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欠陥住宅は何故発生するのでしょうか
欠陥住宅被害例からみる予防方法

建築相談室を運営する中で、数多くの欠陥住宅に関する被害の相談があります。
なかには訴訟等の手続きを踏まないと解決できなかったり、解決前に相手が倒産してどうしようもなかった悲惨な例もあります。
このような被害が少しでも少なくなるよう、欠陥住宅の被害の典型例を分類してみました。
これから住宅等を建築・購入される方は参考にしてください。


トラブル相談事例の類型、問題点とアドバイス

1.設計-施工が一貫でなされ、工事監理者が不十分な場合にトラブルが多い・・・悪質な場合は工事監理者が不在

工事途上の建物と設計図書と照合し、設計図書通りに工事が実施されているか、また変更があった場合その施工方法等が妥当であるかを現場で確認する業務を
工事監理業務(建築士の資格をもった人がしなければなりません。相手方に資格者がいるのかどうかも確認下さい)といいます。
通常は設計を施工者と別に依頼し、その設計者(建築家)が工事監理も行います。
この場合、設計者は建築主の代理人として施工者の工事内容を検査していきますが、
設計と施工を一括発注した場合には、建築主の側に立つ工事監理者がいなくなり、工事監理が十分に行えない場合がありました。

工事監理が不十分な場合、建築主は契約図書を十分精査して自分の希望どおりの建物になっているかを自分で確認し、
工事の各工程ごとに検査も自分でしておくのが望ましいでしょう。

専門的な知識を必要とする工事監理は決して簡単な仕事ではありませんので、独自に建築士事務所(建築家)に工事監理業務を委託する方法もあります。
なお、建築物の安全性などを確保するために工事をする前に工事監理者を定めないと着工できないように法律ではなっています。
なかには悪質な建築士がおり、工事監理をするつもりはないのに、名前だけを貸しているケースもありますので十分注意してください。
詳しくはワンポイントアド
バイス<設計監理者の資格と建築家について>を参照下さい。

2.書類がほとんどないケースにトラブルが多い。

設計図書は平面図程度しかない。
→ 建物の仕様がわからない。また詳細な設計をしていない結果、相手方の間違った知識による施工が行われ、安全性等を欠く建物ができている
請負工事契約書が締結されていなかったり(口約束)、
締結されていてもきちんとした取り決めがほとんどされていない。
完成後に確認申請図書が引き渡されていない。

トラブル相談ではこのような例がほとんどで、消費者の無知につけ込み、「意図的に」書類公布(情報公開)を怠っていると思われるものも少なくありません。
紛争になっても証拠となるものがないために、なかなか解決できないことも往々にしてありました。

大きな金額の取り引きですし、購入後や完成後の保証期間(瑕疵担保期間)も長期に及びます。
じゃまくさがらずにきっちり納得行くまで説明を受け
(素人でもわかるように説明するのがプロの義務です。判らないことは判るように説明を求めても恥ではありません。)、
書面のチェックをおこない、慎重に契約してください。

逆にいえば、きっちりした住まいづくりをしようとしている建築士や建設会社はきっちり情報公開をするはずです!!

*契約にあたっての必要書類について詳しくはワンポイントアドバイスを参照下さい

なお、建築家に設計を依頼した際は詳細な設計図書を作成することはもちろん、施工業者選定や工事契約についての助言や施工業者の見積り等のチェックも依頼できます

3.集団規程違反(建ぺい率や容積率)のものが多い。

建ぺい率や容積率に違反する建物を建てるために、
確認申請と実際建てられている建物の形状が違う場合では、
実際建築する建物の安全性(耐震性など)も公的機関のチェックを受けずに建てられています。
このような建物の中には、相談員が平面図を見ただけで、構造的に重大な欠陥があると思えるものもありました。
しかし、相手がそれを認めず補修などを行う意志がない場合は、
かなりの費用(訴訟する場合、調査費用は通常100万円程度+弁護士費用)を掛けて現地調査や構造計算をした上で、
弁護士に依頼して訴訟までしないといけない場合さえあります。
裁判は長期にわたることもあり、その間に相手の経営状況が悪化してしまって、
裁判には勝てたけれど、相手が倒産直前でどうしようもないという悲惨なケースさえあります。
また、建築の素人である裁判官が欠陥かどうかを判断するわけで、相手方のいいかげんな?反論を鵜呑みにするケースや、
欠陥と判断しても被害金額を過小に判断する場合もあります。

違反建築を建てたり、買ったりすることはこのような被害に遭う可能性も高く、絶対にしないでください。
また、違反建築を平気で建てたり、売ったりする会社はもともと信用できませんし、
違反が著しい場合は、官公庁から所有者が建物の是正や撤去を求められることもあります。

