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NEW 一級建築士の懲戒処分の基準に関する意見募集結果と一級建築士の懲戒処分の基準(2008.11.14 国土交通省)
平成20年11月28日の改正建築士法施行に当たり再度改正予定(意見募集中2008.9.17国土交通省)
99年12月、建設省は法律に違反した建築士を処分する基準を都道府県に通達し、一般にも公表した。(これまでは行政の内部基準)
16段階のランク制に
建築士法で、建築士が建築基準法や建築士法などの建築関連の法律、条例に違反した時、建設大臣、都道府県が一定の懲戒処分を行えるとしている。処分には戒告、1年以内の業務停止、免許の取り消しがある。設計にかかわる違反はもちろん、建設にかかわる違反でも建設業者と建築士を兼ねていたり、共犯関係にある建築士は処分される。
処分基準は2級建築士の処分を行う都道府県の担当者が処分を効率的に行えるようにランク制を採用した。ランクは16段階に分かれており、それぞれのランクごとに「戒告」「業務停止1月」といった処分内容を決めた(表1)。
最も重い16のランクは免許取り消しだ。一方で、具体的な違反行為に対応した懲戒処分ランクも明らかにした(表2)。
例えば、2級建築士が本来はできないオフィスビルなどの設計を行った場合は、「設計及び工事監理の業務範囲の逸脱」にあたり、処分ランクは6だ。これを表1の処分区分表と照らし合わせると、「3カ月の業務停止」という処分となる。
【表1】処分区分表
懲戒処分 ランク |
懲戒処分 |
1 | 文書注意 |
2 | 戒告 |
3 | 業務停止1月未満 |
4 | 業務停止1月 |
5 | 業務停止2月 |
6 | 業務停止3月 |
7 | 業務停止4月 |
8 | 業務停止5月 |
9 | 業務停止6月 |
10 | 業務停止7月 |
11 | 業務停止8月 |
12 | 業務停止9月 |
13 | 業務停止10月 |
14 | 業務停止11月 |
15 | 業務停止12月 |
16 | 免許取消 |
【表2】処分ランク表
懲戒根拠 | 懲戒事由 | 懲戒事由及び処分ランク | ランク |
建築関係法令違反 | 建築士法違反 | 重 ・設計及び工事監理の業務範囲の逸脱 | 6 |
重 ・業務停止処分違反 | 16 | ||
・指定試験機関の秘密保持義務違反(機関の役職員等) | 4 | ||
重 ・違反設計 | 6 | ||
重 ・法に定める工事監理者の業務を行わなかった (工事監理不履行・工事監理不十分) |
6 | ||
・無断設計変更 | 4 | ||
・設計図書の記名捺印不履行 | 4 | ||
・工事監理報告書の未提出、不十分記載等 | 4 | ||
・無登録業務 | 4 | ||
・虚偽・不正事務所登録 | 4 | ||
・事務所変更届け怠、虚偽報告 | 4 | ||
・管理建築士不設置 | 4 | ||
・管理建築士事務所専任義務違反 | 4 | ||
・管理建築士専任義務違反 | 4 | ||
・事務所の帳簿不作成、不保存 | 4 | ||
・事務所標識非掲示 | 4 | ||
・業務実績等の書類の備え置き、閲覧義務違反、虚偽記入 | 4 | ||
・業務委託等の書面の交付義務違反 | 4 | ||
重 ・事務所閉鎖処分違反 | 16 | ||
・事務所報告、検査義務違反 | 4 | ||
・建築審査会委員の不正行為 | 4 | ||
重 ・建築士の名称使用、名義借り | 6 | ||
重 ・名義貸し | 6 | ||
・その他法令違反 | 4〜16 | ||
建築基準法違反 | 重 ・設計、工事監理規定違反 | 6 | |
重 ・確認通知書等偽造または同行使 | 6 | ||
重 ・無確認工事等 | 6 | ||
重 ・違反工事 | 6 | ||
・無確認着工等容認 | 4 | ||
重 ・虚偽の確認申請等 | 6 | ||
重 ・工事監理者欄等虚偽記入 | 6 | ||
・工事完了検査申請等怠け | 4 | ||
重 ・是正命令等違反 | 6 | ||
・確認表示未掲 | 4 | ||
・その他法令違反 | 4〜6 | ||
上記以外 | ・確認対象法令違反 | 2〜6 | |
・その他法令違反 | 2〜6 | ||
不誠実行為に関する業務 | ○現在の建築技術の水準に照らし不適当な設計 | 1〜4 | |
○依頼者の設計条件に違反 | 1〜4 | ||
○依頼者の指示が不適切な旨の不教示 | 1〜4 | ||
○契約の本旨に従って業務を執行しなかった | 1〜4 | ||
○業務契約の内容の説明不十分 | 1〜4 | ||
○その他の不誠実行為 | 1〜4 |
注/「重」は重大な違反で最も重い処分が行われるもの。上記に記載のない行為は、上表に最も類似した行為の例による。上表に情状を考慮して処分を加重、軽減することもある。
違反行為の中でも、重い処分が科せられる「重大な違反」には違反設計、工事監理の不履行、名義貸し、確認通知書の偽造、確認を受けていない工事などがある。
建築士法では、法律には違反していなくても「不誠実な行為」があれば、処分できるとしている。例えば、施主に無断で設計変更をしたり、常駐に近い工事監理を契約で約束していながら最低限の監理しか行わなかった場合などだ。これらは最大で1カ月の業務停止となる。
"再犯"にはさらに重い処分
複数の違反があった場合は、原則としていずれか重い方で処分する。また、処分を加重したり、軽減する場合もある。違反が「過失」であれば、その程度に応じて軽減される。しかし、「重大な違反」と判断された行為は、原則として軽減されない。過去に処分されたことがある建築士は表3のように、新たな違反行為の処分ランクが1〜4段階上がり、より重い処分が科せられる。 基準に加えて、建設省では2000年3月末に実際の処分事例を一般に公開する予定だ。また、都道府県の担当者に向けて、「処分マニュアル」も作成する。処分手続きや法解釈に加えて、証拠を集める方法などもまとめるという。(解説:日経ホームビルダー1月号)
【表3】過去に処分などを受けている場合
過去の行為が↓ | ||||
今回の行為が↓ | 文書注意 | 戒告 | 業務停止 | 免許取消 |
文書注意が相当 | +1(+2)ランク | |||
戒告が相当 | +3(+4)ランク | |||
業務停止が相当 | ||||
免許取消が相当 | 免許取消 |
注/過去の処分事由が今回の処分事由と同じ場合は( )内の処分となる。ただし、過去の処分事由が重大な違反に該当し、今回も「重大な違反」に該当する行為をしたときは免許取り消しとなる。また、過去に2度以上処分などを受けている場合は加重されるランクをそれぞれ合計して、今回相当とされる処分などに加重する。