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「官公庁施設の設計業務委託の在り方について」
標記は平成3年3月25日建築審議会より建設大臣へ答申され、
その後、設計3団体の要望により発注者と受注者で設計業務の委託に関し、
本答申で示された諸問題解決に向けて検討を重ねるため、
「公共建築懇談会」が設置されました。
公共建築懇談会では
選定方式の適正化のためにプロポーザル方式の方策や設計者情報システムの検討、与条件の明確化のための与条件調書作成のための手引き、設計業務委託の標準約款の検討、設計業務量の実態調査を行い、また現在は監理業務の在り方を検討しています。
官公庁施設の設計業務委託の在り方について
1.設計者選定の在り方
(1)建築設計の特徴と設計者選定の重要性
一般に、建築設計は、発注者がこれを委託する時点では設計対象施設の用途、規模、総工事費、敷地状況等の設計条件を示すにとどまり、当該施設のデザイン、構造その他成果物の詳細は確定していない。すなわち、建築設計は発注者の企画目的を実現するため、設計条件を基に設計者が創意工夫をもって施設の空間構成を具体化するものであり、成果物が必ずしもあらかじめ特定できない業務である。このため建設される建築物の質や経済性等は設計者の選定よって大きく左右される。
官公庁施設は国民共有の資産として質の高さが求められることから、その設計業務を委託しようとする場合には設計料の多寡による選定方法によってのみ設計者を選定するのではなく、設計者のの創造性、技術カ、経験等を適正に審査の上、その設計業務の内容に最も適した設計者を選定することが極めて重要である。
(2)創造性、技術力等を審査する選定方式の活用
創造性、技術力,経験等を審査する設計者選定の方式として一般に用いられているものは、次に示す設計競技方式、プロポーザル方式及び書類審査方式に大別できる。設計者の選定に当たってはそれぞれの方式について、その主旨・特徴を十分に踏まえ、設計業務の目的及び内容に応じて適切に活用する必要がある。
?設計競技方式は、提出された具体的な設計案を審査し、設計者を選定する方式である。
?プロポーザル方式は提出された設計対象に対する発想・解決方法等の提案を審査し、設計者を選定する方式である。
?書類審査方式は当該業務の工程計画、設計チームの構成、設計者の経歴・作風等に関する資料を提出させ、必要に応じ面接・ヒアリングを行ってこれを審査し、設計者を選定する方式である。
なお、これらの各方式が適切に活用されるよう,その実施方法等について所要の整備が必要である。
(3)設計者選定の公正性の確保
官公庁施設は国民共有の資産であり、その設計者選定が公正に行われるべきことが極めて重要である。このため、選定委員会等の審査機関を設置するなどの選定の手続及び評価の方法を明確にする必要がある。審査機関を設置する場合は、設計業務の内容等を総合的に判断し、必要に応じ発注機関外の委員を加えるとともに審査経過その他必要とされる情報について公表することが望ましい。
2.委託条件の整備の必要性
(1) 内容及び範囲の明確化
委託条件としての業務の内容及び範囲を明確にすることは、受託者の円滑な業務遂行上必要であるとともに、業務内容に見合った設計料を算定する前提条件としても重要である。このため、設計業務の委託に当たっては、仕様書等においてこれを明確に示すとともに、その変更等の取扱についても明確化を図る必要がある。
(2) 適正な設計期間の設定
建築設計は、検討を繰り返しながらその密度、完成度を上げていくという性格がある。このため、設計期間が不十分な場合は、設計者の創造性、技術力、経験等が十分発揮されず、良質な設計が確保されない恐れがある。したがって、設計業務の委託に当たっては、適正な設計期間を設定することが必要である。
(3) 適正な設計料の設定
設計業務の内容に見合った設計料が確保されない場合は、受託者の十分な業務実施体制が期待できず、結果として設計の質の低下につながる恐れがある。従って、設計業務の委託に当たっては、適正な設計料を算定することが必要である。
3.実施すべき具体的施策
以上のような考え方を踏まえて、官公庁施設の設計業務委託が適切かつ円滑に実施できるよう、次のような具体的施策を講ずることが望まれる。
(1) 設計者選定方式の標準的な実施方法の整備
設計競技方式、プロポーザル方式及び書類審査方式の各設計者選定方式について、選定の手続、選定委員会の設置、評価の方法等を盛り込んだ標準的な実施方法等を整備する。
(2) 委託条件の整備
? 設計業務の内容及び範囲の明確化を図るため、標準的な設計業務委託仕様書等を作成する。
? 適正な設計期間の設定を図るため、設計業務の内容に応じて標準的にどの程度の設計期間が必要であるのかについて、調査・検討を行い、標準設計期間を設定する。
? 適正な設計料の算定に資するため、「建築士事務所の開設者がその業務に関し請求することのできる報酬基準」(昭和54年7月10日建設省告示第1206号)等に基づく設計料の算定が適確かつ容易に行えるよう、その算定要領を作成する。