また、将来、転勤などでその住宅を売ることも考えられます。その際に、違反建築であることを理由に、価格査定が大幅に下がったり、また買主が購入資金に充てるローンを銀行から拒否されることも考えられます。つまり思った価格で売れなかったり、契約がローン特約で解除になる可能性もあるのです。
建築基準法改正(平成10年)を契機に、法の実効性を高め、違反建築や欠陥住宅を防止するため、建設省は「建築物安心安全行動計画」を実施中です。この計画では、数年内に、違反建築がなくすことが期待されています。欧米での住宅の寿命は50−100年が普通ですが、日本の住宅は30年前後で建替られています。この一因は違反建築にもあり、不良な建築をなくし、真の社会資産となる建物を新築していくことが期待されています。ますます違反建築への厳しい傾向(価格査定減やローン拒否)は強まると思われます。なお、地球環境の上でも建物の長期利用は重要なことです。購入や新築をする際には、価格や仕様だけでなく、法規を満たしている建物かどうかにも関心を持ってください。

参考:国土交通省が金融機関に対して違反建築物等に融資を原則しないよう要請しました。

3階建住宅(特に木造及び混構造)は注意をー「構造計算書」を必ずもらってください
木造3階建てが規制緩和により建築しやすくなり、急増していますが、
一級建築士または2級建築士(2級建築士 は300m2
まで)が適正に構造などの設計を行い(着工する前に建築確認申請提出により官公庁のチェックも受けます。3階建になると構造の計算書の添付も必要になります)、施工について適正な監理を行っていることが前提条件になります。ひどい例では、実際は木造3階建てなのに、木造2階建てや鉄骨の3階建で申請されていたケースもありました。このような場合、実際に建てている建物の安全性が確保されていないケースがほとんどでした。
3階建ては建物の高さがあるため、地震や強風に対する配慮が2階建て以上に必要で、そのためには通し柱も2階よりは太いものを使い、バランスよく壁(耐力壁)を配置することや適正に金物を使用し梁や柱を緊結することが必要です。しかし1階に駐車場を作るケースや間口が非常に狭いケースが多く、この際はバランスが取りにくいかったり、また施工者がもっている2階建住宅での基準(例:柱の太さ・壁のバランス、など)をそのまま何も考えずに、3階建てに流用しているケースもありました。また、1階部分を鉄筋コンクリートや鉄骨2階3階が木造の場合も木造3階と同様に構造のチェックは重要です
*建築士により、耐震性などに十分配慮して設計され、かつ適切な施工をしたものは(工事監理者が技術的にチェックすることも含みます)何も問題はないのでご安心を。

4.ハウスメーカーのもの

1)工事監理(施工管理)能力に起因するもの
工事を下請け業者にまかせきりにしたり、技術の分かる担当者があまりに多くの現場をかけもちしていて実際の現場をよく見ていない場合等では、基礎のクラック・床などの傾斜・防水の施工等責任ある工事監理者が関与していないケースが多く見受けられました。
2) 設計者の能力に起因するもの
基礎の仕様が軟弱な地盤に適合していない等、責任ある設計者が関与していないケースが多く見受けられました。建築士の資格をもった責任者(管理建築士)が最終的な安全性等のチェックを行えていないのが主な原因です。 建物自体は耐震性等も考慮された仕様で開発されていると思いますが、敷地ごとのさまざまな条件(地盤や敷地の高低差への配慮・設備関係の整備状況等)を加味した設計が行われていないケースが多く見受けられました。

名前がよく知られている会社だからといって任せきりにしてしまうことがトラブルの原因です。
日本弁護士会が行った「欠陥住宅110番」でも、相談に占める大手業者の割合は、市場占有率(シェア)と同じ程度はありました。
自分で一つ一つチェックしながら、契約や工事を進めていきましょう。

5.建売住宅について

1)違反建築(建ぺい率違反等)に、安全性・耐震性に問題があるものが多く見受けられました。(3.を参照下さい)
2) 更地の状態で、土地と建物の両方を売買契約しているものにトラブルが多く
建物の完成時の仕様や形状について、契約前に詳しく説明をきいていないケースもあり、完成時に当初考えていた建物と違っていたり、変更を頼むと大変高い追加費用を請求されたりした例もあります。

*この場合、建物も売買契約になり、工事請負契約とは異なった買主の自己責任があります。
また、この場合は広告開始時期や契約締結時期に消費者保護のための制限や完成後の建物の形状や仕様についての説明義務が定められていますが、守られていないことも多く見受けられますので、ご注意ください。

