 建築物を増築し、改築し、又は建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合においては、当該増築、改築、修繕又は模様替に係る部分を新築するものとみなして前項の規定を適用する。
(一級建築士又は二級建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条の二 前条第一項各号に掲げる建築物以外の建築物で、次の各号に掲げるものを新築する場合においては、一級建築士又は二級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
一 前条第一項第三号に掲げる構造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が三十平方メートルを超えるもの
二 延べ面積が百平方メートル(木造の建築物にあつては、三百平方メートル)を超え、又は階数が三以上の建築物
2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
3 都道府県は、土地の状況により必要と認める場合においては、第一項の規定にかかわらず、条例で、区域又は建築物の用途を限り、同項各号に規定する延べ面積(木造の建築物に係るものを除く。)を別に定めることができる。
(一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条の三 前条第一項第二号に掲げる建築物以外の木造の建築物で、延べ面積が百平方メートルを超えるものを新築する場合においては、一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
2 第三条第二項及び前条第三項の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第三項中「同項各号に規定する延べ面積(木造の建築物に係るものを除く。)」とあるのは、「次条第一項に規定する延べ面積」と読み替えるものとする。
参考2−建築基準法
(建築物の設計及び工事監理)
第五条の四 建築士法第三条第一項 (同条第二項 の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)、第三条の二第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項 の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)若しくは第三条の三第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項 の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)に規定する建築物又は同法第三条の二第三項 (同法第三条の三第二項 において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)の規定に基づく条例に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。
2 建築主は、前項に規定する工事をする場合においては、それぞれ建築士法第三条第一項 、第三条の二第一項若しくは第三条の三第一項に規定する建築士又は同法第三条の二第三項 の規定に基づく条例に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。
3 前項の規定に違反した工事は、することができない。