完成前の建物についての契約は特に売主から十分な説明を受けた上、慎重に行ってください。

また、これに似たものに建築条件付き土地の売買契約があります。

これは土地の購入後、一定期間内に建物の請負契約を売主またはその指定した施工者で契約しないと、土地の契約も白紙に戻す条件で土地の売買契約を行うものです。これから建築する建物の間取りや仕様を詳細まで決定した上で、契約しないと工事価格がいつまでも未定の状態が続きます。
(建物は建築請負契約=注文住宅)

この2つは、法律上の取り扱いもかなり違いますので、どちらに当たるのかきっちり確認しておく必要があります。

詳しくは、官公庁の宅地建物業指導係や宅地建物取引業の関係の協会にお問い合わせください。

トラブルが調べることができるサイトは
国土交通省/不動産トラブル事例データベース(宅地・建物の取引に関する判決などが掲載されています)

6.リフォームに関して

基本的には、新築する際に信頼できる設計者や施工者を選び、改修や増築等の相談にもそこにするのが、一番望ましいと思われます。
(計画的・総合的に補修をしていくことが大事です)
しかし、中古住宅を購入した際や新築した際の設計者や施工者と縁遠くなってしまっている場合は、
一から信頼できるところを探すしかありません。
しかし、トラブルにあった人は、訪問販売や新聞の広告でリフォーム業者をすぐ決めてしまったりしてしまっているケースが多く、
思い通りにリフォームができなかったり、施工した結果かえって悪くなったり、予想外の値段を施工後に要求されたりしています。
小規模工事の場合は、建設業の登録もいらないケースが多く、施工能力のない「にわか業者」が、強引な営業をしているケースが多いと報告されています。
くれぐれもご注意ください。

トラブルが多い例と教訓
・外壁の塗装や屋根の修理を依頼したが、すぐに塗装がはげたり、かえって雨漏りがするようになった。相手は下地が悪かったせいといって取り合わない。
→下地が悪いなら、最初に下地までやりかえる工事を提案すべきです。弁護士に依頼して交渉すれば、プロとしての説明義務が欠けていたと判断が出ると思いますが、工事費が安いので、弁護士費用や精神的負担を考えると泣き寝入りするしかないことが多いのが実情です。
・家の耐震性の無料診断と訪問をしてきた業者に、地震がくれば危ないとおどされ、補修を依頼した。その後なんとなく不信感を抱き、専門家に相談したら、費用の割には耐震性は向上していないことがわかった。
→床下に潜って、ドロドロになりながら、危ないですよといわれたら、ついつい契約してしまうのが心情です。今回、立法化された「消費者契約法」では脅迫・強要による契約は無効と明記されましたが、立証は困難です。
所有者が気付いていない建物の劣化が早く判るといった点では、無料診断や訪問販売が悪いとはいいませんが、会社の商品?を営業にきていることには間違いありません。ノルマがきつくて、不要な商品をすすめる可能性もあります。例えば、お医者さんが頼みもしないのに、訪問してきて、「無料!」の健康診断をした上、病気だからと、治療を薦めはしないはず。いつまでも健康でありたいために、自分の意思で、健康診断を受けにいったり、自分で体調が悪いから病院で調べてもらい、悪いところがあれば、治療してもらうはずです。それとと同様、建物を長く保つためには、「自分の意思」で、専門家に診断してもらうように考えていくことが大事と思います。なお、2002年に国民生活センターが公表した内容では、リフォーム工事の消費者相談のうち約8割が訪問販売のものとしています。また、リフォームの消費者相談は急増しているそうです。

家の補修はいきあたりばったりやどうしようもなくなってからするのではなく、計画的にして下さい。
できれば、屋根や外壁の塗装などを部分的に専門業者に依頼するのではなく、信頼できる建築家に家の耐久性や耐震性を総合的に診断してもらってから、その診断結果からの補修必要事項とそれ以外の自分の希望事項とを抽出した上で、優先順位をつけ、補修計画(できれば、予算などの関係で後回しにするものも、時期などを決めておく)・補修設計・見積要綱などを作成した上で、施工者選びをするのが望ましいと思います。

リフォームの計画のある方は下記サイトなどを参考にしてください。
安心・満足リフォームガイド(「リフォネット」提供)

なお、分譲マンションの改修などでも同様のトラブルがよく相談されます。(塗装がすぐ剥げたなど)
劣化診断や劣化に応じた工事内容の提案・施工見積もりの精査や工事契約への助言・工事中の監理を施工会社とは別に建築家に依頼する方法もあります。

7.その他

欠陥とはいえないのですが、請負金額に関するトラブル相談もよくあります。特にバブル崩壊以降は、受注競争が激しく、詳しい取り決めをしていない段階で請負契約が締結されることもあり、その後詳しい仕様等が決まった段階で予想以上の追加を請求されているケースもあります。
現在の見積はどこまで含まれているか、追加の費用は今後どのくらい発生するかを確認した上で、契約をすること。できる限り仕様を確定してから、工事に着手することが大事です。なお、着工後の変更は既に部材などの加工を始めており、それが他の工事現場で使用できない場合は、2重の費用が必要となったり、工期遅れの原因となったりします。まだ決めかねている事項などがある場合は施工者などにはっきり伝え、必要な助言を求めると同時に、決定の期限を確認しておきましょう。

また、建築主が数社に見積りを依頼しているが、どこがいいのか分からなくなったといった相談もよくあります。
詳細な仕様も決めずに受注のためだけにできるだけ安い値段を出し、後で追加が発生するような見積りを出しているケースや全く違う品質のものを比べているケースも見受けられました。このたび「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、任意制度ですが、第3者機関が性能をチェックする、性能表示制度が創設されたのも、同等品質の比較をするためです。

なお、建築家に依頼した場合は、まず詳細な設計を確定してから、見積要綱を作成した上で、施工業者に見積りを依頼していきますので、
同じ品
質の建物がそれぞれの施工者がいくらでできるかが比較でき、また追加費用の発生も低くなります。


参考

建築基準法

(建築物の設計及び工事監理)
第五条の四  建築士法第三条第一項 (同条第二項 の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)、第三条の二第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項 の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)若しくは第三条の三第一項(同条第二項において準用する同法第三条第二項 の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)に規定する建築物又は同法第三条の二第三項 (同法第三条の三第二項 において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)の規定に基づく条例に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。
2  建築主は、前項に規定する工事をする場合においては、それぞれ建築士法第三条第一項 、第三条の二第一項若しくは第三条の三第一項に規定する建築士又は同法第三条の二第三項 の規定に基づく条例に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。
3  前項の規定に違反した工事は、することができない。

(建築物に関する完了検査)
第七条  建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
2  前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
3  前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。
4 建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理した日から七日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。
5  建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。

(建築物に関する中間検査)
第七条の三  建築主は、第六条第一項の規定による工事が次の各号のいずれかに該当する工程(以下「特定工程」という。)を含む場合において、当該特定工程に係る工事を終えたときは、その都度、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
一  階数が三以上である共同住宅の床及びはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち政令で定める工程
二  前号に掲げるもののほか、特定行政庁が、その地方の建築物の建築の動向又は工事に関する状況その他の事情を勘案して、区域、期間又は建築物の構造、用途若しくは規模を限つて指定する工程
2  前項の規定による申請は、特定工程に係る工事を終えた日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
3  前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。
4  建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事等は、その申請を受理した日から四日以内に、当該申請に係る工事中の建築物等(建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事中の建築物及びその敷地をいう。以下この章において同じ。)について、検査前に施工された工事に係る建築物の部分及びその敷地が建築基準関係規定に適合するかどうかを検査しなければならない。
5  建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、工事中の建築物等が建築基準関係規定に適合することを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築主に対して当該特定工程に係る中間検査合格証を交付しなければならない。
6  第一項第一号の政令で定める特定工程ごとに政令で定める当該特定工程後の工程及び特定行政庁が同項第二号の指定と併せて指定する特定工程後の工程(第十八条第二十項において「特定工程後の工程」と総称する。)に係る工事は、前項の規定による当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受けた後でなければ、これを施工してはならない。
7  建築主事等又は前条第一項の規定による指定を受けた者は、第四項の規定による検査において建築基準関係規定に適合することを認められた工事中の建築物等について、第七条第四項、前条第一項、第四項又は次条第一項の規定による検査をするときは、第四項の規定による検査において建築基準関係規定に適合することを認められた建築物の部分及びその敷地については、これらの規定による検査をすることを要しない。
8  第一項第二号の規定による指定に関して公示その他の必要な事項は、国土交通省令で定める。

(違反建築物に対する措置)
第九条  特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
2  特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
3  前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
4  特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取の請求があつた場合においては、第一項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
5  特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第一項の規定によつて命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の二日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
6  第四項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
7  特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
8  前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。
9  特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第七項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第一項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第七項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。
10  特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第二項から第六項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。
11  第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
12  特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法 (昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
13  特定行政庁は、第一項又は第十項の規定による命令をした場合(建築監視員が第十項の規定による命令をした場合を含む。)においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
14  前項の標識は、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
15  第一項、第七項又は第十項の規定による命令については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章 (第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。